響け!ユーフォニアム3

この中に一人、誓いを立てていない少女がいる―「響け!ユーフォニアム3」1話感想

ついに始まったユーフォ3期。始まりを飾った校長先生のセリフ「始まりましたね」は、ファンの気持ちを代弁しているかのようでした。

見ている私たちの時間軸では9年。高校3年生となった黄前久美子たちが映った瞬間、大人びた顔に驚いてしまいました。1期の立ち絵と3期の立ち絵を比べると一目瞭然ですよね。そして我らが女王・高坂麗奈がどんどんカッコよく艶かしくなっていってたまりません。

「おんがく室へGO!」の張り紙も、1期に比べて色褪せています。

さて、新1年生の顔見せも兼ねていた1話でしたが、その中で気になったポイントを2点挙げていきたいと思います。

言えない思いを抱えているようなクラリネットガール・義井沙里

新入生である釜屋すずめ、上石弥生、針谷佳穂とともに、低音パートの見学にやってきた1年生・義井沙里。彼女は吹奏楽経験者であり、チューバパートのエース2年生・鈴木美玲と同じ中学校出身です。であれば、演奏技術も高いことが伺えます。……というか、公式サイトのキャラクター紹介にもそう書いてありますね。

そんな沙里が、なぜか低音パートの見学に来ている。

沙里がここにいる理由に関しては、サファイア川島も本人に突っ込んでいるのだけれど、答えあぐねている間に佳穂が口を開いたため、聞けずじまいでした。しかも、佳穂が話した理由は、沙里以外の初心者3人が低音パートの見学に来た理由であって、沙里が来る理由にはなっていないのですよね。

口をつぐむ沙里の代わりに答える佳穂。

そしてそのまま、沙里の改めての自己紹介は行われずに話が進んでいきます。結局、彼女がクラリネット希望であることは直後のシーンで久美子の口から語られているのですが、何らかの思いを隠し持っているように見えるのです。

たった一人、「誓い」を立てていない少女がいる

まー、沙里についてはちょっと私の考えすぎかもしれません。一方で、明確にマークすべき子は(当然ながら)新キャラクターにしてキービジュアルでもばちこり目立ちまくっている黒江真由です。

真由は吹奏楽の強豪校・清良女子高校から転校してきました(持っているのが銀色のユーフォニアムというのがまた……)。彼女は初対面の久美子に対して、黄前さん、などではなく「黄前久美子部長」と呼んでいます。初対面でそう呼ぶからには、吹奏楽部に入部すると見て、ほぼ間違いはないでしょう。

少し時間を戻しまして、久美子が真由と出会う前に大事なシーンがありましたね。北宇治高校吹奏楽部名物・全国金賞の誓い。この「誓い」のシーンはとても丁寧に描かれています。

まず、久美子が心の底から全国金賞を目指しているという点。1期、2期の久美子は、いわばカメラマンのような立ち位置です。すなわち、久美子を通じて映り、久美子が映すことで変わっていく人々の物語を見るような感じ。しかし今回は、とうとう久美子自身にフォーカスが当てられ始めたように思います。

「自分が何者か、そして何者でありたいのか、きちんと考えてほしい」という松本美知恵先生の言葉は、3期のテーマのようにも感じられます。

久美子自身にフォーカスが当たるというのは、この作品のつくり方というメタ的な意味でもそうだし、物語内においても、久美子自身が自分の感情を汲み取れるようになっているという意味合いとしても書いています。だから、麗奈に対して「追いついたって。私も、ちゃんと悔しいって」という言葉が出てくる。これは久美子が麗奈を知り、自分自身を知らないと言えない言葉のはずです。

ここで久美子の気持ちをはっきりさせたからこそ、次の「大仕事」のシーンにつながります。北宇治高校吹奏楽部で、このメンバーで全国金賞を取りたい。だからこそ、「全員、ただの一人も欠けることなく、一致してほしい」。

まるで合格発表に臨むかのような時間ののち、部長としての切実な思いが通じたのか、もとよりその覚悟がある部員たちだったのか、あるいはその重みがまだはっきりと分かっていないままなのか。多種多様な理由はあるでしょうけれど、なにはともあれ吹奏楽部の全員が手を挙げました。この結果こそが、最後の1年を歩み始める久美子にとって、何より大切だったはずです。ちょっと声が上ずるくらいに。

気持ちも足並みも揃えた。

いよいよこれから、最後の1年が始まる。

そうなるはずでした。

久美子が大仕事を終えた夕方、ひとり渡り廊下に現れた真由でした。彼女が吹奏楽部の一員になるとするならば……もうお分かりですよね。

そう、彼女だけが「誓い」を立てていないのです。

真由がなぜ3年生の春というタイミングで北宇治高校に入学してきたのか? 久美子たちとどのように関わっていくのか? 彼女はどうして吹奏楽をやっているのか? まだまだ謎は多いし、興味も尽きない1話。今はっきりと言えるのは、不穏分子を抱えた清楚系転校生美少女はたまらん、ということだけです。

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