SSSS.GRIDMAN

新条アカネは至ってフツーの女の子である

「SSSS.GRIDMAN」ヒロインの一人、新条アカネ。気に入らない人は自ら作り出した怪獣の手で殺し、自分の理想の世界を作ろうとする人物です。

可愛らしいルックスと、簡単に人をなかったものにする非人道ぶりのギャップが彼女の大きな魅力。個人的には、原作「電光超人グリッドマン」の戦いの舞台であるコンピューターワールドと、現代のネット社会を上手に織り交ぜたようなキャラクターだとも思っていました。

ただ、ずっと引っかかっていたシーンがひとつ。学校では周囲から一目置かれ、自宅では怪獣づくりに勤しむ、そのどちらでもない姿がOPアニメに映し出されています。アカネは、賑やかな教室から壁を隔てた廊下にたたずんでいるのです。

新条アカネはなぜアレクシスにキレたのか

6話から、新条アカネという子の内面を理解するヒントが少しずつ描かれ始めました。7話では初めて、アカネ作ではない怪獣――アンチが作った「幽愁暗根怪獣ヂリバー」がグリッドマンの前に現れます。この事態にはアカネも驚いていましたが、怪獣を具現化させるアレクシス・ケリヴはこう説明していました。

「アンチくんはキミよりもグリッドマンを憎んでいるよ」

「憎しみが強いほど、強い怪獣が生まれるからね」

確かに、(理由は明かされていませんが)アンチがグリッドマンを憎んでいるのは明らかです。一方でアカネはといえば、グリッドマンとの戦いを楽しんでいる様子。4話の最後には「どうやってグリッドマン倒そうかなとか考えると、やる気がね、なんか出てくるんだ」と話しています。

続く5話が象徴的でした。アカネはこれまでは気に入らない存在を排除するために怪獣を作っていましたが、5話「多事多難怪獣ゴーヤベック」の時にはグリッドマンの出現を待ちわびており、彼の力を試そうとしています。彼女はグリッドマンとの戦いを楽しんでおり、憎しみにプライオリティを置くアレクシスがアンチに乗り換えるのも、合理的ではあります。

一方でそれは、“神の権威”が他者(アレクシス)によって、自らの手からこぼれ落ちたことに等しい。この世界で唯一だったはずの「怪獣を作り出す権能」が、自分ではない者に“コピー”されたわけです。

これは唯一の権能だったゆえに、アカネをアカネたらしめるものでした。怪獣を生み出すことは、新条アカネが「新条アカネ」である理由、存在証明だったのです。だから自分だけの世界=自分の部屋にアンチが土足で入り込んだことに嫌悪感を示し、アレクシスを蹴り飛ばしたのですね(アカネ自身は響裕太の部屋に無断で入っており、きれいに対比されているのがおもしろいところ)。

「うん……私にしかできない」
「お願い、もう誰もこの部屋には入らないで」

新条アカネの部屋は、彼女の心象風景にも見える。たくさんの好きなものと、たくさんのゴミに埋め尽くされている。

存在証明は、他者と自己によって成り立ちます。相手がいて、相手が自分を認識するから自己が確立される(相手とは、一般的には友人や家族といった身近な存在から広がっていくでしょう)。そうして他者から認められた自分と、自ら認めた自分がミックスされて、「自己」が形成されていきます。

ゆえに、どちらかが少なければ、どちらかを増やさなければなりません。逆説的ではありますが、7話の様子を見ると、アカネは自己による自己認識の割合が高いはず。そして自らを認められる要因は、怪獣を生み出すという、この世界で唯一の能力によるものです。「この会社で/この学校で/このグループでコレができるのは自分しかいないんだ」と思うと、自分を認められる気がしませんか?

新条アカネと響裕太、そして宝多六花

アカネが怪獣を生み出すきっかけになった出来事を振り返ってみましょう。1話では、裕太にあげようとしたスペシャルドッグを潰されました。2話ではぶつかった先生に無視され、4話では自分の好きなものをテキトーに扱われた挙げ句、六花に話しかけようとしては邪魔されています。要するに、自分の気持ちや存在を反故にされたことがきっかけになっているんですね。

アカネはそういう輩の存在を粛清しようと怪獣を生み出します。そこには憎しみが多分にあるのでしょうが、「怪獣の創出」がアカネの自己形成であるならば、この少女は「私を見て」と言っているようにも感じられるのです。

アカネの周りには、アカネの中に踏み込んでいく人がいません。内海将が象徴的で、「見てはいたいが近寄りがたい」。同じように思っている子は、きっと多いはずです。

多くの人と同じく、アカネの存在証明のためには他者が必要です。しかし、アカネ自身は「才色兼備、才貌両全の最強女子」であるゆえ、裕太のように他者が踏み込むスキがない。周囲から一目置かれているために、みんなから羨ましがられますが、裕太たちのようにみんなで楽しく過ごせる人の方が、アカネからすると羨ましいのではないでしょうか。

唯一、そこに入り込もうとしているのが宝多六花です。家が近所で、以前はよく一緒に通学していたという二人ですが、今は疎遠になっている様子。世話焼きのパーソナリティも相まって、六花はアカネと何かしらの接点を持とうとしますが、アカネのために買ったパスケースも渡せない距離感です。アカネが六花に対して何を思っているかはまだ語られておらず、引き続き注目すべきポイントになっています。

六花とは裏腹に、あっさりとアカネの内面に踏み込んでいるのが、他ならぬアレクシス・ケリヴです。アカネのすべてを肯定し、「自分にしかできないこと」を授けてくれる。7話現在、「新条アカネ」の存在を認めてくれる、唯一の他者がアレクシスなんですね。

要するに、新条アカネは至ってフツーの女の子なんです。私を見てほしい、受け入れてほしいという誰もが抱く願望をもつ、フツーの女の子。そしてその心が、怪獣を生み出している――そう考えながらここまでの、そしてこれからの物語を見ていくと、今までとは違う新条アカネ像が見えてくるのではないでしょうか。

「―君を“退屈”から救いに来たんだ!」

怪獣が暴れている時、グリッドマンと戦っている時のアカネは本当に楽しそう。当たり前ではありますが、やはり「孤立」はつまらないもので、それを間接的に語っているのが、一人でいる時の六花の表情です。

アカネにとってグリッドマンは“遊び相手”であり、だからこそアンチが怪獣を作り出したこと=遊ぶ権利を取られたことを怒っているのかもしれません。

彼女のアンチへの怒り、憎しみを、アレクシスはどう捉えているのか。あるいは、グリッドマン同盟がアカネを“退屈”という名の孤立から救うのか。「―君を“退屈”から救いに来たんだ!」という歌詞の意味は、残り5話を経て明かされるはずです。

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