0を1にした。1が10になった。それは確かな一歩。けれど、小さな一歩でしかありませんでした。現実として突きつけられたのは、100という数字。本当にリアルを変えるなら、あと90人の心を動かし、人生を委ねるに足るものを感じさせないといけない。とてつもないパワーが必要です。
とはいえ、具体的な目標として数字が出てきたのは、小原鞠莉の小さくない功績です。Aqoursはこの数字に向かって歩み始めました。その第一歩が、次回ラブライブ予選と学校説明会。近いうちに2つの曲が必要なAqoursは、鞠莉の提案で二手に分かれて曲を仕上げることに。
ここからは、全体的にコミカルな拍子で物語が進んでいきました。そしてコミカルだなー……と思いながら見ていたら、いつの間にか丸く収まった。そんな感想を抱いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、このストーリーを理解するポイントは、そのコミカルの中にあります。国木田花丸の語った「無」です。
花丸が話した「無は何もないのではなく、無という状態があること」は、仏教の教えです。筆者はクリスチャンなので仏教には明るくないのですが、「そこにモノがあるが、それに自分のイメージを添えていない状態」のことだそうです。
では「有」は何かというと、そこにあるモノを認識すること。つまり自分の思いを介入させた状態です。例えば何かに悩んでいる状態は「有」ですね。ある事象に対し、自分の思いを入れ込んでしまうから悩む。逆に、ムダに拾い上げて悩むことなく、ただただ今を謳歌するのが「無」です。「無心で楽しむ」って言いますよね。
この「無」という状態は何か? 今を謳歌すること、今この瞬間に力を注ぐことです。そう、昔でいう「今が最高」、今でいう「輝く」なんですね。花丸は、「ラブライブ!」の根幹にあるテーマを彼女らしい言葉で語っている。「無があるということこそ、私たちが到達できる究極の局地ずら」と言っていますが、まさにその通りなんです。
9人だとまとまるのに、6人だとまとまらないのが面白いところ。2年生たちはAqoursの核であると同時に、ハブ役でもあったことがわかります。1年→2年←3年という形で、上下の学年が2年生に同調・協力することで成り立っていた。1と3がつながっていないのですね。
「コミュニケーション不足」と簡単に表現されていましたが、敢えてややこしく言えば、1年生と3年生は同学年のメンバーが好きすぎるんです。自分の「好き」で世界が塗り潰されてしまっている。
1年生と3年生で唯一、密接に関わっている黒澤姉妹がハブ役になり(ここで2年生がもう一度介入しなかったのは本当に偉いと思います)、コミュニケーションを増やすことにチャレンジ。で、ドッジボールやら読書やらやってみるけど、上手くいかない。それは、自分の好きなものに引きずり込んでいるだけだからです。
友達や同僚に、好きなアニメのDVDや音楽CDを押しつけられて「めんどくさいな」と思った経験がある方もいらっしゃるでしょう。アレです。ドッジボールは松浦果南の世界、読書は花丸の世界。温泉も黒澤ダイヤの世界だし、ついでに言えば鞠莉の家はもちろん鞠莉の世界。他人の「好き」に引きずり込まれているから、居心地が悪いのですね。
結局、これらは「有」の世界なんです。誰かの色一色に塗り固められた場所。その人と、その人と同じ「好き」がある人以外に入る余地がない。そんなところでは、6人の「伝えたいこと」をまとめることなんてできない。
では、雨宿りのために訪れたお寺はどうでしょうか。花丸の「知り合い」という、遠い間柄の人のもの。「電器は?」「ないずら」と、お堂の中には何もない空間が広がっています。そしてロウソクが消え、光すらもなくなった。そこにあるのは何か? 何もない空間、つまり「無」です。
雨漏りをきっかけに6人は、この何も描かれていないキャンバスに絵を描き始めました。手分けしてお皿を配し、協力して被害を抑える1年生と3年生。まるでペンキをローラーで塗り広げるかのように、お堂の中を動き回ります。「無」が、6つの色で彩られていく。
お皿、お茶碗、桶。不揃いな器が並び、そこに雨水が落ちてさまざまな音色を奏でます。それが連なり、まるで一つの曲のように聞こえてくる。黒澤ルビィは「そんなに違うのかな」と独りごちていましたが、それでいいのです。バラバラな6人だけど、それでいい。全員が同じである必要はなく、ただみんながそこに入れればいい。なんなら、“部外者”の子猫だって入ってこれる。果南に懐く猫は、そこが誰かの世界で染まった空間ではないという証拠。お互いに受け入れ、受け入れてもらう。そんな「無」が、この6人には必要だったのです。
一つの曲で、同じ音符が延々と続くことはありません。いろんな音符が重なり、連なり、調和して曲になっていく。6人の個性と思いが詰まったこの曲は、予選突破への切り札です。
第2話感想読ませていただきました。
花丸の『無』を深く掘り下げてきた着眼点には、“ムムム……”と唸りました。
あ、ココは『無』と“ム”で掛けててね!
─なんて、千歌ちゃん風のボケは置いておくとして。
ばかいぬさんが触れなかったのは敢えて意図があるのだと思うのですが、
今回観ていて、徹底的に無印2期の2話をなぞるかのようにイベントを並べていましたね。
・ラブライブ!予備予選用に新曲を作らなければいけない。
・3年生(絵里/鞠莉)先導で曲作り&グループに分かれることに。
・お金持ちさん(真姫/鞠莉)のお宅訪問。
・温泉&ナイスプレイ。
・普段頼りになる3年生(絵里/果南)の弱点露見。
・朝焼けの中で曲が完成し、さぁ練習!…ってところでの引き。
あと、1年生と3年生のコミュニケーションの件で言えば、無印1期10話「先輩禁止!」とも繋がりますね。
重ねて来ているのは、敢えて行なわれていることなんだろうな─と思いますし、こうやって対比して観る楽しさは1話でも話題に出ていたことですから不思議ではないですし。
しかし、こうまで重ねても、やはりμ’sはμ’s、AqoursはAqoursの良さがそれぞれにあることを魅せていて、それがばかいぬさんが語られた『無』と『有』の話に繋がるんだな、と思った次第です。
1期では“海の音”が「♪想いよひとつになれ」になりましたが、今度の“雨の音”は一体どんな曲になるのでしょうかね。非常に楽しみです。
>拓ちゃんさん
今回もお読みくださり、ありがとうございます!
ムムムと唸っていただけてよかったですw
μ’sのときと重ねてるって話はよく出ていますね。
個人的にはそこを発見するのも良いのですが、
似ているから何なのか、何を意味しているのかを(僕はここで)書かないといけないと思っています。
同人誌の方で扱うかもしれませんけど、今は「無」の
話のほうがずっとおもしろいなと思ってそちらを書いた次第です〜。
敢えて「無」「有」でμ’sのほうを語るならば、3グループ全部
別荘の外で過ごしたのが「無」だったんでしょうね。
何もない外が、今回でいうお寺だったのかなと思います。
ここに来て重要なエピソードでしたよね!
花丸ちゃんの『無』の概念の話、一見難解かと思いきやAqoursが兼ねてより詠っていたテーマそのものですねー^^
Aqoursは舞台が地方なのでメンバー同士顔馴染みが多く、最初からフレンドリーで先輩後輩の垣根はあまり感じないのだけど、千歌ちゃん達2年生を中核にしながらも、学年ごとに自然と固まっているように思っていたので、グループ全体の絆が更に深まって行く兆しを感じ嬉しかったです!もっともっとこの9人の繋がりを掘り下げた話をこれから観れたら良いなぁ^^
歩み寄りとは、同調を強いることで無く、互いの違いを認め受け入れ合うと言うことなんですね!皆で同じ光の方へ走り始めた彼女達の新曲!楽しみです♪
>あすかさん
「無」はあくまで私がもっともらしく解釈しただけではありますが、
こういう見方もあるかなと思います!
いきなり出てくるには突拍子もない話ですし、意図があるのかなーと。
Aqoursは学年内の距離は近いのですが、意外と学年間のつながりが
薄かったので、こういうエピソードはうれしいものですね。
彼女たちもよりお互いを知ることができたのではないでしょうか。
そうそう! 同じである必要はなく、違いを受け入れることが大事です。
そんな思いも込められた新曲だとうれしいですね♪
>仲良し作戦が上手くいかなかったのは、自分の土俵に引き込もうとしたから。
まぁ、ヲタの端くれとして「ドン引かせてこそ」などと言う変な信念を、自分は持ってたりするんですがw
そう言えば、色々な土俵を見せてもらいましたが、善子ちゃんとルビィちゃんの土俵は明確には描かれなかったですね。
善子ちゃんの場合は己の世界が確立されていて、描写としても散々なされているし、その世界は彼女の物であって何人も踏み入れられないし、踏み入れる必要も無い世界と言う事で良いでしょう。
では、ルビィちゃんの場合は?ダイヤさんとニコイチって事なんでしょうか?それとも、彼女の世界は「スクールアイドルが好き」だから、既に共有されているって事なんでしょうか?
雨垂れ音の意味に真っ先に気づいたのが彼女であったのも、その表れなのかな?と思います。
>椿さん
善子についてはおっしゃるとおりです! 彼女は常に自分の世界を展開できますw
ルビィは、別のエピソードが用意されるかもしれないし、もう描かれないかもしれない。
個人的には、物語がうまく描けなくなるくらいなら、全員平等に扱わなくてもいいと思います。
ただ、今回に関しては、スクールアイドルのことでみんなして
試行錯誤しながらがんばる、このことこそがルビィの土俵なんじゃないかな?
と僕も考えています。
遅くなりましたが、2話の感想を読ませていただきました。
もう3話放送まで24時間ないずらー。
花丸が何気なく語った「無」から2話全体を読み解いていく流れ。
なぜ突然「無」?と思いはしたものの、それをきっかけに最後まで綺麗にまとめてくれた今回の感想。
目から鱗とはこのことで、本当に素晴らしいものでした。
夢中と書いて無中。
雑念に捕らわれず、無心で目の前のことにただひたすら取り組む。
諦めが悪く、思い立ったら一直線な千歌は、それを体現したキャラなんですね。
2年生と比べて個性が強い(クセが強い)1年生と3年生。
まとめ役だった2年生の要素を完全に抜いて、6人だけの力で心を通わせていく構成はすごく好感が持てました。
これでより一層 “9人” の結束が強くなったことでしょう。
そしてその裏で2年生、とりわけ千歌がどれだけAqoursというグループを纏めるために必要な存在であるのか。
それを表に出すことなく描いていた回でもあったと思います。
もう「一応」じゃなく「立派な」リーダーだなってくらい2期の千歌は頼もしさを感じます。
(※千歌推しだからどうしても視点がそっちにばかりw)
いやぁ毎回ばかいぬさんの感想を、その回を脳内で思い出しながら読んでいるのですが、
今回の感想はすごく心を震わせてくれました。思わず目頭熱くなっちゃったくらいw
ちょっとノスタルジックな感じが漂う回だったからでしょうかね。
実は1期の感想でもちょくちょくあったのですが、不思議とばかいぬさんの書く文章は私を惹きつけますねー。
次回も楽しみに待ってます。
>たくみさん
今回もいらしてくださり、ありがとうございます!
目からうろこと言っていただけて、自信になります(ノ´∀`*)
千歌は、自分で「無」を展開できる数少ない子ですね。
リーダーなのでまとめ役でもあり、もちろん引っ張ってもいるのですが、
時に一歩引くことができる子なのかな〜というのが、1期を見ての印象でした。
いずれ彼女だけで文章を書くときが来ると思いますが、たくみさんにもご満足いただけるようなものを書きたいですw
ひゃー! そんなに感動していただけるなんて、恐縮です…!
でもめっちゃうれしいです!w 相性などもあるのかもしれませんね。
次回もがんばルビィしますー! ありがとうございます!