ついに出てきた「廃校」というワード。電撃G’sマガジンの連載での設定では、浦ノ星女学院は既に廃校が決定しているということでしたが、ここにきてアニメでも学校がなくなってしまいかねない状況になりました。
廃校の一報を聞いて驚くAqoursの面々の中で、一人うれしがる高海千歌。目標とする音ノ木坂学院のスクールアイドル・μ’sと自分たちが同じシチュエーションに身を置くことになり、テンションが上がっています。そのまま「Aqoursは学校を救うため、行動します!」と意気込む千歌ですが、何をするか問われても何も言えず。この時点では、あこがれの存在と同じ状況になったテンションと勢いに任せているだけです。
そのμ’sがやっていたことに倣い、AqoursはPVを制作することとなりました。
千歌が気づいたこと
千歌はPVのテーマを「内浦のいいところ」に設定。学校の外に出て、仲間たちとともに撮影を開始しました。
ただここで確認しておくと、μ’sのPVは生徒会の部活紹介ムービーに協力し、その見返りにカメラを貸してもらうということがきっかけでした。その時点で3人で歌った楽曲しかなく、7人に増えたから新しいPVを作りたい……という流れ。学校や地域の魅力という考えはPVの構想になく、そもそも「学校の外」に出ていません。すべて中――学校の中、μ’sの中――の出来事でした。
千歌たちは雄大な富士山、きれいな海、みかん、勢い余って「特に何もない」町をピックアップして内浦の魅力を紹介しようとします。しかし実は沼津まで遠かったりと、どうしても不便さも目立ってしまいます。
喫茶店で作戦会議をするAqoursでしたが、結局何も決まらないまま。しかしここで千歌は、大事なことに気がつきます。「でも、学校がなくなったら、こういう毎日もなくなっちゃうんだよね」。千歌の廃校を阻止したいという思いの要因が、ここで初めて外的なもの(μ’sと同じシチュエーション)から内的なもの(仲間たちとの楽しい日々を守りたい)に変化したのです。
「今、気がついた。なくなっちゃダメだって。私、この学校好きなんだ」
学校が好き。それは「大変だけど、楽しいよ」(黒澤ルビィ)と思える時間、仲間に出会えた場所だからなのですね。
鞠莉が怒った理由
PVのドラフト版を制作したAqoursは、浦ノ星女学院の理事長でもある3年生・小原鞠莉に見てもらうことに。しかし鞠莉は「(本気でやって)この体たらくですか」と一蹴し、Aqoursがこの町や学校の魅力に気づいていないと一喝します。
「少なくともあなたたちよりは」町の魅力を知っているという鞠莉。では彼女は、いつそれに気づいたのでしょうか? 鞠莉が幼い頃からずっとこの町で育っていたならそのタイミングは幾度かあったと想像しますが、ひとつ挙げるのならば、Aqoursのファーストライブの時です。
田舎の学校の、できたばかりでボロも目立つスクールアイドルのために、あれだけの人たちが集まり、声援や拍手を送る様を、鞠莉は間近で見ていました。その「あたたかさ」に彼女は気づいた。そして当のAqoursがそれに気づいていなかった、もしくは忘れてしまったことに、鞠莉は腹を立てたのではないでしょうか。
ただ千歌の良いところは、それを(もう一度)自分たちの手で見つけようとした点です。教えられては、本当の意味で魅力を知り、アピールすることにつながらない。千歌もわからないなりに「それって大切なこと」だと感じていた様子。このステップは、彼女たちにとって必要なものだったのです。
梨子が目にした、この町の魅力
海の町の行事のひとつ、海開き。海開きの際には神事のほかに清掃活動なども行われるようですが、内浦の海開きでも町の人々が総出で砂浜のごみ拾いに勤しんでいました。
この海開きに初めて参加する、東京からの転校生・桜内梨子。梨子は町中の人たちが砂浜に集まっているのを見て「この町って、こんなにたくさん人がいたんだ」と驚きます。そして気づくのです。「これなんじゃないかな。この町や、学校の良いところって」。
梨子が気づいた「これ」とは何でしょう。それは、この時間、この海開きのために、内浦の海のために町中の人々が集まり、一緒にひとつの時間を共有できるということ。梨子はここで、ライブと同じ感覚を抱いたように思います。一段高いところから見た、人が集まった砂浜という景色が、自分が立っていたステージと重なったのではないでしょうか。
そして千歌も“ステージ”にあがり、「あたたかい」町の人々に向かって、廃校を阻止するために協力を仰ぎました。これこそがAqours最大の長所、「このTownやSchoolの魅力」です。
Aqoursには、μ’sのように周りの人をどんどん巻き込んで大きくなっていく風力はありません。でも、彼女たちの周りには同じ時間を過ごし、協力してくれる「あたたかい」人たちがいます。だからこそPVを「学校の外」で撮るのです。
姿こそ見せませんでしたが、喫茶店の店員さんはこの町の魅力の象徴。彼女はAqoursの面々を“お客さん”ではなく、近所の学校の子として、“人”として接していました。これこそが、内浦という土地の魅力。風景やモノではなく、人そのもの、人の中にある気持ちそのものです。
何もなくても、気持ちがある。とても青くさく見えるかもしれません。でもいいじゃありませんか、彼女たちはスクールアイドルなんですから。一番大切なものさえあれば、それが始まりになる。それさえあれば始められる。始められるなら、できるのです。
「なるほど」
今回もこの4文字が唸りました。
鞠莉の視点の件は、海開きの清掃と繋げる上で尤もな解釈ですね。
それこそ3話で志満姉が曜に向かって言った、「みんな、あったかいから」というセリフが思い出されます。
千歌が「何もない、助けて!」と叫んでいたはずのこの場所にこそ大切なものがある。
そんな場所を守りたい、と誰しもが思いながら、それぞれがそれぞれの思う方法で動き出すという図。
これらが収束する先を期待したいですね。
私はとにもかくにも、3年ズの面々の想いと過去が少しずつ明かされていく様にジリジリしていますが、上記の収束がどのように為されるのかが注目の的です。
>拓ちゃんさん
いつもありがとうございます!
3話のファーストライブでの鞠莉の表情が色々と印象的で、
ここにつながるんじゃないかなと思いながら書きました。
何もないと思っていたところにも何かがあって、
それはみんなにとって大切なものになると思います。
3年生たちがどんなふうにして見つけていくのか、楽しみですね!