イベントレポート

PVを背負わないスクールアイドルの挑戦―「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 ODAIBA TOKIMEKI ステージ」レポート

虹ヶ咲学園の聖地であるお台場で行われた「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会『TOKIMEKI Runnners』発売記念イベント ODAIBA TOKIMEKI ステージ」。「虹学のみんな〜!」という呼びかけに応じて登場した虹学メンバーは、1年前とは比べ物にならないくらい、強い個性を発揮していました。

ファン、役との距離を縮めた1年間

彼女たちが表舞台に登場したのは、昨年9月の東京ゲームショウでのこと。翌10月には初めての公開生放送が行われ、ゲーム発の子たちということもあって、各主要ゲームメディアでの展開が続いていきました。

僕の周りでも「髪型も似通っていて、みんな同じに見える」という声が聞こえるくらい、当初はそこまで個性を感じることはなかった虹学メンバー。しかし、彼女たちはさまざまな施策によって、少しずつ少しずつ自分たちを理解してもらいながら、ファンとの距離を縮めていったのです。

距離という点では、ファンだけでなく役とも縮めていったように思います。「スクスタ」の配信が遅れ、二次元側の展開が非常に限られている中、「スクフェス」に追加されたストーリーで演じたり、マンガから役のパーソナリティの一端を読み取ったりと、おそらく虹学メンバーそれぞれが、自分の役と向き合ってきたはずです。それが形になったのが、「ラブライブ!」ならではの“演役同体”の「自己」紹介なのではないでしょうか。

(それゆえ、どれだけ愛していようとも、演者が役を演じている、何かを話している際には黙っていてほしいと思います。というか愛しているなら、普通聞くよね?)

自己紹介を含め、数百人のファンの前で話す虹学メンバーの姿は堂々としたもの。初めての公開生放送での手探り状態から、1年でここまでできるようになるんだなと感心しました。

この成長こそが「ラブライブ!」プロジェクトの醍醐味。がっつりとは追わずとも、少しでも「ラブライブ!」に興味があるのなら、何かしらのタイミングで彼女たちの姿を見ておくのも良いのではないでしょうか。この醍醐味は、脚本がなくともストーリーが生まれる、生身の人間ならではのものです。

PVを背負わないスクールアイドル

虹学メンバーは、難しいロケーションでのダンス・歌唱となりましたが、元気いっぱいのパフォーマンスで「TOKIMEKI Runners」を初披露。

フルでは初めて聞きましたが、冒頭から全員で歌い、それぞれのソロ、そしてまた全員へという流れが、ソロ活動の集合体である虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会にぴったりな一曲となっていました。「ラブライブ!」伝統のツーステップや3×3フォーメーションも盛り込まれており、“らしさ”も感じられます。

一方で今回、虹ヶ咲学園の聖地・お台場で行うこと、適した会場がフェスティバル広場だけだったこと、文字通り階段の踊り場で踊ったことなど種々の要因があったせいか、おそらく初ではないでしょうか、映像をバックにはしませんでした。

そこは「ラブライブ!」らしさを残してほしかったかな……と思う反面、上記のような会場の都合もあるので、今後に注目です(やらないことはないんじゃないかと思うのですが)。ただ一つ言えることは、PVを背負わなかったからといって、決して楽ではなかっただろうということです。

PVがないならないで、キャストは役を身一つで表現し、ファンの目を受け止めなくてはいけません。もとよりキャストを前面に出す展開の仕方とはいえ、キャラクターの“ホーム”であるゲームが出ず、役の引き出しが少なくならざるを得ない中、その子としてパフォーマンスをして視線や期待を全部受け止めるのは、虹ヶ咲学園ならではの難しさがあるのではないでしょうか。

9人それぞれがどれだけ自分と役のシンクロ性を考慮していたかはわかりませんが、少なくとも「リスアニ!」2018年11月号を読む限り、「この子ならこの歌をこう届ける」ことをすごく考えていることが伺えました。「ラブライブ!」である以上、役とのシンクロ性を見られることは避けて通れないことですが、その中で1曲を9人で堂々とやり切ったことに、今回のイベントの意味があります。

個人的に気になっているのが前田佳織里さん。言葉と考える方向性がとてもしっかりしていますよね。場を取り仕切るのも上手そうです(気になる理由が「しっかりしてそう」という点に年齢を感じます……)。前述の「リスアニ!」インタビューでもその一端が垣間見えるので、ぜひ読んでみてください。

ファン一人ひとりが「ラブライブ!」らしさを考える

11月21日(水)に発売が控えるデビューアルバム「TOKIMEKI Runners」。それぞれの個性が強く表現されているソロ曲は、畑亜貴氏の作詞ではなくなりました。そして彼女たちは、グループとはまた違う「同好会」です。

今までと同じことをしていては衰退してしまうのが当然で、新しい何かを模索している、ある意味で挑戦的な集団とも言えます。大げさではありますが、彼女たちを見ている側にも「『ラブライブ!』とは何か」を問いかけられているように思うのです。

ただ見ているだけでなく、「自分にとって『ラブライブ!』とは何なのか」「自分の中で、何が『ラブライブ!』を『ラブライブ!』足らしめているのか」、そんな問いへの答えを探しながら、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が切り拓く道をたどるのも良いのではないでしょうか。

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POSTED COMMENT

  1. たくみ より:

    コメントに書き込むのは久しぶりになります。

    久々にほやほやのページを覗き、虹ヶ咲の記事が書かれている!と。
    ばかいぬさんの感じる虹ヶ咲がどんなものかと、楽しく読ませてもらいました。

    虹ヶ咲…難しいですね。
    もう発表から1年以上が経つのに、私は未だにどう彼女達に向き合うべきか未だに迷います。
    同じコンテンツでありながら、正直なところまだ興味は浅いです。
    媒体や動画放送なども適度に追い掛けているんですけどね。
    これだけ愛するようになったAqoursと虹ヶ咲、何が違うのか不思議に思います。
    私の中の答えは「まだ彼女達に物語がないから」ではないかと。

    つまり私にとっての「『ラブライブ!』とは何か」とは「青春ストーリー」なんですね。
    ストーリーのところ、大事です。キャラが生きていると感じるにはやはり物語が必須だと思っているので。
    ただそれだけだとラブライブじゃなくてもよくなってしまいます。
    部活系青春ストーリーは他にもいっぱいありますから。
    しかしラブライブでは演者さんが他に類を見ないほどキャラに寄り添い、一心同体で展開していきます。
    アニメとリアルの相乗効果といいますか。
    要するに感じる青春臭さが半端ないわけで。
    (実際にここまでハマったのは1stライブを観たことが多分に関係していると思います)
    アニメでしっかりとキャラに生が与えられ、それを土台に演者の皆さんが追随するように泥臭く頑張る。
    そこが他作品と一線を画し、私がドハマりする要因となったのではないか、と。

    そんなわけでまだ「ストーリー」がない現状の虹ヶ咲では、残念ながらまだ私の琴線に触れないのではないか?
    と、そんなことを、明日からのコミケのチェック付けで時間がない中、長々と考えてしまったのでした(笑

    • ばかいぬ より:

      拓ちゃんさん、コメントありがとうございます! お久しぶりです。
      おっしゃるとおり、ストーリーは「ラブライブ!」はもちろん、
      色々なコンテンツを楽しむ上で非常に重要なファクターですよね。

      特にファンが共感しているのは、キャスト自身の「ストーリー」なのだと思います。
      自分と同じ時間を生きる人たちが成長していくプロセスは、
      何者にも代えがたいエクスタシーなんじゃないかと。
      その見せ方に共感できるかどうかで、「ラブライブ!」各シリーズにハマれるかどうか変わるのかもしれません。

      そういう意味では、虹ヶ咲はキャラクターのストーリーはなく、
      キャストのストーリーは始まったばかり。

      ただ、こと「ラブライブ!」に関しては、始まり=スタート地点を見るからこそ、
      その後の成長ぶりが、より鮮明に感じられるのではないかとも考えています。
      がっつりと追わずとも、少なくともなんとなく眺めているだけでも、その価値はあるかもしれませんね。
      なにしろ「ラブライブ!」の子たちは、えらい成長が早いですので……!笑

  2. 椿(Chin) より:

    ご無沙汰しております。
    また性懲りもなく、古い記事にコメントしてしまいます。

    先日、ネットの海でAqours 1st liveの流出動画を見つけました。
    “想ひと” の別アングル物なのですが、伴奏が止まった瞬間が引きの画面で捉えられていました。
    逢田氏の異変に真っ先に気づいたのが、小宮氏。しかし、気づきながらも、そこから動けずにいる姿が見て取れます。
    「アニメとのシンクロ」が売りの代名詞ともなっているラブライブで、フォーメーション位置を崩すことは出来ないとの意識が働いていたのだと思います。
    “ピアノの有る壇上は東京。八人が踊る舞台は沼津” であり、その間には遠い隔たりがあって、そこへ行くことが不可能だからこそ意味が深まる曲であり、そこを崩して逢田氏に駆け寄る事は、曲が止まる以上に・或いは我々が思っている以上に “ラブライブらしさ” を崩すものだったのかもしれません。
    でも、それを「梨子ちゃんのために(梨香子のために)」と、躊躇なくリーダーが突破してくれた。それによって、キャストが「PVをコピーしなくてはいけない」殻を破ることが出来たのではないのかな?それが、4thの同曲で新しい振付に挑戦することを可能にしたのではないのかな?と、思い始めています。

    Aqoursが「PV通りでなくとも良い」との評価を受けた事を受けて、PVを背負わずに動き出した虹ヶ咲の面々は、より自由な解釈で曲を表現できるのではないかと期待します。
    いよいよ、スクスタも配信直前となって盛り上がりたい所ですが、スタリラにも似たゲームシステムについていけるか、ちょっと不安です(焦

    • ばかいぬ より:

      椿さんご無沙汰しております!
      いつもコメントありがとうございます☆

      Aqoursは「ラブライブ!らしさ」と思われていたものを結構ブレイクしていますよね。
      最たるところでは、「終わるはずのスクールアイドルが終わらない」点だったり……。
      個人的には納得できないところなんですが(w)、部分部分でμ’sの真逆を行きながら、
      その上で新たな「ラブライブ!らしさ」が生まれてくるものかもしれません。

      虹ヶ咲はどうなるでしょうね。品川でのイベントではゲーム画面のダンスシーンを
      背負いながらのパフォーマンスでしたが、1stLIVEでどう進化していくのか楽しみです!
      椿さんがスクスタにも馴染めますように……!w

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