学校説明会が1週間延期され、ラブライブ予選と日程が重なってしまうことに。Aqoursにとっては大きな問題ですが、しかしそこからの彼女たちは不思議に思うほど明るく描かれています。悲壮感なんて、ほとんど感じられないと言っていいほどです。

黒澤ダイヤは、ラブライブ予選にトップバッターとして出場し、すぐさま移動するという手段を発案。そのためには抽選で1番を引かなくてはなりません。くじの引き手が決まらない中で立候補したのは、津島善子。この時の国木田花丸の表情がとても印象的でした。

確かに善子はAqoursでみんなと一緒に活動を続けてきたけれど、こうした積極性を見せるシーンは花丸から見てもあまりなかったのかもしれません。善子がAqoursのために何かしようとして、「Aqoursの一員」となったのがうれしかったのではないでしょうか。そんな花丸からの(文字通り)後押しもあって、善子は見事に24番をゲット。「堕天のD」賞を引く手腕はさすがの一言です。

進退窮まったAqoursは、決断するしかなくなりました。説明会か、ラブライブなのか。

 

学校説明会とラブライブを天秤にかけるというのは、学校と自分たちのどちらかを選ぶということ。でも、どちらか選べと言われても、選べるものではありません。というより、彼女たちがスクールアイドルである以上、これは切り離せないものなのです。

学校があるから「スクール」アイドルになれる。そして、スクールアイドルとして輝きたいからスクールアイドルをやる。多くの人の耳目を集めるくらい目いっぱい輝けば、学校という“前提”も守られる。まるで循環するかのように、「学校」も「スクールアイドル」も、どちらもスタート地点になれるんです。

だから、分けて考えることは不可能。学校説明会とラブライブ、両方を獲りにいく。

しかし、両獲りが現実的ではないのも事実。そんな中、都会っ子らしいリアリスティックな言葉を口にしたのが桜内梨子です。

「私たちはキセキは起こせないもの」
「だから、その中で一番良いと思える方法で精いっぱいがんばる」

この間「キセキを!」って言ってたじゃん! と思った方も多かったでしょう。でもその前に、彼女は大きな挫折を味わっています。プレッシャーでピアノを弾けなかったあの時から、梨子はあらゆる手を尽くして“海の音”を表現しようとしました。でも、できなかった。彼女の中で、キセキは起きなかった。それが今の梨子を形作り、このような言葉になって表れているのです。

ただ、採ろうとしている方法は正しい。「そう、だね」と中途半端な反応を示した高海千歌は、スクールアイドルを始める際にμ’sの歌を覚え、渡辺曜という協力者を探し、入学式で勧誘を行い、メンバーが揃わない中でダンスの練習を続けました。そして最大の難関・曲作りに悩んでいるところに、ピアノの弾ける梨子が転校してきた。一番良いと思える方法でがんばり続けた結果、「キセキ」が舞い込んできた経験が、彼女にはあります。

梨子がやろうとしていることは正しい。問題は、その先にキセキがあると知っているかどうかです。

梨子からは二手に分かれる妥協案が出されましたが、結局、Aqoursはメンバーを分けませんでした。前回までの流れを汲めば、2年生3人とそれ以外で分かれる手段もあったと思います。でも、今回は曜ではなく、黒澤ルビィが衣装を作った。梨子ではなく、雨の音を聞いた6人が曲を作った。そして、2つの曲に込められた思いは同じだった。ならば、9人で歌おう。松浦果南は「私たちはひとつじゃなきゃね」と言っていましたが、9人で輝くからこそ、「私たち」はひとつの光になれるのです。

予選の舞台となった特設ステージは、学校からは遠く離れた場所。学校説明会と同じ日取りのため、浦ノ星女学院生も来れません。少ない声援、まばらな拍手、そこに「町の人たちの善意」はない。でも、Aqoursは9人の力で完全アウェイにファンを生み出しました。ここに大きな意味があります。「今までのスクールアイドルの努力」ならぬ、「今までのAqoursの努力」によって、自分たちへの声援をもぎ取った。Aqours一本立ちの瞬間です。

さあ、ラブライブ予選の次は学校説明会です。バスや電車が著しく少ないのがこの土地ならではの苦難なら、みかん畑のモノレールが使えるのはこの土地ならではの恩恵。内浦のスクールアイドルは、笑顔でみかん畑を駆け抜けていきます。

2年生の一人として他の6人を先導しながら、梨子は何を考えていたでしょうか。できることを精いっぱいやるんだと思いながらも、もしかしたら本当に間に合うとは信じ切れていなかったかもしれません。

でも、本当は梨子だってキセキを経験しているんです。何をやってもピアノが弾けない、楽しくならないと悩み続けていたけれど、あの日「諦めることないよ」と言った千歌と指を合わせた。どうにかしたい一心で、スクールアイドルの門を叩いた。

自分が起こしたことじゃないと思うかもしれない。結局千歌に説得されたけれど、一度はピアノを割り切ろうとしたんだと思っているかもしれない。けれど、ステージでもう一度鍵盤と向き合い、海の音を奏でてみせたのは他ならぬ梨子自身です。周りの人たちの力を借りながらも、回り道をしながらも、梨子は自分の中でキセキを起こしているのです。

そのキセキを、今度は対象化する。キセキは、現実に起きるから「キセキ」なんです。キセキと現実は地続き。だから、今できる一番良い方法を精いっぱいがんばる。何とかする、何かを変える、その一心で山道を走り続けた梨子を、キセキが待っていました。ここで梨子は、善子に続いて「Aqoursに追いついた」。全員の足並みが揃い、向かう先が定められ、Aqoursは正真正銘「ひとつ」になったのです。

9人が揃う。“始まりの歌”は、そんな時に流れます。ここが本当の、Aqoursのスタートです。