「ダイヤと鞠莉と3人で曲作って、その思いがつながって。偶然が重なってここまで来たんだもん。やり切ったって思いたい」
松浦果南とは、どんな人なのでしょう。ダイビングショップの娘で、運動が得意で、海が大好きな子。そして、責任感が強く、他人をよく見すぎてしまう子。人のことをずっと見て、大事にするからこそ、相手の立場も気持ちも考えてしまう。そんな風に思います。
小原鞠莉とのわだかまりも解け、Aqoursの一員として再びスクールアイドルとなった果南。でもその心の中には、今がどうあれ、自分の選択が鞠莉の可能性を奪ったという思いがずっとこびりついていたのではないでしょうか。
そんな事態を呼び寄せたのが、ラブライブ決勝に進むために自分が考えたフォーメーション。練習こそしたものの、結局完成させることができず、そればかりか鞠莉に足のケガを負わせてしまいました。果南にとってこのフォーメーションは、「誰かを傷つけるもの」なんです。だから、高海千歌には教えたくない。千歌をケガさせるだけでなく、その影響が桜内梨子や渡辺曜にまで及ぶかもしれない。自分が練習したのに鞠莉がケガしたことが、彼女の中では大きいのかもしれませんね。
鞠莉と揉めていたときの果南はこう言いました。「だったら、千歌に任せればいい」。今はもう、そんなことを言う果南ではありません。誰かに責任を押しつけてはいけない。もう一度スクールアイドルになったからこそ、同じ過ちは繰り返さない。自分の生み出した可能性で、人を潰したくない。
でも、果南の心の奥底にいる果南は違う。あんなに大事そうに抱えて、学校から離れた沼津の練習場にまでわざわざ持ってきています。第一、彼女は2年間、あのノートを捨てずに取っているのです。「やり切ったって思いたい」果南が、心のどこかにいる。
その「やり切ったって思いたい」果南を封じているのが、誰かの未来を奪いたくない果南です。あれだけ他者のことを見つめ続け、心を配る彼女を見てわかるとおり、それは他人を信じられないわけではありません。むしろ大事に思うからこそ、可能性を奪いたくない。つまり果南は、「託す自分」を信じることができないのです。
そして、自分を信じられていない子がここにも一人。千歌は過去を振り返りながら、「みんながいなければ何もできなかった」と話します。地区大会も、予備予選も「みんなが一緒だからがんばれた」。学校のみんなにも、町の人たちにも助けてもらった。「期待」という言葉に反応するのも、実に彼女らしいですね。
千歌には、自分でこれを成し遂げたと思えるものがないんです。アイデンティティがない。スクールアイドルを続けてこられたのはみんなのおかげ。ラブライブは地区予選で敗退し、廃校の危機は相変わらず。自分が何かをやり遂げたとは思えない。でも自分一人の力で何かができたら、何者かになれる。自分だけの輝きが見つけられる。千歌は、砂浜でずっとそれを追い求めています。
しかし、彼女は既にひとつ、大きなことを成し遂げているのです。浦ノ星女学院でスクールアイドルを始め、信じる力でみんなを呼び寄せ、新しい景色を見せている。普通の自分を対象化し続けるゆえに、それに気づいていなかっただけ。信じられなかっただけ。
そう、彼女にただ一つ足りなかったのは、自分を信じてあげることなんです。
果南と千歌は、とてもよく似ています。自分を信じ切れないところもそう。そして、誰かのためならがんばれるところも然り。梨子と曜から「自分の力で何とかしたいって思ってる」という千歌の心情を聞いた果南は、自分の力で成し遂げたと思えるものを作るために、自ら壁になりました。偶然にするのではなく、そこに自分の思いを乗せたのです。
本当に優しい子だと思います。自分のために自分を信じられなくても、誰かのためなら自分を信じることができる。役割を全うできる。その果南を、自分はできると信じた千歌は超えていったのです。
託すことは、責任を押しつけることではありません。託す人を信じ、託す人を信じる自分を信じてあげること。果南はずっと、自ら生んだフォーメーションをやり抜く自分を信じてあげられませんでした。だから千歌の成功は、壁を超え、過去の果南を超え、今の果南を救うこと。千歌が千歌を信じることで、果南は果南を信じられるようになったのです。だから、ありがとう。
「ラブライブ!サンシャイン!!」2期は、Aqoursの一人ひとりが自分を受け入れ、信じることで、偶然を意味のあるものにする物語です。9人全員が信じられること、それによって引き寄せられるもの、その力で起こすことが「輝き」につながるのでしょう。
松浦果南が可能性を生み、高海千歌が結実させた。ライブ後のまばゆい光景と止まらない声援は、Aqoursの生みの親「二人」が見せた、Aqoursらしさなのです。
フォーメーションの特訓を海岸で見守るのが、梨子と曜。
アニメ中では具体的な表現はされて来ていませんが、将来を嘱望されたピアニストと高飛び込みナショナルチーム級水泳選手と言う設定上、これまで歩んできた道がけっして平坦ではなく、素質だけで進んでこられるものではなかったことは想像に難くありません。
その壁を乗り越えてきた彼女らには、だからこそ千歌を止めることが出来ない。「千歌ちゃん。やめる?」は囁やけない。 “気持ちはわかる” から。
でも、壁に突き当たった時、友の前で素直に「悔しい」と吐露できるようになったのは、千歌が成長した証なのだと思います。
千歌の成長を描く前段で、梨子が果南に言うセリフ「千歌ちゃん、普通怪獣 “だった” んです」が絶妙に感じました。本人だけが気付かないもどかしさが表現されていて。
>椿さん
返信おそくなってごめんなさい!
「千歌ちゃん、普通怪獣 “だった” んです」ってすごく良いところに気づかれましたね!
なるほどと思いました。確かに、本人だけが気づかないもどかしさがありますね。
好きなもの、得意なものを「好き」「得意」と言えるようになるのは、
並大抵の努力ではありませんよね。がんばっても結果が出ない難しさを、
あの2人(3人)は図らずも共有できているのでしょう。
「TOKYO」の頃は、千歌は「悔しい」と言えなかったですもんね。
そんな弱さを見せられるのは、間違いなく成長だと思います。
コメント、遅くなりました。
第5話からこれ見よがしに果南が持っていた「Aqours ダンスフォーメーション アイディアノート」。
2年前にしたため、実現できないまま温めてきた想いでのノート。
あの頃の希望と鞠莉を怪我させたという影が、その中に詰まっているこのノートを持ちながら「やり切ったって思いたい」と千歌に話していた果南。
その果南が、「傷つけるかもしれない」「できないこと」と遠ざけたがるモノと同一であることに違和感がありました。
果南の人物評については、ばかいぬさんが今回の感想で書かれていた通り。
『他人をよく見すぎてしまう子。人のことをずっと見て、大事にする』というのも、第2回センター選抜総選挙の時のエントリーの際に挙げておられた『目立たない目立ちぶり』に繋がっているようにも思います。
矛盾に見える果南の言動も、元々の一途で優しいところと、自分以外を傷付けることに臆病になっているところが見せているのであり、根っこはやはり彼女の『優しさ』にあるのだろうな、とばかいぬさんの感想を見て再確認しました。
果南の背を押してあげたのは3年ズの鞠莉とダイヤであり、実際に想いを繋げて見せたのは、千歌だったわけで。
そんな千歌も、自分では何もできていないと思い込んで我武者羅に自分を追い込んでいましたが、曜と梨子の二人が、メンバー全員が─千歌がいたから、最初の一歩を踏み出してくれたから“今ここにいる”─と千歌に伝えたあのシーンは結構胸に来ました。
そんな千歌とAqoursのメンバーだからこそ、「できない」と言われたことを「できる!」に変えられた。
果たして、その結実したものは、彼女達が望んでいた結果を引き寄せられたのか─また、来週が楽しみです。
余談。
Twitterで果南の後姿が─って呟かれておりましたが、私は個人的に“両手で頬杖ついて座っている果南”がいたく気に入りましたw
自分こそが頑固者のくせに、言っても聞かない千歌にスネているような風にも見えて、なんとなく可愛いww
>拓ちゃんさん
返信が遅くなって申し訳ありません!
再投稿までしていただき、大変お手数をおかけしました……。
そうそう、果南は何かをやりたい強い思いはあるのに、
バランスを取らなきゃって思うとスッと引きますよね。
彼女のやりたいことへの思いと、自分の優しさ(臆病さ)と折り合わせて、
最終的に見出した答えが「託す」ことだったのは、実に果南らしいなと思います。
7話でも出てきましたが、Aqoursは学年ごとに見ても支え合いだなと感じますね〜。
鞠莉とダイヤ然り、曜と梨子然り。EDのシーンじゃないですけれども、
みんなが並んでいるというのがAqoursの在り方なのかもしれませんね。
>“両手で頬杖ついて座っている果南”がいたく気に入りましたw
年上の方にこういう言い方は失礼千万なのですが、お許しを……それな!!!!!
>>“両手で頬杖ついて座っている果南”がいたく気に入りましたw
>年上の方にこういう言い方は失礼千万なのですが、お許しを……それな!!!!!
いえいえ、ご賛同いただけたのなら何よりです(^^)
ラストの果南の「ありがとう」、これしかないと思いながらも少し違和感を感じていましたが、
>>千歌が千歌を信じることで、果南は果南を信じられるようになったのです。だから、ありがとう。
で腑に落ちました。ラブライブシリーズのアニメには、時々、あれっと思うセリフが出てくるのですが、ばかいぬさんのおかげで理解できたことが多々あります、感謝です!
ばかいぬさんのおっしゃる通り、自分を信じる、自分たちを信じる、というのが2期のテーマですね。
今回僕が注目していたのは、実は曜ちゃんです。
深夜、じっと千歌のことを見守り続け、「まだ自分は普通だと思ってる?」って声をかけた曜。
これまでもずっと千歌を信じている曜には、過去に千歌との心の触れ合いがあったことがあったのは間違いないと思うのですが、ストーリー上には表れてませんよね。
曜ちゃんにも同じような掘り下げがもう一回欲しいなぁと感じています。
>しろねこさん
コメントのお返し、遅くなってごめんなさい!
そして、「ラブライブ!」の理解の一助になれていてとってもうれしいです。ありがとうございます!
毎回必死で考えています笑
2期で曜はあまり目立っていませんが、後ろを歩く妻のごとく
全幅の信頼を千歌に寄せていますよね。
それだけ、千歌と何かをやり遂げることへの思いが強い証なのかもしれません。
ただ、僕ももう少し掘り下げてほしいなと思うので、
またお当番回をやってくれないかなと期待していますw
もう遅刻どころか第7話視聴後だったりしますがw
第6話の尋常じゃない少年漫画的アツい展開、これぞラブライブ!という感じでした。
私の中で果南を一言で表現するなら、とても責任感の強い子、ってところでしょうか。
1年生の時も自分が誘った鞠莉の将来について悩み、
今回も自分たちで出来なかった夢を後輩たちに託していいのか悩む。
責任感が強いからこそ、果南は自分で自分を縛ってしまう。
そんな自分を縛っていたものを自分で破り、果南は千歌に想いを託しましたね。
千歌が必死になっていたのは、果南からの想いを受け取ってあげられる自分になりたい、とそうも思っていたから。
・・・だといいなぁと思っています。
本当に素敵で、胸が熱くなる回でした。
そして続く7話が本当に胸が熱くて、涙なしには見られない回になるとは、この時はまだ想像もしていなかったのでしたw
>たくみさん
ああ、責任感が強い子っていう表現はとても的を射ていますね。
そうそう、責任感が強いから、鞠莉に相談せずに「鞠莉のためになることを」って思っちゃうし、
自分のやり遂げたいことを封じてバランスを取ろうとしてしまう。
他の方へのコメントにも書きましたが、「託す」ことを選んだのが、
ある意味で果南の成長だったのかなと思います。
その責任感が強い自分を受け入れて、やりたいことをやる方法を見つけたんだなぁと。
7話は実にAqoursらしさが詰まっていましたね!
そこに意味を見出すのかと頷きながら見ていましたw