理事長挨拶で、学校のいち部活の話題が出てくる。公の場に私的な事象が介入するような感覚に、「おやっ?」と思った方もいらっしゃったかもしれません。生徒の数がある程度多い学校にいる方、いた方ほど、そうだったのではないでしょうか。
小原鞠莉が話している間、体育館に並んでいる子たちをずっと寄って映していたので、つい自分がいた学校くらい生徒がいるものだと錯覚してしまいました。黒澤ダイヤが「ここにいる皆さんの力ですわ」と言ったところで、初めて体育館に集まった全校生徒が映し出されます。それは、遅れてやってきた高海千歌を含めて74人という、とても少ない人数。浦ノ星女学院という学校が、統廃合が計画されている地方の小さな高校であることを改めて思い知りました。
そしてこの光景は、浦ノ星女学院とそのスクールアイドル・Aqoursの関係を表しているのです。
皆さんの中には、全校生徒の集会などで先生の薫陶を、我関せずと右から左へ流していた方もいるでしょう。あるいは、いつもちゃんと聞いているけど、たまたまちょっと眠くて……なんて日があったかもしれません。でも、浦ノ星女学院はちょっと違う。統廃合寸前の学校唯一の希望がAqoursで、その人数の少なさも相まって、生徒全員が当事者になっています。だから、理事長が壇上でラブライブの話をしてもおかしくない。1期13話であったように、ステージに登ったのは9人でも、この体育館に集う全員が、言わば「Aqoursに属する人たち」なんですね。
今や浦ノ星女学院とAqoursは表裏一体、一蓮托生。だから、Aqoursの9人は入学希望者を増やそうと奮闘するし、全校生徒は口を揃えて「輝ける!」と言う。0を1にし、それが10になり、彼女たちはいよいよ羽ばたこうとしています。
しかし、その流れに水を差す知らせが、鞠莉からもたらされました。
鞠莉から伝えられた、学校説明会中止の一報。それは、浦ノ星女学院の統廃合が正式に決まってしまったことを意味します。0を10にまでもっていったのは紛れもなくAqoursの功績ですが、それだけでは足りなかった。間に合わなかった。
この場所、この学校が大好きな鞠莉は、自分の将来よりも学校の存続を常に優先させてきました。理事長として裏で懸命に時間を作ってきた彼女が、もうどうしようもないという。がんばり続けてきた人に「ごめんね」なんて謝られたら、何も言えません。「そんなんじゃない」と千歌が言葉を絞り出したように、みんなが求めているのは謝罪ではない。けれどこの状況で、さらに何かを求めることなんて、できない。
「本大会に出場できてたら、未来は変わってたのかな」。ずっと前を向いて走り続けてきた千歌は、初めて後ろを向きます。2年前から大人たちが模索し続けていた統廃合。裁量をもつ鞠莉の父はアメリカ。「こればかりは、私たちだけじゃね……」とはむつの言葉ですが、学校の統廃合はもはや、自分たちの力の及ばないところの出来事になってしまったのです。
統廃合が決まるということは、Aqoursの活動が意味をなさないことになります。彼女たちの目的はスクールアイドル活動そのものではなく、スクールアイドル活動を通じて学校を存続させること。統廃合することになってしまっては、Aqoursが活動する意味がない。
「みんなとこれから一緒に歌っていこうって、曲もいっぱい作ろうって思ってた」と桜内梨子が話すように、Aqoursにはみんなの願望が詰まっています。学校を存続させることはもちろんですが、Aqoursを通じて成し遂げたいことを、それぞれ抱いているのではないでしょうか。それができなくなるのは、本当に辛いことです。
その梨子が、浜辺に座り込む千歌にかけた言葉がおもしろい。
「私ね、こうなったのはもちろん残念だけど、ここまでがんばってこれて良かったって思ってる。東京とは違って、こんな小さな海辺の町の私たちが、ここまでよくやってこれたなって」
似たような言葉を、皆さん耳にしたことがあると思います。
「私は良かったと思うけどな。精いっぱいやったんだもん。努力してがんばって、東京に呼ばれたんだよ。それだけですごいことだと思う」
前者にはこのあと「悔しくないの?」、後者には「本気で言ってる?」という言葉が投げかけられます。千歌が本心を偽った時と同じ言葉を、梨子が千歌に投げかける。それに対し千歌は、「本気で言ってるんだったら、私、梨子ちゃんのこと軽蔑する」と答える。梨子はこの返答に、安心したのではないでしょうか。要するにこれ、梨子流の「千歌ちゃん、やめる?」なんですね。
あの時の千歌は内心、本気で悔しがっていた。「軽蔑する」という言葉は、その心にある火が燃え尽きていないことの証明です。前を向くパワーは残っている。けれど、どこが前なのかわからない。一介の高校生に一体何ができるのか、海の音が聞こえない。
じゃあ、何もしないのか。それは違います。何の力もないただの学生でも、紙で作られた頼りない飛行機でも、輝きに向かって飛び続ける。それが今できることです。がんばらずに終わりたくない。輝きのある方向、それが千歌たちにとっての「前」なのです。
Aqoursの9人、浦ノ星女学院の生徒たちは、本当にただの学生。フツーの高校生です。それでも、できることがある。校庭で叫んだ力いっぱいの「ガオーーー!!」は、フツー怪獣の咆哮です。フツー怪獣が予想もしなかったことを起こすから「キセキ」なんです。私たちにできるのは、諦めないこと。ミラクルを待つのではなく、ミラクルを起こす未来にしよう。
「キセキだよ!」は「キセキを!」に。
それは、集合時間2時間前の誓い。
浜辺での梨子ちゃんとのやりとりの考察素晴らしい。
たしかにああ~ってなったわ
完全に忘れてた
>匿名さん
お褒めいただき、ありがとうございます!
こういうちょっとした対比が多いのも、「ラブライブ!」の特徴ですね。
ご無沙汰してます。
また1クール、よろしくお願いしますw
というわけで、考察待っていました。
相変わらず見事な切り口を見せてくれて流石です。
梨子の浜辺でのセリフの辺りは「ですね!」と膝を打ちました。
千歌が見ていた「MIRAI TICKET」の衣装で輝きを追いかけている夢。
あれ、もしかしたら毎晩見ていたのかもしれません。
全国大会まであと一歩──を掴み切れなかった悔しさ。
それが今度は、ようやく入学希望者を0から10人に持って行ったにも関わらず、統廃合決定により学校説明会を直前で中止させられるという、あと一歩間に合わなかったという悔しさが上塗りされる。
本当に「あと一歩」なのか、それともその距離は全然届いていないのか。
それはわからないけど、今のこの逆境を覆すには、まさに「キセキ」が必要なワケです。
でも、それは降って湧いたり、与えられたりするものではなく、自分たちで“掴む”ものだと、Aqours全員が理解して「前」を向いているのが、今回のスタートライン。
どうすれば「キセキ」を起こせるのか。
それがこれからのひとまずの目標となりそうですね。
自分的に印象的だったのは、1期前半ではストーリーの展開上積極的に動けなかった3年生が、今期1話では話の主動となっていること。
特に果南の頼もしさが光っていました。
立ち位置的にはμ’sで言う所の絵里なのかなと思ってみたり。
そう見ると、鞠莉が突っ走るにこで、ダイヤがなんだかんだでフォローに回る希に見えて……
これはこれでフォーマットなのかもしれませんね。
さぁ、次回「雨の音」……どんな音を聴くことになるのでしょうか。
>拓ちゃんさん
お久しぶりです! こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたしますー!
早速お褒めの言葉をいただけてうれしいです(ノ´∀`*)
夢を毎晩見ていたっていうのはおもしろい仮説ですね。
おそらく「キセキ」がキーワードで、それは自分で掴みにいくぞ、というのは間違いないと思います。
羽根は降ってこないぞ、自分で紙飛行機とばしていけよ、みたいな。
1話からガンガン動いてくれて、3年生ファンとしてはたまりませんでした!
もがいている姿が好きなので、特にAパートは終始ニヤニヤして見ていました…w
うまくバランスの取れた3人ですよね。2期はもっといっぱい出番があって、
鞠莉の昔話なんかも見せてくれたらと期待しています!
初めてコメント致します。
海水浴場での会話の考察、感銘を受けました。
釈迦に説法を承知で申し上げれば、同じ場所で起こった一期第1話の千歌梨子の邂逅も「方向と光を見失っていた梨子にオボロげながら道を示した千歌」と言う形で、綺麗な対比になっていましたね。
とすると、梨子と違って桟橋から海に落ちずに引き留められた千歌が進む道は、何処を向くのでしょうか?
また、蛇足ではありますが、一期第1話で千歌がフツー怪獣の話をしている際に流れる回想シーンも思い出しました。
飛込みをしている曜を見つめていると、水泳の友達が曜を囲んで見えなくなってしまう画。アレも、11話(友情ヨーソロー)で「二人で始めたのに、気付いたら周りに皆がいて、自分は疎外感を覚えた」と曜が回想する画と表裏になっていたんですね。
>椿さん
はじめまして! ブログにお越しくださり、ありがとうございます!
そうなんです、浜辺のシーンは1期1話と2期1話の対比とも取れますよね。
あそこで梨子がバチッと決めていたらまた別の表現になっていたのですが、
「私もわからん!」だったのでこういう書き方になりました。
椿さんが「友情ヨーソロー」でもそう見えたように、割と対比が多い作品ですね。
その対比の意味は何か、と考えていくと、色々発見があっておもしろいです。
梨子が千歌を引き止めた桟橋のシーン! そこですよね!
超意味ありげなんですが、ちょっと勇み足になりそうでペンディングしました…w
「仲間がいる」表れかもしれないのですが、今後の物語を見て結論を待ちたいと思います。
またぜひブログに遊びにきてくださいー!
お疲れ様ヨーソロー!です。
ついに2期が始まりましたね!
また、ばかいぬさんのサンシャイン考察が読めると思うとワクワクです。
アニメ本編と並行して楽しませていただきます。
考察内や他の皆さんもお書きになっていますが、1期と2期の1話が分かりやすく対比した構成になっていて、千歌を始めとしたAqoursの心の成長を丁寧に魅せてくれていましたね。
特に千歌。
これがいい事かは分かりませんが、私は千歌と伊波杏樹さんが重なって見えていました。
あの校庭でのシーン、本当に千歌が頼もしく映っていたんです。
だから「起こそう、奇跡を――!」という言葉が、なんの根拠もないのに信じられました。
そして普通怪獣りこっぴー。
梨子流の「千歌ちゃん、やめる?」なんですね、というところは目から鱗でした。
それが言えるほど、二人の距離が近くなったということなんですね。
ただ、だんだん曜ちゃんの幼馴染みとしてのアドバンテージが奪われていってる気も……汗
展開としては統廃合を受け入れてそれでも最後まで輝こう、という道(G’s時空的な)もあったと思うのですが、無駄かもしれないけど最後まで統廃合に抗う、という彼女たちの決意は見ていてとても気持ち良かったです。
まだ高校生という多感な子供だからこその選択で、大人な私にはできないですからね。
ちょっと心配なのは、Aqoursが抗う相手が「統廃合を決定した大人たち」となってしまわないか?という点です。
大人と対立するという展開はちょっとラブライブらしくないなと思うので。
夢と希望を持って自分たちの輝きを探すAqoursに『僕らの七日間戦争』は似合いませんから。
そういう意味でも、この話がどう続いていくのか目が離せません!
(まぁ大丈夫だと思いますがw)
では三か月間、思いっきり楽しみましょう!
>たくみさん
コメントをいただき&お読みいただき、ありがとうございます!
今期もどうぞよろしくお願いいたします。
「ラブライブ!」の特徴は、演者とキャラクターが重なりやすい点ですよね。
(特にμ’sはその度合がものすごかったです)
伊波さんは特にそこら辺を大事にしていらっしゃる気がして、たくみさんが
そう感じられたのは、もしかすると演者として冥利に尽きることかもしれません。
千歌と梨子はこの数ヶ月でどんどんお互いのことを理解しあっていて、
本当に相性がいい二人なのだなと思わされます。
曜がどうなるかも確かに気になりますね。一応「友情ヨーソロー」で
ひとつポイントを通過しましたし、千歌と梨子の距離の近さが結果的に曜の世界を広げているような気もしています。
僕も一瞬考えたのですが、おそらく「大人」との戦いはないですね。
戦うということ自体が「ラブライブ!」の趣旨ではありませんし、
戦うとしても常にその相手は自分自身なので、そこはブレないと思います。
心配ご無用で良いかとw
ここから3ヶ月、楽しみですね。
一緒にエンジョイしていきましょうー!
お疲れ様です!二期1~2話鑑賞しました^^
同時に管理人様の感想をうんうん(;ω;)と頷きながら拝見しております笑。千歌ちゃん達の心中に暖かく寄り添う様な御視点…流石でございます!
一見サンシャインは、一期から無印μ’s時代を比較し なぞっていた様に見えて、全く違う展開となって来ましたね。地方沼津と言う場所で、大好きな学校や地元や自分達の為、スクールアイドルとして葛藤し奮闘するAqours。μ’sとは違う環境や個性を持つ彼女達の想いや頑張りが、この先どんな物語を紡いで行くのか!μ’sもAqoursも大好きなので、かつてのμ’sの様に、AqoursにはAqoursの彼女達らしい輝きの在り方をこれから見付けて欲しいです!
今年は素敵な秋になりそうですね♪
では失礼致しました^^
>あすかさん
Blogにお越しくださり、ありがとうございますー!
お褒めの言葉もいただけて、うれしいです(ノ´∀`*)
おっしゃる通り、サンシャインは2期からAqours独自の色を感じさせるようになってきましたね。
1期で1クール掛けて(悪い意味ではなく)「μ’sからの脱却」を描いて、ようやく彼女たちの物語が始まった気がしますね!
ロケーションはもちろん、μ’sとは違う面も多々ある子たちなので、あすかさんのおっしゃるように「彼女たちらしい輝きの在り方」を見せてくれるのが楽しみです。
3ヶ月、目いっぱいエンジョイしましょうー!