姉が世界のすべてだった。鹿角理亞は、そんな女の子です。誰よりも尊敬し、誰よりも愛した姉の鹿角聖良。心の底からリスペクトできる人がこんなに身近にいるのは、とても幸せなことでしょう。

聖良に心酔するゆえに、理亞は姉と同じ世界にい続けようとしました。その中で、聖良に認めてもらおうとも。美しい姉妹愛であると同時に、理亞の世界が開かれなかったという事実にも目を向けなくてはなりません。聖良の世界に身を置く理亞。彼女の限界は、姉の限界に等しいのです。

否定的な表現をしましたが、決して悪いことではありません。ただ、その外にはもっともっと広い世界、遠い未来がある。そこに理亞を引き上げたのが、同じ境遇にいた黒澤ルビィでした。

 

まるで、よそから来た猫がだんだんと懐くようでしたね。「みんなでワイワイとか好きじゃないし」という理亞が、ルビィという理解者を得て、国木田花丸、津島善子という協力者も現れた。全員がいわゆる“ぼっち”だったことを花丸が告白すると、理亞は心の扉を少しずつ開いていきます。

聖良で満たされていた理亞の世界に、変化が訪れた。異分子を受け入れ、他の何かが入ってくる余裕が生まれたことで、世界が広がり始めたのです。そしてそれは、異分子として入っていったAqoursの1年生たちも同じ。地元・内浦からはもちろん、Aqoursという括りからも抜け出すことで、個々のパーソナリティがグッと際立ちます。

すると、隠し持っている魔導力……もとい、新しい一面が見えてくる。「未知」とは「未だ知らない」と書きますが、未来そのものなんですよね。お互いに、まだまだ知らないことがたくさんある。それは、彼女たちに未来がある証左です。

この未来を自分の足で歩いて行く。これが自分の世界を作り上げるということ。つまりは、自立の始まり。1年生4人で行動する中で、ルビィと理亞たちは自分の手で曲を作り、披露する場を獲得し、行動を共にする友人を得ました。今さら花丸の「ずら」「おら」に突っ込む人がいなかったのは、Aqoursというコミュニティの中にいたから。そこに突っ込む理亞はAqoursの1年生3人とは外れたコミュニティにいることを実感させますが、後に善子の堕天使キャラに順応した彼女を見れば、この4人がコミュニティを形成できたことがわかります。理亞の世界が、どんどん広がっていく。ラブライブ敗退は、終わりじゃないのです。

「でもさ、自分たちで全部やらなきゃ」という善子がめちゃくちゃカッコよかった
ダイヤに勇気をもらっていたと気づいたルビィは、「お返し」のためにその勇気を振り絞ります

見逃せないのは、幼い黒澤ダイヤが妹にかけた愛のある言葉、「ルビィは強い子でしょ。なら、勇気をお出しなさい」。そう、姉は妹に強い力があることを、ずっとずっと前から知っているのです。そしてその力を自らの意志で発揮することを願っていた。妹が心の底からやりたいことを、自分の力で成し遂げる時が訪れるのを望んでいた。

函館に残ることを伝え、自分たちだけで曲を作り、ライブの場を掴み取って、地元ラジオ局でプロモーションまでする。そんな高難易度のミッションを、ルビィと理亞はやってのけました。そして恐らくダイヤも聖良も、妹たちにそれくらいの力があると信じていたでしょう。ただ一つ必要だったのは、勇気を出すこと。「隠された力」をAwakenさせる勇気です。

ルビィたちの力を借りながら、理亞はこの勇気を少しずつ出せるようになっていきました。クリスマスライブのプレゼンの場然り、クラスメイトとの一幕然り(このクラスメイトも、勇気を出した人たちですね)。そうすることで、欲しかったであろう友達もできた。そして最後に、理亞はラブライブ敗退を乗り越え、新しい“雪の結晶”を手に入れました。「最後にしなければいいんじゃないかな」というルビィの提案を、見事形にしてみせたのです。

ルビィが理亞にしたこと。これは、以前彼女が花丸にされたことと同じでした。閉ざされた世界から解き放ち、その輝きを広げること。理亞はラブライブに勝ち続けて、少しでも長く姉とともにいようとしていましたが、それは聖良が好きだという気持ちの昇華です。大事なのは聖良への思いで、それを表現する方法はラブライブ以外にもある。歌とダンスで思いを表現するスクールアイドルの自分たちは、その方法をもっている。理亞という同級生を輝ける場所に導いたのは紛れもなく、スクールアイドルとして、一人の人間としての、ルビィの成長です。

「変わることを恐れないで、突き進む勇気」。いつの時代もスクールアイドルにとって大切なのは、目標に向かって一歩を踏み出す、自分の世界を変える「勇気」なのです。