ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

お前はもうつながっている―「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第6話感想

璃奈……あまりにも、あまりにもかわいすぎんか……!

ここまで天王寺璃奈の魅力を凝縮させたコンテンツが他にあったでしょうか。表情が変わらない璃奈の心情を、視線、目の開き方、口元のアップなどあの手この手で表現し、盛り上がりのピークであるライブパートでは、グラビア撮影と言わんばかりのゲキカワショット連発。今回の絵コンテ、ライブパート演出・絵コンテは、3話に続き「ラブライブ!」監督の京極尚彦さんでしたが、さすがの一言……。

前回の記事では「虹ヶ咲はマイルド」という話を冒頭に書きましたが、この第6話のような強度を求めていました。青春時代に壁にぶつかり、人としての芯の部分で迷い、葛藤する。本人は本当につらいと思うけれど、そんな姿を見せてくれるスクールアイドルが見たくてたまらなかったんです。

変わらない表情、変えられない未来

古より、スクールアイドルをやりたがる人間は大体何かしらの願望を持っているものですが、璃奈はわかりやすいですよね。アニメを待たずとも、1stアルバム収録の「ドキピポ☆エモーション」から、他者とつながりたいという強い思いを持ってスクールアイドルをやっていることがうかがえました。

その思いは、友達がなかなかできなかった過去から生まれたものです。うまく表情が出せず、楽しいのに怒っていると誤解され、仲良くしたいのになれなかった。だから、高校ではちゃんと思いを伝えて、人とつながりたい。宮下愛と知り合い、スクールアイドルなら歌を通じてたくさんの人とつながれると知った璃奈は、愛とともに同好会の門を叩きます。

キャラクターを使ったPVによって他者とつながる足がかりを得た璃奈は、「本当の私」で人とつながるために、ライブを行うことを決意。「今回は、できないからやらないはナシだから」という言葉からその意気込みがうかがえます。今までできなかった「思いを伝える」ことをするためにライブをやるのだから、できないことでもやる。難しいMCだって挑戦する。

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部室で、MCにも意気込みを見せる天王寺璃奈

メンバーのサポートも得て、ライブに向かって着実に歩みを進める璃奈。思いを伝えることに前向きになった彼女は「この前までの私とは違う」と自信を深めていきました。正直、そこまでしなくてもクラスメイトの3人は親しく接してくれています。けれど、それじゃ足りない。自分から思いを伝えられなければ、変わったとは言えないんです。

まっすぐな璃奈らしい姿勢。しかし、深めた自信は窓に映った無表情な自分に打ち壊されました。スクールアイドルを始めて自分は変わったと思っていたのに、全然変わっていない。これじゃあ、思いなんて伝わらない。中学までと同じじゃないか……。

お前はもうつながっている

表情が変わらないことで本当の思いが伝わらず、友達ができない。璃奈はそれを自分のせいだと、自分の悪いところなのだと捉え続けてきました。いつからかわかりませんが、小学生、中学生で友達ができないのは、とてもつらいことです。ましてや原因は自分だと思ってしまうと、コンプレックスの一言では片付けられないくらい、心に巣食う病巣となってしまいます。

「変わりたい」という彼女の願いをより具体的に言うならば、自分の表情を変えられるようになりたい、のはずです。これさえできれば、思いが伝わるはず。自分を変えよう、殻を破ろうとスクールアイドルで努力してきた璃奈は、自信を深めるとともに自分への期待感も高めていったのでしょう。

けれど、変わったと思った自分の表情が変わっていなかった。

友達ができなかった怖さが再び首をもたげます。ましてや、次のステージは多くの人を目の前にしたライブ。たくさんの人に誤解されてしまうことを想像したら、怖くて部屋から出られなくなるのもうなづけます。

暗い自室でうずくまる天王寺璃奈

友達ができなかった過去を抱えているがゆえ、璃奈はそれを恐れている。けれどよく考えてみると、ステージ上の自分が受け入れてもらえるかどうかって、誰もが持っている恐怖です。4話で桜坂しずくが「皆さんに喜んでもらえるだけのものが、私一人にあるのでしょうか」と言葉にしていましたが、この不安はみんな抱いている。そんな中、新生・虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーで初めてライブに臨むのが璃奈です。

だからこそ、虹ヶ咲のみんなが彼女に寄り添います。ステージに立つ怖さはスクールアイドルとして誰もが想像できるし、理解できる。それでも初ライブを行い、自分を変えようとがんばり、できないことに関しては積極的に教えを請う璃奈の姿を見ているからこそ、ライブ当日はスケジュールをあけるし、励ますために全員で家に押しかける。

天王寺璃奈を励ますために、家までやってきた虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーたち

そんな虹ヶ咲のメンバーに、璃奈はダンボールの中から、涙ながらに自分の思いを打ち明けます。友達ができない過去と今、スクールアイドルになって変わろうとしたこと、それでも自分の表情がどうしても気になってしまうこと、このままじゃみんなとつながることなんてできないこと……。

でもね、りなりー。その思いを伝えたことこそ、貴女が自分の力で人とつながった証なんだよ。

本当にすごいことだと思います。6話の第一声は「思いを伝えるのって難しい」ですが、これは璃奈に限らず、私たちを含めて人間誰しも感じていること。ましてや、自分が怖がっていること、自分がダメなところを他者に話すのってめちゃくちゃ勇気がいることです。自分で自分のダメな部分を受け入れなきゃできない。

でも、藁にもすがる思いだったでしょうけれど、璃奈はダンボール越しにそれができた。自分の思いを伝えることができた。

ダンボールの中でハッと何かに気づく天王寺璃奈

虹ヶ咲のメンバーは、璃奈から伝えられた思いにちゃんと応えます。璃奈が自分のできないことを言うならば、私たちは璃奈ちゃんができることを返す。彼女たちが璃奈をちゃんと見ているゆえのことですが、それは璃奈が自分のやりたいこと、できないこと、思いを伝えてきたからこそです。メンバーが璃奈を受け入れるだけじゃない、璃奈がみんなの胸に飛び込んだから。そう、璃奈はできるようになっているんですよ。

璃奈ちゃんボードの真の機能

璃奈がスクールアイドルでやりたいこと、目指したい自分は何か。表情を変えられるようになって、自分の思いを伝えて人とつながることです。でも表情を変えるのは、今は難しい。だから、今できることでやりたいことを実現する。PVに登場させたキャラクター越し、虹ヶ咲メンバーを前にしたダンボール越しなら、璃奈は思いを伝えることができました。彼女は自力で、自分のできることを見つけました。

つまり、間に一枚挟めば思いを伝えることができる。璃奈ちゃんボードは自分を隠す壁ではなく、思いを伝えるための増進機(ブースター)だったのです。

璃奈ちゃんボードをかぶってステージ上でパフォーマンスをする天王寺璃奈

今はそれでいいんです。本当にやりたいことは、人とつながることだから。自分の弱さを受け入れ、その上でできることを開発し、ステージ上で実装してみせた璃奈は本当にカッコいい。「今の私にできる精いっぱい」とは、伝えることに全力だったからこそ、出てくる言葉ですよね。

ライブ翌日でしょうか。登校した璃奈は、クラスメイトの3人から熱いライブの感想とともにランチに誘われます。そこまで距離を縮めてくれていても、スケッチブックに表情を描いて返す璃奈。他者を愛する璃奈の思いが詰まったラストでした。

POSTED COMMENT

  1. 椿(Chin) より:

    スクスタでは、璃奈ちゃんボードは愛さん発案ということになっていたはず。
    だから、今話は「デジタル」「テクノ」な陰キャ璃奈の殻を、正反対の資質を持つ陽キャ愛さんの「アナログな手書きボード」によって開放させる話になるのだとばかり思っていたので、ステージ用の電子ボードが先であったのは意外でした。
    話の筋書きからすれば、教えられたり与えられたりしたのではなく、自分で気づく必要があるので、順当な展開ではありますが。
    ただ、今までのよくある話では「殻に閉じこもっていた主人公は、友の導きを得て仮面を外し、心の束縛から解放される」のがパターンであったところを、「新しく仮面を被ることによって、殻を破る」形へと進化させたのが実に今風と言うか、上手い作劇法と言うか、感服したポイントでした。
    冒頭シーンで、クラスメイトにさえ声を掛けられなかった璃奈が、知らない上級生に声を掛けられて気遅れしているにも関わらず、頭を下げて顔を見せない状態なら「お友達と行ってください」とハッキリ喋ることが出来ているってのが、璃奈ちゃんボードへの伏線になっている辺りは流石としか言いようがありません。

    • ばかいぬ より:

      今回の製作陣は、もともとあったアイテムや設定をストーリーの中に落とし込むのがめちゃくちゃ上手ですよね。
      なおかつ、璃奈のエピソードについては「隠さないことじゃなく、思いを伝えることが本当にやりたいこと」という軸をきちんと据えてくれたことがうれしく思います。
      ここらへん、小泉花陽の描かれ方とはまた違う、新しい価値観を見せてくれたなと思います。

      頭を下げた状態ならしゃべれるというお話、なるほどです! 気づきませんでしたw
      細かいところまでメンバーの描写がしっかりしていますねー……。

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