はねバド!

相手と向き合う薫子と、自分しか見ていない綾乃―「はねバド!」第7話感想

ネットを挟んで対峙する相手に勝つには、相手がどんな選手で、どんな特徴をもっているのか把握することが重要です。これはバドミントンに限った話ではなく、相手がいる競技ならどれも同じ。勝つためには、相手をよく見ないといけないのです。

心理戦に長けた芹ヶ谷薫子は、この“勝利の原則”にのっとってプレーしている選手の一人でしょう。「勝利のパターンがある」と言えるのは、それだけ相手を見ている証拠です。その最たる相手が、羽咲綾乃でした。

男子にも負けなかったという中学時代の薫子でしたが、綾乃にはボロ負け。薫子にとって「人生で初めて負けた同級生」である綾乃は、初めて強く意識するバドミントンプレーヤーになったのかもしれません。その頃から薫子は、綾乃のことを打倒すべきライバルとしてずーっと見てきました。だから、港南高校の上級生たちが見抜けなかった綾乃の“手抜き”もわかるし、「あなたの弱点はメンタル」とも言える。

綾乃にとって薫子は「お友達になりたい」人でしたが、薫子の中の綾乃は超えるべき壁でした。どれだけ自分に実力が備わり、高校生になった綾乃が弱くなっていたとしても、ライバルの本当の強さを知っている薫子には関係ありません。「あの羽咲さん」が壁であり、目標なのです。だから弱くなっていたら失望するし、叱咤する。そして自分も努力を重ね続ける。

1年生にして既に港南高校のエースとなった薫子は、もしかすると先輩たちからの嫉妬を強く受けていたかもしれません。当然、それに屈する彼女ではないでしょうし、適当に折り合いをつけることすらしないでしょう。綾乃に破れた里見杏香の仇を取るのではなく「自分のために戦う」と堂々宣言するあたり、薫子は自身の世界観を大事にしていることが伺えます。ゆえに、他者との衝突も少なくなさそうです。

その若きエースが、正体を現しかけた“怪物”に、必死に抗っている。同じ部のメンバーからすれば、薫子の実力を知っているからこそ綾乃の凄まじさが理解できるし、そんな相手に対して、常に気丈な振る舞いを見せていた薫子がこんなにも泥臭く喰らいついている。

努力を重ね、そのすべてをコートにぶつける姿は、周囲の人間を惹きつけます。あれだけいがみ合っていた港南高校の先輩も、試合後には労いの言葉をかける。何より、この試合と薫子の努力を見た我々自身がそう。このエピソードで、彼女が好きになった人も多いのではないでしょうか。それこそが、努力のもつ大きな力なのです。

薫子のそれに魅入られた、最たる人間が笹下ミキでした。ミキはパートナーとして、同級生エースの努力をそばでずっと見てきた。綾乃に勝つという目標まで「もうちょっとだったの」と悔しがる薫子の背中で一緒に涙を流せるのは、ともに汗を流したミキだけ。努力は共感を呼び、悔しさを生み、再び前に進む力を呼び起こすのです。

さて、情景豊かに描かれた薫子と対照的に描写されているのが綾乃です。薫子戦に勝利した綾乃の表情は、その前――里見杏香との試合に勝った時と変わりません。つまり、綾乃にとっては単なる一試合に過ぎなかったのです。

綾乃も練習を重ねてきたのは確かですが、努力というよりも「調整」に見えます。それは公式戦になっても変わりません。第6話の泉理子のモノローグを思い起こすと、その度合いが見えてきます。

望にとってはただの1試合かもしれないけど、私はこの試合に、全力で、本気で、すべてを!

格下相手にスタミナを温存しようとした(指示された)石澤望と、「もうちょっと身体を動かしたかった」という綾乃は同じ。相手ではなく、自分だけを見ています。「バドミントンにおいては力こそ正義」「バドミントはね、勝てばいいんだよ」という薫子と綾乃の言葉は同じ意味合いですが、アプローチの仕方でこれだけ印象が異なるのです。

“上手い”という意味での才能と努力の戦いは、今の所「努力」が立て続けに負けています。その合間に、才能に固執する海老沢悠とそれに抗おうとする葉山行輝のエピソードが織り交ぜられているのは、きっと意味があるはず。この作品の大きなテーマでもある「才能と努力の対比」は、この二人、そして綾乃を通じて、ここからどんなふうに描かれるのでしょうか。

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