つい先日、妹が大学でやっている部活の試合を見てきました。妹の大学は2部リーグに属しているのですが、その日は1部との入替戦で、彼女にとって大学生活最後の試合です。結果は、延長戦の末に見事勝利。後輩に置き土産を残して引退しました。
僕の分を全部持っていったのかと思うほど運動神経が抜群の妹ですが、スポーツを本格的に始めたのは大学に入ってから。それを考えれば、4年間よくプレーし続けたと思います。彼女が高校生の時に僕は実家を離れたので実感はありませんが、きっと彼女には彼女の世界があり、そこで最後までやり遂げたのでしょう。兄として、とてもうれしいです。
まだ黒澤姉妹のスクールアイドルは終わっていませんが、黒澤ダイヤの思いは、きっとこれに近いものなのかな、なんて思っています。
他地域の予選に招待されたり、遠く北海道の地で写真をせがまれたりする。ファイナリストに与えられる“勲章”ではありますが、同時に決勝という終わりが近づいていることを嫌でも自覚させられます。
それは、北海道で高い人気を誇るSaint Snowも同じ。鹿角理亞の心の乱れは、そんなところから来ていたのかもしれません。ましてや、生半可な気持ちでスクールアイドルをやっていると思っていたAqoursが決勝に駒を進め、誰よりも尊敬する姉が内浦のスクールアイドルのことを認める。頭を下げる。理亞からすれば、気に入らないことばかりです。ケンカの原因もそこではないでしょうか。
手の震えは、緊張からか、怒りからなのか。不安定なメンタルのままステージに臨んだ理亞は、致命的なミスを犯してしまいました。「姉とのスクールアイドル」を続けるために勝利を求め続けていたのに、一番大事なところでそれを失ってしまったのです。
「姉とのスクールアイドル」に対して強い気持ちをもっていたのは、黒澤ルビィも同じです。この小さなスクールアイドルは、「3年生にとって最後のラブライブ」に、人一倍こだわっていました。お姉ちゃんがいないなら、スクールアイドルを続ける意味がないと思っていたからです。
ルビィがスクールアイドル部に入るまでの道のりを、もう一度整理しましょう。黒澤姉妹はμ’sに憧れ、二人でμ’sの真似をしたりするほど夢中になっていました。やがて姉はスクールアイドルを始めます。その姿を見て、「いつか一緒に」とルビィが思うのは自然なことでしょう。
しかし、ルビィにはわからない理由で、ダイヤは急にスクールアイドルを敬遠し始めた。ルビィは戸惑いながらも、「姉が嫌いなものを好きになってはいけない」と、自分に制限をかけるようになります。
そこに国木田花丸が関わったことで、ルビィの人生は拓けていきました。といっても、ダイヤがそれを妨げていたわけではありません。むしろ、彼女は大切な妹を守ろうとしていた。でもルビィは、その庇護を自らの足で抜け出して世界を広げていったのです。
自分の心と向き合い、自らの内にある答えを見つけ出した。それが自立です。ダイヤにとってそれは「すごくうれしかったのです」。小原鞠莉が「よかったね、やっと希望が叶って」と言っていたのは、このことだったのではないでしょうか。
自立するという成長を遂げたルビィですが、実は彼女の行動原理は変わっていません。すなわち、大好きな人を独りにしないということ。生き方と表現してもいいでしょう。「気弱そう」に見えて、泣き虫でもあるけれど、全力で人に寄り添う。これはルビィの、とってもとっても魅力的なパーソナリティです。
同じ境遇にいる理亞にシンパシーを覚えたルビィは、理亞に会いに行きます。彼女の苦しみは実に根深いものです。「姉さまがいなくても一人でできるって。安心してって」言いたかったのに、最後の最後でそれが叶わなかった。悔やんでも悔やみきれないのに、姉は「それもラブライブ」と敗戦を受け止めている。だからこそ、自分の感情の行き場がない。謝りたくても謝りきれないし、挽回するステージはもうない。未来がない。だから辛い。
そんな理亞に、ルビィは「最後にしなければいいんじゃないかな」と提案します。姉に贈る曲を作り、もう一度歌う。ルビィが提示した“未来”に、理亞は思わず笑みをこぼすのです。
大切に思う人と一緒にいようとするルビィの優しさは、スクールアイドルを始める前から変わりません。変わったのはむしろ、そのやり方です。ただ誰かのそばにいるのではなく、誰かを引っ張り上げるようになった。花丸が「まばゆい光」と評したその輝きで、誰かの未来を照らしてあげられるようになった。これは誰かの前を自分の足で進んでいるから――自立しているからこそ、できることです。
ラブライブには出られない。でも、それを受け入れて、別の未来へと進んでいく。そんな姿も、先に生まれた者からすればうれしいものです。鹿角聖良への愛と感謝は、ラブライブ以外でも表現できる。その可能性を捨てないでと、ルビィは伝えているのではないでしょうか。
前回、Aqoursは受容のスクールアイドルだと書きましたが、ここまで誰かが負ける姿を描かれると、「ラブライブ!サンシャイン!!」そのものが“受容の物語”だと形容したくなります。
勝って何かを得る、何かを得て勝つ物語ではありません。勝利はあくまで手段のひとつ。勝利どころか、ラブライブやスクールアイドルさえも手段でしかないのです。負けや失敗というリアルに直面したら、まず受け入れる。そして、それでもできることがある、違う考え方があると前を向く。それが、「ラブライブ!サンシャイン!!」で描かれているスクールアイドルの姿です。
先代のように、王道を征き、圧倒的なパワーでリアルさえも巻き込むストーリーではありません。けれど、とてもリアリスティックで泥臭い。まもなくひとつの区切りを迎えますが、「ラブライブ!サンシャイン!!」は、そんな“大人向け”の物語なのではないでしょうか。
きっと今回は1番乗りです!
タイトルがガン●ム第1話のパクりなのでは?という疑惑は置いておくとして(笑)
第8話は個人的にとても心温まる回でもありました。
私にも妹がいます。
なのできっと観ている私の視点はダイヤや聖良に近く、二人の気持ちがよく分かります。
自立、という表現はちょっと寂しい表現を含んでいる気もするのですが、
いつも面倒を見ていた下の子が少しずつ自分の世界を持ち、
しっかりと自分の考えを持って、自分の手を離れ、その上で変わらずに自分を慕ってくれている。
こんなに嬉しいことはないと思います。
ダイヤだって本当は寂しいし、もっとずっと一緒にルビィとスクールアイドルをやっていたいに決まっています。
でも姉であるダイヤはそんなこと口にせず、膝の上で手を握り締めました。
姉だから、妹に弱いところは見せられない。
どんなに妹が自立したとしても「頼れる姉」でいたい気持ちは変わらないと思うから。
きっと次回、妹たちが出した答えに、姉たちが応えてくれることでしょう。
どんな物語を見せてくれるのか、考えただけで涙腺が熱くなります。(※家族ものに弱いんです)
それにしてもSaintSnowの予選敗退は意外でした。
本戦でのライバルとして登場したと思っていたSaintSnowは、もしかしたらこうなっていたかもしれないもうひとつのAqoursの姿を描きました。
Aqoursが本当の願いだった学校存続の夢に敗れたように、SaintSnowもまた夢に敗れました。
敗れた先で彼女たちはどんな次の夢を見るのでしょう。
そして(1期感想の#10#11で書いてありました)千歌が梨子や曜を救ったように、今度はルビィが理亞をどんな形で救うのか、と。
本当にルビィは素敵な女の子ですね。
もう期待と楽しみしかない第9話、今から放送が待ち遠しいです。
>たくみさん
お見事、一番乗りです!
そしてタイトルに気づいていただいてありがとうございます笑
たくみさんも“上”の人なのですね。
なんか、上の人にとって今回のお話はすごく胸に来ますよねぇ。
上にもいろんな思いがありますが、それらをすべて押し殺して、
最後まで「自慢の姉」でいようとするのは、ダイヤも、そしてきっと聖良も同じなのでしょうね。
それは、うまくいかなかったからこそ余計に際立つ勇姿なのかもしれません。
個人的には今のところ2期の中でベストバウトと言っていい回でした。
このエピソードの結末がどうなるのか、本当に楽しみですね!
「2期の中でベストバウト」
その言葉に頷けるだけのお話しでありましたね。
よもや、Saint Snowを絡めて2組の姉妹の姿を描くとは、予想だにしていなかった展開で拍手喝采でした。
理亞が控室で緊張に震えていたのは、あの自信に満ちていながら、向上心と闘争心を漲らせていた彼女を考えると、これまでも奮い立たせてあの姿を演じて、ステージに立ってきたのではないかな、と夢想します。
そして、常に姉を想い、姉とラブライブ!の最高の舞台を目指し、これまで戦ってきたのでしょうけど、前回ファイナリストに選ばれながら優勝には届かなかったという経験があるだけに、『今回が最後』『負けたら終わり』という呪詛が理亞を苛んでいたんじゃないでしょうか。
それと共に、前回大会では地区予選で敗退したAqoursが決勝進出を果たしたということは、逆に前回決勝進出したグループが地区予選で敗退していた可能性があるわけですよね。
そんな下剋上だって起こり得るということを間近で見てしまうと、『if』で頭がいっぱいになってしまうことも考えられます。そこへAqoursが陣中見舞いに訪れたとしても、素直には向き合えなかったのかもしれません。
なんだかんだ言っても、理亞もルビィと同じ高校1年生なワケですから、歳相応の脆さが覘いたとしても不思議ではないんですよね。
そんな“震え”に気付けたのは、同じく“姉”と一緒にステージに立ってラブライブ!に臨んでいるルビィだけ。
そして、スクールアイドルに情熱を注ぐ3年生の“姉”にとって今回がラストチャンスであることも同じ。
ばかいぬさんも触れていた通り、人一倍こだわっていたルビィは、ずっと理亞と同じ想いを抱えていたからこそ気付けたし、放っておけなかったんでしょうね。
要所要所でお互いを見やる黒澤姉妹が貴く切なく、函館の寒空の下で想いを交わした姉妹の姿は、確かに今期のベストシーンに数えられるでしょう。
次回、“妹達”の想いがどう昇華するのか、楽しみですね。
>拓ちゃんさん
いやぁもう、ここでこんなお話が出てくるとは思わず、
うわああってなりました! 兄弟姉妹がいる方はもちろん、
そうでない方にも響いたのではと思います。
理亞、というかSaintSnowがここまでしっかりとした役割を
演じきるとは思いませんでしたし、それによってルビィの共感性の高さが
輝いたのは、彼女の魅力を再確認する上でもすごく良かったですよね。
函館というロケーションのなせるわざか、拓ちゃんさんが書いてくださったとおり
黒澤姉妹の切なさが半端なかったです。結末が描かれる次回が楽しみすぎます!
自分は「下」の人。でも、姉と弟の関係だったからなのか、ルビ理亞に共感する感情があまり湧いて来ないってのが正直なところです。
どちらかと言えば、現在子育てをしていて感じる、上の人っぽい感情の方が大きいかもしれません。
子供達が、それまでは泣いて駄々をこねるだけだったのにいつの間にか理詰めで反論して来るようになったり、いつも一緒に出掛けていたのに友達同士だけで出掛けて行く約束をしてきたりするのは成長の証であり、嬉しくもあり寂しくも思います。しかし、そのアンビバレンツな感覚は、初めて味わうものであり、これが「上の人」の感覚なのかと思ったりしています。
今回、ルビィが「誰かを支える人・最後に背中を押してくれる人」から「引っ張って行ってくれる人」に成長した姿を見せてくれましたが、それ以上に感じたのが理亞の優しさでした。
これまで、冷淡にも見える言動で表現されてきましたが、それもこれも姉さまを思えばこその事で、性根はルビィと同じで優しく愚直で頑固で可愛らしいものであったと知れました。
ただ、その一面を引きだして来られたのは、一足先に成長したルビィの功績なのかもしれませんが。
>椿さん
なるほど、親ないし兄姉か、子ないし弟妹で受け取り方やイメージが変わりそうですね。
僕みたいに前者の人のほうが、ダイヤに移入してのめり込んじゃうのかもしれません。
理亞のパーソナリティが深掘りされたのはとても良かったですね!
ライブの控室でも一触即発の感じがありましたが、それが余計に彼女の内面にある
優しさを際立たせてくれたような気がします。