本の感想

これがギャルファンの新しい聖書。漫画「その着せ替え人形は恋をする」

ギャルが好きじゃない男など、この世にいるのでしょうか(大上段の構え)。

いえ、語弊を避けて言うなれば、ギャル「属性」ですね。僕も大好きです。 底抜けに明るく、相手を必要以上に気にかけず、分け隔てなく接する。それゆえ、パーソナリティに(そして制服の着こなしにも)オープンなところがあり、なんだか彼女の中にこちらの居場所があるような気がする。スキがあるから、好きになる……。

要は、とてつもない「人の良さ」の権化みたいな存在が「ギャル」なんですよね。小賢しいところがなく、他者をありのまま認め、自身を認められる。自身の考えも堂々と伝えられる。別に明るい髪のミニスカートでなくても、そういう人には、やはり惹かれてしまうものです。こうした人物を表すアイコンとして、金髪でミニスカートで……という象徴的な外見があり、「ギャル」という言葉で示されるのです。

小難しく捉えましたが、こう考えてみると「ギャル」というのは実に模範的な人間です。ゆえに、ファンタジーな属性であることは否めません。でも、それでいい。ファンタジーだからこそ憧れるし、夢中になれるというものです。

そんなファンタジーとしての「ギャル」を主人公の一人に据えた、ギャル好きイチ押しの漫画が「その着せ替え人形(ビスクドール)は恋をする」(作・福田晋一)です。

コスプレギャルと頭師(かしらし)の孫

ギャル系美少女・喜多川海夢(きたがわ まりん)は、いつも友人たちの輪の中心にいる存在。そんな彼女を、クラスメイトの五条新菜(ごじょう わかな)は「別世界の人間
だと思っていました。

左:五条新菜、右:喜多川海夢(ページ配置および黒線は筆者による)

なにせ新菜は、頭師の祖父をもち、雛人形の頭師を目指している珍しい男の子。今は雛人形の服を作るに留まっていますが、朝起きるやいなや、目に入ったお雛様の頭部にうっとりするくらい雛人形が好き。そのため、クラスメイトとも接点がなく、友達もいない“日陰の存在”であり、海夢との接点はないに等しいのでした。

そんな新菜が放課後、こっそり被服室で作業をしていると、ばったり海夢にはちあわせます。海夢は好きなゲームのコスプレがしたいと考え、放課後に被服室でわからないなりに服を作ろうとしていたのです。まったく知識がない海夢は、ミシンが使える新菜にコスプレ衣装を作ってほしいと懇願するのでした。なんの衣装かというとーー。

互いを理解していく海夢と新菜

コスプレ衣装を作る人って本当に職人のようで、僕の友人にも鎧を作ったり、染物をしたりするコスプレイヤーさんたちがいます。

この二人も、「ヌル女2」の性奴隷たる「雫たん」の衣装を作るため、ウブな新菜には刺激が強すぎる水着での採寸に始まり、衣装の全体像を知るためのゲームプレイ、ウィッグショップでの品定め、布やパーツ選びといった過程を経て、衣装制作へと進んでいきます。

こうしたやり取りの中で、海夢と新菜は互いを理解していきます。それぞれのこだわりや、大切にしていること。そして、何よりうれしいのが、自分の好きなものに対する理解です。それは海夢に受け入られて衣装を作ることにした新菜だけでなく、エロゲを愛好しながら、プレイして喜びを分かち合ってくれる存在が周りにいなかった海夢も同じ。二人の微笑ましいやり取りや、からかったり恥ずかしがったりとコロコロ変わる海夢の表情に、胸がくすぐられます。

可愛いのは海夢だけじゃない

海夢が可愛いのは見てのとおりですが、実は新菜も負けず劣らず可愛いんです。頼ってくれた人のためにと海夢に尽くそうとする新菜は、れっきとした犬系男子。でも、ただついていくだけじゃないんですね。

海夢も色々な形でサポートしようとするものの、最終的に衣装を作るのは新菜です。衣装作りには当然逆境もあって、新菜はこれと対峙しなくてはなりません。スケジュールとの戦い、ふがいない自分への憤り……諦めたくもなるでしょうに、それでも新菜は泣きはらしながらも、歯を食いしばって針と糸を手にするのです。

誰かの役に立っていることに喜びを見出し、その人を喜ばせるために努力する頑張り屋。ギャルに惹かれるのが自然ならば、こうした人を応援したくなるのも自然なこと。一生懸命な新菜の姿には悲壮感すら覚えるほどですが、胸が痛むと同時に、「がんばれ……!」と口にせずにはいられません。

果たして衣装は無事完成するのか? 海夢は無事、“性奴隷”になれるのか? そして二人の関係は……? その模様はぜひ、2巻までお読みいただければと思います。

繊細な表現も描き切る福田晋一さん

作者の福田晋一さんは、少年エースで「シバラク」を連載したのち、ヤングキングにて「桃色メロイック」を連載。「桃色メロイック」の方は全10巻でコミックス化されたほか、ドラマCDにもなっており、触れたことのある方もいらっしゃるかもしれません。

画像を見て感じられた方も多いかもしれませんが、画風がちょっと少女漫画っぽいんです。最初に読んだときには、ヤングガンガンで連載しているというのも意外に思ったほど。

作品のテーマ上、精緻な布の表現やまつ毛の長い目、繊細な髪といった点がポイントになりますが、取材を含めてとても丁寧に描かれていらっしゃる印象です。1ページぶち抜きや見開きの使い方も上手で、キメのシーンではグッと訴えかけられるものがあります。

こちらの記事を執筆している2019年5月10日現在では2巻まで刊行されており、最新3巻が5月25日発売と、今からでも十分追いつける巻数。ぜひぜひ、お手にとって読んでみてください。可愛い男女好き、そしてギャル好きには刺さること間違いなしです!

第1話試し読み

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