キャラクター・ストーリー考察

これは松浦果南によるμ’sからの“卒業式”―「HAPPY PARTY TRAIN」感想

Aqoursの3rdシングル「HAPPY PARTY TRAIN」が発売されました。歌はもちろん、新作PVのフルバージョンも楽しみな「ラブライブ!」シリーズの新曲。センターに松浦果南を据えた今回は、ストーリー性豊かな1st、2ndシングルのPVとは少々趣が変わり、抽象的な内容になっていました。

ざっくり言うと、果南が電車で一人どっかに行って帰ってきて、Aqoursのメンバーに迎えられるだけ。しかし、列車の旅に出る前と後で、果南の表情はすっかり変わっていました。この短い旅路で、彼女は何を見つけたのでしょうか?

9からの旅路

PVを順に追って見ていきましょう。冒頭、教室でつまらなさそうに伸びをする果南の姿から始まります。部屋の端っこに寄せられた机と椅子。その後ろには華やかな飾り付けが。まるで、お祭りが終わったあとのようです。

ベランダに出て空を見上げる果南。その後、Aqoursメンバーそれぞれが1カットずつ、何かに気づく素振りを見せます。よく見てみると、ピアノに水泳、コーヒーにみかん、そしてスクールアイドルの練習と、彼女たちはみんな好きなものに触れています。そう、果南以外は。

大きなイベントがあった後だからなのでしょうか、果南はハッピーになれるものを見つけられずにいます。だから曲が始まって、みんなが笑顔を見せる中、彼女だけはずっとつまらなさそうな顔をしている。そして、前回の総選挙順位と同じ「9」番ホームから、何かを探す旅に出るのです。

小さなAqoursたちが意味するもの

一人列車の席に座り、窓の外を眺める果南。その表情は晴れるでもなく、曇るでもなく。たそがれる綺麗なお姉さんの小旅行感はとても似合っていてたまらないのですが、彼女自身の行き先が定まっていないようにも見えます。

そんな果南を笑顔にしたのは、小さなAqoursメンバーとともにやってきて、ちょこんと隣の席に座った子どものころの自分。小さな自分から差し伸べられた手を取ると、止まっていた機関車が輝きを放ち、まるで銀河鉄道のごとく虹のレールを空に向かって走り出します。

この小さなAqoursの存在が意味するものはなんだったのでしょうか。おそらく何らかの象徴かと思いますが、僕は夢や未来、そして好きなことを純粋に楽しむ心だと考えます。この3つが合わさると何が生まれるのか? 「みんなで叶える物語」ですよね。

「僕たちはひとつの光」で開いた花。この「開いた花」から、Aqoursは「受け取ったよ 次の夢を」。「新しいときめき 生まれたて願いの熱さ」を抱え、そして「思い出はポケットの中」にしまって、Aqoursは「ワクワクだらけ」の道を進んでいきます。何かが待っている「とおい駅」を目指して。

μ’sと共にした時間。μ’sが与えてくれたもの。それは捨てることなく、大事にしまっておく。でも、もうμ’sは追わないと決めたのです。偉大な先人が敷いたレールの上ではなく、自分たちでレールを伸ばし、走っていく。この曲には、Aqoursの決意と期待、そして希望がいっぱい詰まっています。そう考えると、たまらなく愛しく思えるのです。

夢や未来、楽しむ心をたずさえて列車を降りた果南は、実に晴れやかな表情をしています。待っていたのは、好きなものを目いっぱい楽しんでいた8人。まっすぐな心を持つ者同士、同じ気持ちで一生懸命がんばって、一緒に成長していく。前に進んで、少しずつ夢を叶えていく。果南はこのAqoursで、新しいスクールアイドルの夢に向かって“出発進行”するのです。

みんなが空を見上げて目にした夢への特急列車が、果南の目にも映ります。そう、これは

POSTED COMMENT

  1. ちく より:

    記事を読み「たしかに!」と共感したり、「なるほど!」と新しい発見もあり、読んでいてとても楽しかったです!

    遅ればせながら今日PVを初めて見た興奮の中、自分のもやもやした気持ちを美しく言語化したこの記事を見て感動しコメントさせていただきました。

    2番の雪景色への変化、サイリウムの光のような星、ボロボロの車庫など考察ポイントかたくさんある深いPVだなって思います!

    長文失礼いたしました。これからもブログを楽しみにしています。

    • ばかいぬ より:

      >ちくさん
      コメントありがとうございます!
      楽しんでいただけて、またPVを堪能する一助になったようで、嬉しい限りです。

      雪景色や星の海など、思いを巡らせることのできる箇所はいっぱいありそうですよね。
      シンプルなようで、いろんな解釈ができるステキなPVだと思っています。
      またぜひブログに遊びにきてくださいー!

  2. 拓ちゃん より:

    今回も考察ありがとうございます。
    私も“ワクワクだらけ”で待っておりましたww
    ただ、コメントの文とする時に私も少々時間がかかりました。

    まず、ばかいぬさんのツィートで「これは松浦果南によるμ’sからの“卒業式”」とあって、一瞬『?』と首を傾げました。
    しかし、考察を読ませてもらって、「新しいみんなで叶える物語」へ繋げられたのはお見事としか言いようがありません。
    ただ、いつもの考察よりは結論重視で若干主観に寄った風に見えたので多少違和感を覚えました。(個人の感想です)
    今回のブログタイトルを見た瞬間に感じた『?』も根っこが同じなのかもしれません。
    “卒業式”と喩えられたことに対して、自分の中での気持ちとの折り合いがまだついていないのが主因だとは気付いているのですが、「さよならとはじまりをくり返して」という一節はそういうことも含んでいるのでは、と今回の考察を読ませてもらって思った次第です。

    それにしても、果南も(私も)何かを難しく考えすぎていたのかもしれないですね。
    Aqoursのメンバー全員が果南を迎えに来た様子を見るに、ちょっと前から様子がおかしかったんでしょうか。
    休みの日に練習があったはずなのに、急に「休む」と言ったのか、「帰る」と出てきてしまったのか。
    それこそ果南をセンターにした曲で、果南自身が何かを見失っていたのか、何かを気にしていたのか。
    答えは存外、自分のすぐ近く、そして自分の中にもうあって、それが幼い頃のAqoursメンバーの姿になって現れたように感じました。
    冒頭、ふとメンバーみんなが何かを感じて仰ぐ様は、「あ、繋がってるんだな」ということを雄弁に語ってくれているようで、とても大好きです。

    歌詞は視聴動画が公開された直後から「僕たちはひとつの光」のアンサーソングなのでは、との見方もあり、ばかいぬさんが述べた通り「はじまりとさよならをくり返して」「新しいみんなで叶える物語」へと続く、まだまだ終わりの見えないレールが延びていく。
    そんな想いが込められているのだと私も思います。

    さてロケ地(w)が、浦女の3年教室⇒三島駅9番ホーム(伊豆箱根鉄道・駿豆線)⇒伊豆箱根鉄道の列車の中⇒伊豆長岡駅前と移って行きます。
    伊豆箱根鉄道はラッピング電車などのコラボも行なっていますから、恋アクの伊豆・三津シーパラダイスと同じ立ち位置にあるのは言わずもがななのでしょうけど、描かれている季節と合せて少々寒々とした車窓の風景が果南の憂いのある表情と非常にマッチしていて、逆にいつもの溌剌とした果南の表情とだとかなり雰囲気が変わったろうな、と思うわけです。
    今後のナンバリング・シングルもこういったコラボを絡めて曲やPVを作って行くんでしょうかね?
    それはそれでまたハードルが高い気がしますが、それもまた楽しみになって参りますね。

    • ばかいぬ より:

      >拓ちゃんさん
      こちらこそ、今回もコメントをいただき、ありがとうございます!
      楽しみにしていただけたようで、うれしいです(*´∀`)

      僕は「ラブライブ!」ファンの中でもおそらく切り替えが早かったタイプで、
      μ’sへの思いは去年の4月1日にライブレポを書き終えた瞬間に満たされちゃったんですよね。
      彼女たちを見続けながらいろんなことをいっぱい考えて、文章にしまくって、やり切った感がありましたし、逆に十分やり切った彼女たちにこれ以上何かを求めたり、追いかけたりする気も起きなくて。
      正直なところ、今は復活してほしいとも思わないんです。

      「卒業式」という言葉を使ったのは季節的な部分もありますがw、
      そんな考えを持つ自分が書いたゆえ、極端に表現しちゃったかなん?とも思います。
      ここが合わないと、おそらく拓ちゃんさんのように違和感を覚えるかもしれませんね。
      「さよならとはじまりを繰り返して」も、これからずっと続いていくスクールアイドルそのもののことかなとも思います。

      ああ、なるほど! 冒頭の何かに気づくのは、果南の異変にか!
      めっちゃしっくりきますね。自分が好きなものに触れているから尚更なのかな。
      そう考えると、おっちゃるとおり「つながっている」感じがして、とてもステキなシーンですね。

      今のところ、PVはあそこらへんのロケーションをふんだんに使っていて、
      今回のプロジェクトのコンセプトになっている感じもありますよね。
      ああして使われるからこそ、魅力に気づく土地もあると思うので、今後もぜひ続けていってほしいですね(*´∀`*)

      • 拓ちゃん より:

        「卒業式」の件は、私自身は1年前のファイナルでの「これからも私達はμ’s」ですという言葉を信じているものですから、確かにしっくりとは来なかったんですけど、それ以上に『松浦果南による』と題されていた部分との係りで余計に「?」と思ったんですよね。
        それは先のコメントでも記した通り、「新しいみんなで叶える物語」への帰結を伴って昇華しています。

        私はご存じの通り、サンシャインやAqoursへの応援&全肯定はFinal以前からやってきていましたけど、切り替えるのではなく両立でしたから、その辺の感覚も異なるのかもしれません。
        未だにAqoursとμ’sの曲を一緒に聴いていますから、どちらも私にとっては未だに現在進行形です。
        おかげで、μ’sロスとかも一切ありませんでしたし、今以て倍楽しめているんですよね。
        余談ではありますが、スクフェスでもメンバーを混成することに全く抵抗が無い人だったりします。

        この辺は本当に個人々々での心の置き方の違いの部分ですので(個人の感想です)と明記した次第です。
        その上で、季節的なものであることは重々感じておりましたw

        こうやって感覚の異なる部分でも考察を交わしあうことで、より楽しめるのでイイですね。

        • ばかいぬ より:

          >拓ちゃんさん
          いやぁ、タイトルは精緻な意味合いより、ついキャッチーなものをつけてしまって(汗)
          「?」と思ってもらったのはある意味正解ではあるんですが、お騒がせいたしました……w

          本当に、特にμ’sを心のどこに置くかは人それぞれですよね。
          それゆえの、こういった感覚の違いを(ぶつけ合うのではなく)言葉にして
          紹介し合える方がいらっしゃるというのは、僕にとってもうれしいことです。
          いつもありがとうございます!

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