アニメ1期感想

Aqoursをはじめよう―ラブライブ!サンシャイン!!第8話感想

 目の前で繰り広げられる、圧倒的なパフォーマンス。伸びやかな歌声とハーモニー、そしてよく動くダンス。Saint Snowの楽曲は、自分たちやμ’sとはまったく違うジャンルの音楽ゆえに、余計に衝撃的だったかもしれません。高海千歌たちは、初めて出会う他校のスクールアイドルのクオリティに圧倒されながら、自分たちのステージを始めなければなりませんでした。

 そのSaint Snowでさえ、入賞は果たせなかったのです。

 

初めての挫折

 自分たちと他のスクールアイドルとの力量差を痛感したAqours。千歌はみんなを励ますように明るく振る舞いますが、他のメンバーたちは、目指すべき場所と現在地とのかけ離れた距離を目の当たりにしたせいで、なかなか顔を上げることができません。

 トップレベルのスクールアイドルなら「これくらい、できなきゃダメ」なのに、そのすごいと思ったSaint Snowさえ入賞できなかった。渡辺曜は、レベルの差を噛み締めます。レベルの差で済むのならまだよかった。東京はすごいところで、東京のスクールアイドルもやっぱりすごい。だからこれだけレベル差があっても今は仕方がないと、自分を慰めることができました。

 しかし、投票結果は違います。投票結果によるランキングの順位は仕方がなくとも、得票数は自分たちの問題です。他のスクールアイドルよりもAqoursに魅力を感じた人は、ゼロ。ただの一人もいなかったのです。

 これまでAqoursは、あったかい人たちに囲まれて育ってきました。失敗しかけたファーストライブは、町の人たちが総出で駆けつけてくれた。その町の人たちとともに、何万回も再生されるようなPVも作ることができた。多少の紆余曲折はあれど、大きな挫折もなくここまで来たAqoursには、少なからず自信があったでしょう。「勘違いしないように」と言われていたのに、どこかで「勘違い」してしまったのかもしれません。そこを突いたのが、Saint Snowの一人・鹿角理亞が言い放った「ラブライブは遊びじゃない」という言葉です。

 

小原鞠莉の願い

 その「勘違いしないように」と言った当の本人は、内浦の外の世界を知っていました。いいえ、黒澤ダイヤだけでなく、小原鞠莉も、松浦果南も自分の庭から出ることの厳しさを知っていた。ゆえに、「外の人に見てもらうとか、ラブライブに優勝して学校を救うとか、そんなの絶対に無理なんだよ」という言葉が出てきます。自分たちと同じ思いはさせたくないという、果南なりのやさしさです。

 千歌たちに対する果南のやさしさは、ダイヤや鞠莉を大事に思っていたからこそ発露されたもの。しかし「絶対に無理」と言われても諦められないのが、当の鞠莉でした。おそらく鞠莉も、スクールアイドルをやっていた頃に少なからず壁にぶつかっていたはず。でもそれをみんなで乗り越えるのが楽しかったのではないでしょうか。彼女はAqoursに自分たちと同じ思いを「してほしい」……つまり、果南やダイヤとは異なるたぐいのやさしさで、後輩たちを見ているのかもしれません。

 1年生のころ、果南たちにスクールアイドルへ誘われながら乗り気でなかった鞠莉は、一度は断るも、「うんって言うまでハグする」という果南に負けて、浦ノ星女学院のスクールアイドルに加入しました。ハグは、諦めない気持ち。絶対一緒にいてほしいという思いの表れ。だから鞠莉もまた、果南をハグで迎えようとします。

 伸ばした腕に込められていたのは、本当に楽しかったあの時間を取り戻したいという気持ち。3年生の鞠莉は、ダイヤと果南に出会えた高校生という時間を、あのまま終わらせたくないのです。

 

0は始まりの0

 終わらせたくない、と思っている人物はもう一人いました。

 みんなの前で前向きな発言を繰り返してきた千歌の胸中は、実に複雑なものでした。「言い出しっぺ」としての責任と、みんなを引っ張らなきゃという義務感と、自分の頭を殴りつけるほどの悔しさと。その悔しさが生まれるのも、前向き発言を繰り返していた彼女自身が言ったとおり「精いっぱいやった」からです。前向きな言葉も、これまで取り組んできた思いも、決して嘘ではありません。

 ただ、他の子たちは「言い出しっぺ」ではなく、「高海千歌」がどう思っているのか知りたかった。だから曜は「悔しくないの?」とぶっ込むし、「やめる? ……やめる? スクールアイドル」と訊きます。これは昔から千歌とずっと一緒だった、曜なりの励まし。幼なじみが少なからずショックを受けていたことをわかっていたのではないでしょうか。

 そしてその曜もまた、千歌に背中を押してほしかったのかもしれません。「やめない!」という言葉で、前を向かせてほしかった。聞き分けが良すぎると思ってしまうほど本心を大っぴらにしない、曜らしい一幕です。

 曜から見た千歌は、「中途半端が嫌いなんですよ。やる時はちゃんとやらないと、気が済まないっていう」人。曜が聞きたかったのは、「千歌ちゃんの『ちゃんとやる』って、どこまで?」です。がんばって、精いっぱいやって気が済んだ? そんな曜の問いかけに、梨子を介して返ってきた千歌の答えは「悔しい。やっぱり私、悔しいんだよ……」でした。遊びと思われようと誰が何と言おうと、千歌は本気だった。時代も、他のスクールアイドルもどうでもいい。ただただ本気だったから、こんなにも、こんなにも悔しいのです。

 「何が待っているのか確かめたい」とは、自分たちは何ができるのか、何を残せるのか確かめたい、と同義です。μ’sは夢、「0」は現実。リアルを部室に掲げて見つめるAqoursは、目標をμ’sからAqoursに切り替えました。ゼロからイチの扉を開くために、“μ’sみたいなスクールアイドル”ではなく、“Aqoursとして輝くこと”を目指すのです。

 「0」は結果だけど、終わりじゃない。とあるスクールアイドルをずっと影から見守ってきたあの人なら、きっとこう言うのでしょう。「完敗からのスタートか」と。

POSTED COMMENT

  1. ツカサ より:

    ブログコメントではお久しぶりです。

    ここまでのブログも楽しく拝読しています。

    自分の感想としては、ようやく、μ’sがたったスタートラインに立ったんだな、と。
    いよいよ、スクールアイドルとしてのAqoursを輝かせるための一歩を、これから踏み出すんだな。
    そう思える回でした。

    ダイヤさんの伏線、過去もようよう明らかになりましたし、9人になるのはあとすこし、といったところでしょうか。

    今後の展開が楽しみです。
    お忙しい中の更新、大変だとは思いますが、アニメともども楽しみにしてます。

    ではまた。

    • ばかいぬ より:

      >ツカサさん
      こちらではお久しぶりです! いつもチェックしてくださり、ありがとうございます。

      本当に、スタートラインに立ったという表現がぴったりですね。
      3年生の過去もだいぶ明かされてきましたし、なんとか残り4本で9人揃いそうですねw

      いただいた励ましの言葉を胸に、引き続きがんばります!
      また遊びに来てくださいまし〜!

  2. 通りすがり より:

    すみません、後4本ではなく5本のはずです

    • ばかいぬ より:

      >通りすがりさん
      ひぇ〜そのとおりです! ご指摘いただきありがとうございます、お恥ずかしい……。

  3. 拓ちゃん より:

    先週は色々あってコメントできませんでしたが、今週は是非ともコメントしたく。

    今回の感想で「なるほど」と注目したのは、曜のこと。

    >曜が聞きたかったのは、「千歌ちゃんの『ちゃんとやる』って、どこまで?」です。

    電車の中では、なんとか絞り出していた明るめの言葉。
    しかし、「でも、満足だよ」って……“もうこれ以上は要らない”とも取れる言葉で。
    鎬を削る勝負の世界を知る曜(と梨子)にとっては、「もういいの?」と問い質したくなる気持ちもわからないではないです。
    ただ、千歌はきっとこれまでそういう世界にはあまり触れて来ていなかったのかもしれません。
    だから、こんな時の気持ちの表し方や、整理の仕方もよくわからず、ただただ、落ち込ませたくない、悲しい想いをさせたくない、という思いばかりが先走っていたように見えました。

    今までどんな部活にも“興味ない”と真剣に取り組もうと思えるものを見つけて来られなかった千歌が、ようやく見つけた『スクールアイドル』『μ’s』という輝き。
    千歌にとっての大切さ、熱意を傍で見て来てわかっているからこそ、“こんな所では終われないでしょ?”という想いを込めて、曜は「やめる?」と口にしたんでしょうね。

    私はその後のシーンで曜が昔の千歌との写真を眺めながら「うーーーーー……」と唸っているシーンがとても印象深かったです。
    普段の千歌であれば、「やめない!」と返してくれると思っていたのに、何も返すことができないほどに弱っていたのを目の当たりにして、自分が「やめる?」という言葉を突き付けて追い込んでしまったんじゃないか、本当に「やめる」と言い出してしまうんじゃないか、と後悔しているように見えました。
    この場面、ばかいぬさんはどう見えましたでしょうか?

    さて、次の第9話が非常に楽しみです。

    • ばかいぬ より:

      >拓ちゃんさん
      いつもコメントありがとうございます〜!

      おいしいところは梨子がもっていきましたが、今回は曜もかなり注目ポイントだったように感じます。
      昔の写真を見ているシーンは、千歌にかけるべき言葉はどれだったんだろうと悩んでいるように見えました。
      「くやしくないの?」「やめる?」と、曜は千歌に対してたきつける言葉を多用していて、多分今までそれでよかったんですよね。
      「小さいころから千歌ちゃんと何かに夢中になりたかった」と話す曜にとって、大事なのは自分のテンションではなく
      千歌の本気なのかもしれません。かけるべき言葉に悩むと同時に、自分のスクールアイドルの原点にも、
      曜は向き合っていたのかなと思いました。

ばかいぬ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です