成長をほのめかす描写から入った今回の「ラブライブ!サンシャイン!!」。路線図でパニックに陥らない黒澤ダイヤ、男坂を余裕で駆け登るメンバーたち、そして最たるものが鹿角聖良の言葉でした。

弱々しいと思っていた以前のAqoursに対しては、「諦めた方がいいかもしれません」。なんて頼もしいんだろうと思う今のAqoursには「勝ちたいですか?」と声をかける。Aqoursが実力をつけ、一線級のスクールアイドルから認められた証です。

しかし、聖良の言葉で高海千歌の心に迷いが生じてしまいます。「誰のためのラブライブですか?」。

 

「勝ちたい」には、恐怖がつきまとうものです。願望である以上、叶う時も叶わない時もある。勝てなかったらどうしよう? 特に今のAqoursは、浦ノ星女学院の名を残すという大きな、しかし後がないミッションに挑んでいます。負けてしまっては、何も残らないのです。

その恐怖は一歩先に行くと、迷いに変わります。学校の名が残らないかもしれない恐怖とはつまり、学校のための大会であるということ。あの時、聖良に「勝ちたいですか?」と尋ねた千歌は、他の何かのためではなく、自分のために自分の気持ちでラブライブという大会に向き合っていました。でも、あの時と今は違うように思える。勝つために挑んでいいのかな……?

千歌の思いを察して、突如枕投げを始めた渡辺曜。終盤で千歌にかけた言葉然り、この子は本当に親友の視点でモノを見られる子ですよね。千歌と一緒に何かをやり遂げたいという曜の思いは、伊達じゃないのです。

勝ちたいと思うからには、必ず理由がある。望みがなければ、勝ち「たい」と思わないからです。千歌はAqoursのメンバーそれぞれに、その望みを聞いて回ります。これがおもしろい。もう本当にみんなバラバラなんですよね。

楽しみたい、うれしい、誠心誠意歌いたい、証明したい……不思議と、学校のためと言う人は誰一人としていませんでした。みんな、学校の名を残すべくこの大会に挑んでいる。でもその向こう側で、一人ひとりが大切な思いを抱き続けている。

それでいいんです。彼女たちは色々な悩みや迷いを抱えながらも、それを乗り越えて、自分の気持ちが指し示した目標に向かって自由に走ってきました。それは、ラブライブ決勝という大舞台を前にしても変わらない。動機も、向かう先も、成し遂げたいことも、明神さんに願うことも、多種多様、十人十色。だからこそ、本気になれる。千歌がさり気なく言った「みんなそれぞれ自由。行きたいところに行く」という言葉が、僕は大好きです。それぞれが自分の思いに素直になり、自分の成し遂げたいことを大切にしてきたからこそ、ここまでがんばってこれたのですから。

だから、千歌もそのままでいい。自分の気持ちが示した道を一歩一歩進んできた結果が、「勝って学校の名を残すミッションを背負いながらラブライブ決勝に臨む」というシチュエーションです。一瞬一瞬の「今」の積み重ねが未来であり、その未来が「今」となる。時は進む。未来のことに臆病にならなくていいのは、今が重なり合ったものが未来だからです。今に全力を注いだ結果が未来になるのだから、今だけを見据えればいい。

ゆえに、勝ちたいからといって、勝たなくてはいけないからといって、何かを変える必要はないのです。あの時も今も同じ、「輝きを見つけたい」でいい。「輝きを見つけたいから勝ちたい」でいいんです。それは千歌だけの特別な思い。そんな自分だけの特別な思いを、みんなが持っている。その特別な思いを積み重ねて、普通の怪獣はここまで来た。だからもう大丈夫。普通を突きつけた0に、「バイバイ!」。

みんなが抱えている思いはそれぞれ。でも、そんなバラバラな人々が「勝ちたい」という同じ思いの元に集まるからこそ、大きな意味と力を生み出します。居場所は変わっても空はつながっているし、学校が変わっても契約は絶対。自由に行動していても同じ時間に全員集まってくる。何かを成し遂げたいという夢があるからこそ、彼女たちはAqoursという場所に集まってかけがえのない時を過ごすことができました。そんな場を作ったのはほかでもない、高海千歌その人なのです。