このエピソードの前提になるのは、SaintSnowとの練習……の前、鹿角姉妹に浦ノ星女学院の廃校を説明するシーンです。部外者からすると随分と重たい話なのですが、Aqoursのメンバーはみんな軽やかな口ぶり。それというのも、優勝してラブライブの歴史に学校の名を残すという、新しい目標を見据えているからです。

このブログで何度か書いてきましたが、僕はこれが「ラブライブ!サンシャイン!!」という物語の大きなテーマだと思っています。すなわち、何かが叶わなくても次の目標を見つけて走り出すこと。それが、Aqoursというスクールアイドルの生き方なんですよね。

 

このお話でポイントになるのは、3年生の3人です。イタリアの大学に行くことが決まった小原鞠莉を皮切りに、黒澤ダイヤが東京の大学へ、松浦果南はダイビングインストラクターの資格を取るために海外へ行くことが明らかになります。この内浦で一緒にいることは、しばらくない。帰ってくれば、誰かがいるわけでもない。

3人とも「相変わらず」お互いに相談せずに進路を決めていますが、この子たちはこれで良いのです。この3人は、ずっと誰かが帰ってこれる場所を守ってきました。鞠莉が帰れる場所をダイヤが守り、果南が帰れる場所を鞠莉が守ってきた。果南は帰ってこれる場所ではないものの、鞠莉の将来を守ろうとしてきました。

でも、それももう終わる。これからは、自分のために前へ進むのです。誰かのために何かを守るのは、もっと大人になってからでいい。8話、9話で1年生たちの自立が描かれてきましたが、今回は3年生の自立した姿が垣間見えた気がします。

その3人の中で、鞠莉が一人抱えていた思いがありました。小さな頃、星に願おうとした「ずっと一緒にいられますように」。幼い3人はこの願いを星に届けようと大冒険を繰り広げますが、雨雲に邪魔されてしまいました。

今、ゆく先を共有した3人を、再び雨雲が包み込みます。そりゃあ、ここで満天の星空が見えたらかけがえのない思い出になりますが、現実はそうはいきません。星が見えないどころか、3人とも別々の進路を行く。それがリアル。だから、仕方のないこと――。

と、鞠莉は考えていたかもしれません。でも、そんな鞠莉をもう一度叩き起こしたのが、他でもない果南でした。

「これで、終わりでいいの?」
「このまま、あの時と同じで、流れ星にお祈りできなくていいの?」
「今はもう3人じゃない。探しに行こうよ、私たちだけの星を」

これを果南が言えることに意味があります。浦ノ星女学院での果南は、行き詰まると撤退を繰り返してきました。鞠莉の将来が大事だから、スクールアイドルから身を引く。高海千歌が必殺パフォーマンスを練習することに反対する。果南はずっと、可能性で人を傷つけることを嫌ってきたのです。

「届かないものに手を伸ばそうとして、そのせいで誰かを傷つけて」と話していた果南が、「私たちだけの星」を探しに行こうと鞠莉の背中を押す。「3人いれば何でもできるって思ってたんでしょ? だったらやってみなきゃ」と可能性を追っている。すごく良い変化ですよね。

果南はもともと、こういう素質を持っていました。海に飛び込むのを怖がる千歌に対し「ここでやめたら後悔するよ、絶対できるから」と勇気づけ、今回の冒頭のシーンでも、星が見えない中で機転を利かせながら鞠莉を励ましていました。さまざまな経験を経て、この素質をもう一度自分の引き出しにすることができたのは、紛れもなく果南の成長です。

そして、自分たちだけの星=シャイニーを探しに行こうと思えたのも、心から信頼できる9人の大事な仲間がいるからです。

このエピソードの序盤と終盤で対比になっているのが――子供と高校生の違いがあるとはいえ――3人でできなかったことが9人でできたということ。個人的には3年生3人で何かを成し遂げてほしいなと思わずにはいられないのですが、彼女たちの卒業が近づくにつれて強調されているのが、「この9人がAqours」ということです。

3人でできなかったことも、9人ならできるかもしれない。一緒に挑戦しよう、前に進もうと思える仲間や後輩ができたことが、3年生たちにとって一番大きな宝物なのではないでしょうか。だから、クルマも空を飛ぶ。流れ星に願うことじゃなく、この9人でいることが、空飛ぶクルマのドライバーにとって、タイヤが地面を離れるほどうれしくって、楽しいことなんです。

「ラブライブ!」シリーズで、雨は本来抗えない運命の象徴として描かれてきました。確かに、ずっと一緒にはいられない。いずれ卒業し、それぞれの道を歩む。だからこそ、次の願い――いつか必ず、また一緒になれますようにと願いながら歩いていくのです。

Aqoursには、リアルという波が押し寄せてきても、それを乗り越えて「次」を見据える力があります。神様の作る運命さえも“勘当”した9人の前には、鮮やかなシャイニーが広がるのです。