映画の感想

色鮮やかな表情と“人間くささ”に惹かれるー劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」III. spring song

作中では「11年」という時の流れが表現されていましたが、原作からの「Fate」ファンはそれ以上の時間を待ちわびて、ようやく完結の時を迎えたことと思います。終幕を迎えられるというのは、どんな作品でも幸せなこと。まずは、この3部作の完結を祝いたいと思います。

僕自身はシリーズ作品こそ見てきたものの「Fate」の世界には詳しくないし、この世界の仕組みを深く知っていればもっと味わえたのだろうと、少しもったいなさを感じるところもあるのが正直なところ。しかしそれでも、この「Heaven‘s Feel」に引き込まれたのは、このルートが最も人の感情の発露、揺らぎ、ぶつかり合いが激しかったからです。

誰しもが持つ感情を抱く間桐桜

感情の発露、揺らぎ、ぶつかり合いが多々見られる物語の中心となっているのは、もちろん間桐桜。この子は3人のヒロインの中で一番、共感を呼んだのではないでしょうか。本作で彼女が抱く、過去への執着、周囲への嫉妬、どうしても離したくない人への思い、力を手に入れた時の復讐心、罰せられるべき存在であるという自責の念……どれも、人としては当然抱く感情たちですよね。

だからこそ、遠坂凛と対峙した際の桜の叫びには、胸を締め付けられます。そして、ある決断を下した凛の独白にも。時間にして十数分、あるいはもっと短いシーンだったかもしれませんが、あの時、あの二人の間には、人間が抱くさまざまな感情がこれでもかというほど詰め込まれていた。ゆえに、この姉妹の関係と言葉の交わし合いに、僕らは心を動かされるのではないでしょうか。

世界よりも大事な存在として桜を選んだ衛宮士郎もまた、観る者の感情を揺さぶる存在の一人。やっぱり、思いが収束する先(本作の場合は桜ですね)が小さければ小さいほど、その力は増すものです。あらゆる決断を桜のために下すこととした彼は、すべての者を助けようとする以前の士郎とのコントラストがまぶしい存在となりました。

なんでまぶしいかというと、想像しやすいんですよね。物語を見ている僕らにとって、世界を救う重みを本当の意味で理解することは限りなく難しいことだけれども、ある一人を愛するということは、多くの人にとってはーー本能的であれ経験に即したものであれーー分かりうるもの。彼もまた、強い共感を呼ぶキャラクターの一人だったように感じます。

人間くさいキャラクターが好きなんだった

感情といえば。本作の魅力のひとつに「登場人物の表情」が挙げられます。基本的にシリアスな物語で、真面目な顔、厳しい顔も多いのですが、ふとした時にキャラクターたちが見せる驚いた表情、柔らかな笑顔、苦笑いする姿にキュンとしてしまいました。

凛やイリヤスフィールもそうなのですが、他でもない黒桜がコロコロと表情を変えるんですよね。ヒロインであると同時に、士郎と色々な意味で対峙する存在……すごく、平易に表現すると“悪役”である黒桜ですが(いや、悪役というのが変なのは百も承知なのですが、主人公に対峙する存在という意味で、ひとつ)、このポジションのキャラクターが色とりどりの表情を見せる姿は、とても愛らしい。そういうところも彼女の人間味あふれるところで、非常に魅力的です。

そうだ、書いていて思い出しましたが、僕はどんな作品でも人間くさいキャラクターが好きなんでした。かつ、普段はその人間くささを隠しているようだとなお良い。そんな人が、どうしても抑え切れなくなって、ずっと抑え続けてきた人間くささを感情の赴くままに発する瞬間に、たまらなく惹かれるのです。その点でも、この「Heaven’s Feel」は個人的な嗜好にマッチしていたのかもしれないなぁ。

……ある程度ちゃんとした文章にまとめられるのはここまでです。あとは「ライダー vs. セイバーオルタがめっちゃカッコよかった」「セイバーオルタカッコよかった」「セイバーオルタの最期が切なすぎる」「“●●の成長した姿“が性癖の僕にとって最高のラスト」 とかTwitterみたいな文章しか出てこないので、この辺で。いやホント、ライダーとセイバーオルタの戦いがものすごくカッコ良かったんですよ! あれをまた見たいがために、もう一度行きたい気分です。

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