アニメ2期感想

Aqoursトレインの終着駅はこれ以上ない未来である―「ラブライブ!サンシャイン!!」2期7話感想

このエピソードを見ている途中、ふと「統廃合したら、千歌たち6人は統合先のスクールアイドルになるんだろうか?」という疑問が浮かび上がりました。そして最後まで見て、恐らくなのですが「ならないだろうな」と。

今回は、第3話のアンサー的なエピソードでもあります。あの時は学校説明会を優先するか、ラブライブを優先するか迷っていましたが、いずれにせよ最終目的は学校を守ること。Aqoursにとって大事なのは学校存続であり、ラブライブはその手段だったのです。

ラブライブを、スクールアイドルをがんばれたのは、学校のため。視聴回数が増えてうれしいのも、希望者増につながる可能性があるから。

だから、統廃合が決まっては、ラブライブに出る意味がない。ラブライブは手段なので、目的を失った以上、やる意味がなくなってしまいます。動機がないのに、本気になれるはずがない。つまり、輝くことはできない。

では、黒澤ルビィが力強く語っていた、「3年生のため」という動機はどうなのでしょうか? それはとても美しいメンタリティですが、残念ながらAqoursの在り方に即していない。劇中で1年生たちが語っていたように、高海千歌が作り上げたAqoursという場所は、一人ひとりが本気になれるものを見つけるための「居場所」になっていました。だから、お互いが支え合う。一人がエンジンになって進むクルマではないわけです。

グループの行く先を決めるとき、彼女たちは必ず全員の気持ちを揃えてきました。3年生が「3年生のために」とはなかなか思えないでしょうし、統廃合が決まった以上は9人全員が“3年生”とも言えるのです。何より、全員が共通の動機として抱いていた学校存続がなくなった。これでは、Aqoursは動けない。

だから、ラブライブ決勝に出ないという選択肢が生まれます。一体、何のためなら本気になれる?

今に始まったことではないのですが、高海千歌は止まれない人です。それが状況を打破するメンタリティにも通じるのは確かなのですが、今回の千歌は痛々しささえ感じるほど。

3年生は驚くほど落ち着いています。最上級生の自負があるのかもしれませんが、「諦観」の2文字が浮かぶくらいに。その落ち着きは、「できることは全部やった」という事実から生まれているのかもしれません。一度止まった時間をもう一度動かし始めたばかりでなく、彼女たちは同学年の理事長が学校存続のためにどれだけ尽力したかを知っています。ある意味で「大人」なんですね。

一方の千歌は、言うなれば「子ども」です。彼女のやり方は、目標を達成するまでやり続けるというもの。それは諦めない強さでもあり、諦められない幼さでもあります。何のしがらみもなければ大きな力を生み出しますが、今回はそうではない。刻一刻と迫るタイムリミットの中で、大好きな学校がなくなる不安と戦っている。それゆえの痛々しさなのかもしれません。彼女の大きな武器が、通用しないのです。

なぜ、こんなに学校が好きなのか。これだけ大切な、支え合っていると思わせてくれる仲間に出会わせてくれたからです。自分は、この町、この学校、この仲間たちに支えられている。その思いは、内浦の魅力を探し続けたあの頃から変わりません。

Aqoursにとって浦ノ星女学院は、帰る場所。母校であり、“母港”です。彼女たちが「浦ノ星女学院のスクールアイドル」Aqoursである以上、この学校は9人のアイデンティティ。自分から切り離せないものです。アイデンティティがなくなってしまえば、輝けない。光を発するもの自体がないのですから。

でも、「学校を救う」のは存続させることだけじゃない。名前を残すことだって、「学校を救う」ことなのです。例え統合したとしても、「歴史に名を残す」ことができれば、浦ノ星女学院は生き続ける。福島の双葉高校は2017年度から休校になり、野球部が廃部になりましたが、彼らが4度、甲子園に出場した歴史がなくなることはありません。そうやって歴史に名を残すことができるのは、学校の代表として全国の舞台に飛び出す子たち――浦ノ星女学院スクールアイドル・Aqoursの9人だけなのです。

Aqoursというスクールアイドルは、“受容”のスクールアイドルです。この7話だけを見ても、3年生はできることをすべてやった事実とともに、統廃合を受け入れようとしている。そして1年生は、Aqoursを作った3年生、Aqoursを復活させた2年生の責任感に気づきながら、それを否定することなく、感謝をもって支えようとする(これは本当にステキなことだと思います)。

そして、彼女たちはこれまでもずっとそうでした。目標が達成できないのであれば、次の目標を定めて走り出す。「募集人数98名、タイムリミット午前5時」は、「応援してくれる人、0人」と同じです。他者はコントロールできないけれど、そこに意味付けをすることはできる。自分ではコントロールできないそれが運命であるのなら、そこに意味を、目標を見出す。それが、「未来」を歌い続けるAqoursがずっとやってきたことなんです。

学校には、いろんな人が抱く、いろんな思いが集まっている。それが、見えない力となってAqoursを導く。学校はなくなるけれど、ラブライブ決勝に出ることには間違いなく意味がある。9人にとって最後のラブライブが、次に目指す未来です。もう、これ以上はない。思い通りにならないことを受け入れながら、Aqoursは――いいえ、浦ノ星女学院は、彼女たちができる精いっぱいを、最後の未来を目指して、また走り出すのです。

POSTED COMMENT

  1. 椿(Chin) より:

    今回、特に気になった(と言うか、「お?」って思った)点を一つ。
    黒澤ルビィの描き方。
    彼女の設定は、Aqoursの中で「一番スクールアイドルに対して憧れを持ち、スクールアイドルたらんとする意思が一番強い」と言うものでした。
    ゆえに、単独で描かれる時には、常に練習・精進する姿として表現されていました。
    G’s magazineのイラスト然り、HPTのPV然り。一期8話で打ち拉がれていた時でさえ。
    その彼女が、今度ばかりは呆然と雑誌を眺めているだけ。
    統廃合決定の、そしてそれによって目標を失ってしまった事への絶望感が、よく現れていたと思います。

    • ばかいぬ より:

      >椿さん
      彼女はAqoursの中でも数少ない、スクールアイドルそのものに憧れる人ですからね〜。
      ラブライブに出ないということは、少なくともこの9人での活動は終わりを迎えてしまうわけで、
      そうなるとスクールアイドルになる前の「黒澤ルビィ」に戻ってしまう。
      雑誌を眺めていたあのシーンで、そんなところが表現されていたのかもしれませんね。

  2. 拓ちゃん より:

    よしみ、いつき、むつのモブトリオの「じゃあ、救ってよ!」から全校生徒による「輝いて!」までのくだりは、リアルタイムで観た時から鳥肌が立っていました。何度見ても泣けてしまいます。

    冒頭のファイナリスト決定に沸いたのも束の間、サブタイトルの『残された時間』に表わされる翌朝5時の募集停止までのタイムリミットを焦燥感に炙られながら、観ているこっちも胃が痛くなるような、そんな時間をAqoursの9人が共有している姿は、非常に尊いひとときに感じられました。
    しかし、結果は無情にもあとたったの二人だったのに、“奇跡”には届きませんでした。

    その後の千歌の姿はあまりにも痛々しく、今まで埋まっていた体の中のモノがからっぽになってしまったような空虚さが漂い、それに反して─ばかいぬさんも書かれている通り─3年生は驚くほど落ち着いて見えますので、余計にそのギャップが浮き彫りにされています。
    とどめに、練習中意識せずに涙が頬を伝う様に至っては、とうとう理性と感情がちぐはぐになってしまって、本当にいたたまれない気持ちにさせられました。

    そこから流れ始める「空も心も晴れるから(9人Ver.)」の選曲は涙腺にもろクリティカルでしたよ。
    “卑怯”という最大級の賛辞を贈りますw

    そして、冒頭に書いた「じゃあ、救ってよ!」に繋がる今回は、本当に全編涙腺を刺激しまくるお話しでした。

    統廃合までに『残された時間』──Aqoursの9人は、G’s magazine の彼女達と同じように、浦の星女学院の全校生徒に背を押されて、ラブライブ!優勝でその歴史に“学校の名前”を永遠に刻むべく走り出しました。

    千歌が屋上で興奮のあまりに踏んだ“地団駄”が、本当の怪獣が突き進む“地響き”となって聞こえるのは、そう遠くない未来なのかもしれませんね。

    • ばかいぬ より:

      >拓ちゃんさん
      「じゃあ、救ってよ!」という叫びからのくだりは、ああそういう解釈もあるのかと思ってて見ていたのですが、
      突き詰めれば、解釈次第で乗り越えられることはいっぱいあるんだよってことですよね。
      なんか、ここでようやく「ラブライブ!サンシャイン!!」という物語が描きたいことがわかってきたように思います。

      「普通怪獣」って言葉が思った以上に繰り返されているのが印象的です!
      千歌次第では、最後の方で何かを象徴する言葉になるかもしれませんね。

  3. たくみ より:

    第7話は胸熱でしたが、観るのがしんどい回でもありました。
    実は私、この期に及んで”ご都合主義と言われてもいいから最終回で実は廃校が撤廃されたEND”をまだ切望しています。
    Aqours、生徒、経営側、さらにアニメ制作サイド、といろんな視点で考えて、物語のリアルさでは第7話は限りなく正解だったと納得しているんですが。
    実際に胸熱展開で目頭を熱くもしましたが(笑)

    ダメなんですよねぇ。どうしても物語にはハッピーエンドを求めてしまうもので。
    きっとラブライブ!に優勝して、浦の星女学院の名前を歴史に刻んだとして、ふと「廃校を阻止できなかった」ことを思い出す日がくるのだろうな、と想像してしまって。
    いや、この上ない余計なお世話なんですが。
    なので、無粋と分かっていても、ドンデン返しを最後まで期待することにします。

    三年生が思いの外納得の姿勢を見せているのを意外に思って見てました。
    最上級生の自負。
    その通りですね。きっとあの場に後輩がいたから。もし彼女たち三人だけだったらきっと、もっと感情を出していたはずです。
    だから理事長と生徒会長、学校を代表する二人だけになって、初めて鞠莉は泣けたんだなって。
    そして千歌がちゃんと泣いてくれただろうかと思っていました。
    (※きっと私がシナリオ書いたら曜ちゃんの胸で泣く千歌ちゃんのシーン入れます(笑))

    いつの間にか学校を救うことが目標となっていた、というのは確かに、と。
    最初はμ’sと同じ境遇に喜んでいただけなのに、ここまでの物語でその想いに説得力が根付いていたんですね。

    と、書きましたところで第8話まで後1分となりました。
    また次回の感想も楽しみにしています。

    • ばかいぬ より:

      >たくみさん
      ああ〜、そこはもう好みですよね! どうなるかはともかく、そんな願いを抱くのはまったく変なことではありません。実際、そうなる可能性は結構高いんじゃないかと思います。僕は廃校のままで新しい結論を見せてほしいなと思っちゃうのですがw

      鞠莉の涙は、一瞬でしたが印象的でしたね。
      いつぞやの「てへぺろ」の時もそうでしたが、みんなの前では努めて明るく振る舞う姿に、愛おしさを感じずにはいられません。
      本当に、千歌もそんなタイミングが(描かれていなくても)あってほしいですね。そんなに強くなりすぎなくてもいいんだよと。

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