「せーの」と合わせなくても、「Aqoursです」と9人揃ってえられるようになった。彼女たちのつながりが強くなっていることが伺えるシーンで、物語は始まりました。

 共通の目標を持ち、本当の意味でひとつにまとまることができたAqours。この大きなステージで、彼女たちが伝えようとしたことは一体なんだったのでしょうか。

高海千歌が見た“高海千歌”

 浦ノ星女学院の学校説明会への参加希望者は、相変わらず0のまま。「0を1にする」ことを掲げたAqoursにとって、この参加希望者を「1」にするのも目標のひとつです。

 猛暑が続く中、毎日学校にやってきて練習を続ける高海千歌たち。決して楽ではないことは確かですが、よしみ、いつき、むつの3人の目には、その姿はとてもまぶしく見えています。3人はAqoursが学校を存続させるためにスクールアイドルをやっていると考えており、その動機からすると悲壮感も漂いそうなものですが、千歌たちからそんなものは微塵も感じられません。それは、自分で定めた目標に向かって真っ直ぐ進んでいるから。ゆえに放たれる輝きが、人を惹きつけます。

 むつたちは、スクールアイドルになってAqoursと一緒に学校を救いたいと申し出ます。彼女たちだけではありません。「他にも、もっと自分たちにも何かできるんじゃないかって考えてる子、結構いるみたい」。ただ、それも使命感から来るものとはちょっと違うようです。「そんなにスクールアイドルっておもしろいのかなって」という言葉のとおり、Aqoursがスクールアイドルを心底楽しそうにやっているからこそ、「自分たちもやりたい」と思うのでしょう。

 その姿は、Aqoursを始める前の千歌そのものです。

「何かに夢中になりたくて、何かに全力になりたくて、脇目もふらずに走りたくて、でも何をやっていいか分からなくてくすぶっていた私の全てを吹き飛ばし、舞い降りた」

 千歌にとってこの「舞い降りた」モノがスクールアイドルであり、μ’sです。同じように、むつたち3人の前に「舞い降りた」のがAqours。μ’sを追うのをやめ、自分は自分だと決めた人たちだからこそ、μ’sと同じ輝きを放つことができます。

 

津島善子の“リアル”

 東海地区予選の会場に到着し、いよいよ目前に迫ったAqoursのステージ。楽屋や客席では、メンバー9人がそれぞれの思いを吐露します。

 「今こそがリアル、リアルこそが正義」と言い放ったのは津島善子です。あれだけ“ヨハネ”という虚構を振りまいてきた善子が言うのは意外に思われるかもしれませんが、ここに彼女の強さが表れています。

 善子は「今こそがリアル」だとわかっているのです。その上で“ヨハネ”でいたということは、ヨハネは善子にとって逃げる場所ではない。「堕天使」にの世界が大好きで、彼女はただただそれを表現しているだけです。だから、いつ何時も善子の世界はブレることがない。とてもキラキラしているし、強いんですよね。

 世間では「厨二病」と半ば蔑まれているものが好きな善子。でもAqoursは、自分の「好き」を目いっぱい追って、表現してもいい場所です。だから彼女は、ここに連れてきてくれた同級生に、目に涙をたたえながら感謝を伝えます。

 涙ながらに自分を抱き締めた善子を、国木田花丸は“ヨハネ”の言葉で受け止めます。TPOをわきまえるべきシーンで「やめるずら」と、都度善子のヨハネ化を止めていた彼女がこう応えたことにグッときた人は多いのではないでしょうか。

 

自分のステージに上がれるのは、自分だけ

 スクールアイドルはつながっていくものです。μ’sにあこがれてスクールアイドルを始めた黒澤ダイヤと松浦果南は、クラスメイトの小原鞠莉を誘い、浦ノ星女学院でスクールアイドルを結成しました。わけあって一時は解散となりましたが、μ’sが作ったスクールアイドルの広がりは途切れることがありません。同じように、μ’sのようになりたいと思った千歌が、再びこの学校にスクールアイドルを生み出します。

 ラブライブがあって、μ’sがいて、彼女たちに憧れた千歌がいて、そこに渡辺曜と桜内梨子が加わる。2年生3人から黒澤ルビィたち1年生に広がり、そして3年生とつながる。まるで「0」のように、ひとつの輪ができていきます。

 その輪は、Aqoursの外に広がっていきました。むつたち他の生徒たちへ、そして学校の外へ、内浦の外へ。この町や学校にある「あたたかさ」が、μ’sと出会った千歌、東京からやってきた梨子をきっかけに、ついには丸ごと外の世界に飛び出しました。それは、スクールアイドルの力によるものです。

 このスクールアイドルの力はどこから来るのか? 今を楽しむことからですよね。先代は「今が最高」と言いましたが、「今」は決してうれしいことばかりではありません。辛くて大変なこともたくさんあります。でも、そのすべてを受け止めて、楽しむ。それがキラキラすること、輝くこと、そして輝きを広げていくことなんです。千歌たちAqoursのメンバーは、それを心で理解しています。

 もう、Aqoursは追ってはいけない存在になりました。自分から輝くことを理解したAqoursは、μ’sと同じです。だから、むつたちはステージに上がれない。

 「一緒に輝こう」と千歌は手を伸ばしましたが、彼女が言いたいのは同じことをやろうということじゃない。それぞれが目標を持ち、「0」からスタートして何かを作り、キラキラしようということです。1や10、100をなぞるわけではないその道には、苦しいこと、難しいこともあるでしょう。でも、それらを全部受けとめて楽しんだ先に、輝きが待っています。その人にしか作れない何かが生まれるのです。

 ステージに上がれなかったむつたちは、そして僕らは、自分たちの進む道を自分で見つけなければいけない――いいえ、見つけた方が絶対に良い。そうすれば、必ず輝ける。だから、Aqoursは最後にこう言うのです。

 君のこころは、輝いてるかい?