アニメ感想

同好会の守護神1年生、中須かすみ―「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第2話感想

アニメから入った方々の中には、もしかしたら知らない人もいらっしゃるかもしれませんが、もともと虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会はソロで活動するスクールアイドルの集まりという設定があります。

これが公式サイトに記載されている、虹ヶ咲学園の「専攻の多様さ」にもつながるわけなんですが、要は今までよりもさらに「個」にフォーカスした集団であるわけです。

そんな虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の物語で、個と個、主義と主義のぶつかり合いと、それを乗り越えるスクールアイドルの姿を描くことは、避けては通れないものでした。

虹ヶ咲のアイデンティティ

他のメンバーに向かって、「こんなパフォーマンスでは大好きな気持ちは届かない」と強くダメ出しをする優木せつ菜。それに対し中須かすみは、「こんなの全然かわいくないです」と反論します。

スクールアイドルへの情熱を全面に出したいせつ菜と、アイドルとしてかわいさを至上とするかすみのぶつかり合い。アニメではまだ全員がスクールアイドルをやっているわけではありませんが、虹ヶ咲のアイデンティティたる「ソロの集まり」を、主義の衝突という形で描いています。

第2話で伝えたいのは、単に虹ヶ咲がソロの集まりであるということではなく、その中で互いがどのように共存していくのか、ではないでしょうか。それを、かわいさを理想とするかすみと、熱さを追い求めるせつ菜の衝突で演出しています。目指すスクールアイドル像の違いをコミカルではなくシリアスに描いたのは、もしかしたらシリーズの中でも初めてかもしれません。

中須かすみが届けたいもの

高咲侑に「かわいい」と言われてデレデレなかすみでしたが、かすみにとって「かわいい」ことは理想の姿です。常にそうありたい状態。「かすみん」と呼ばせるのも、他の部員を引き立て役にしようとするのも、すべては自分がかわいくあるため。彼女はスクールアイドルという姿、スクールアイドルという場所で、理想を体現しようとしています。

かわいくあり続けたいというかすみの理想を、侑は「ファンに届けたいもの」と表現しました。理想を掲げるかすみと、物陰で自己紹介の練習をする上原歩夢とは非常に好対照です。

歩夢は朝香果林から「もっと伝える相手のことを意識したほうがいいわよ」とアドバイスをもらいますが、要は果林に「そもそもあなたはスクールアイドルとしてどんな姿を見せたいのか」と問われているわけです。この時点で、自分のスクールアイドルとしてのアイデンティティを自覚しているのがかすみ、まだ自覚していないのが歩夢です。

ここでハッとした歩夢は、自己紹介を練り直し、「自分の好きなこと、やりたいことを表現したくてスクールアイドル同好会に入りました」と、自分自身の言葉で動機を語れるようになりました。

歩夢が語る「自分の好きなこと、やりたいこと」が、かすみにとっての「かわいい」です。スクールアイドルそれぞれに、一番大切にしたいものがあり、自分の好きなことがあり、やりたいことがあり、理想がある。そしてそれを自分自身で表現できる場所が、他でもないスクールアイドル同好会であることを、かすみはよく知っています。

だからこそ、猫を使って生徒会室に忍び(?)込み、2代目部長を自称し、スクールアイドルに興味がある先輩に声をかけながら、なんとかして「スクールアイドル同好会」という場所を守り続けようとする。一見、お調子者のように見えますが、実は誰よりもスクールアイドル同好会という場所を大切にしている人がかすみです。ここはスクスタのキズナエピソードでも語られているパーソナリティですね。

そんなかすみゆえの悩みが、「やりたいことはやりたいけど、人に押しつけるのは嫌」。なぜならそれで失敗し、スクールアイドル同好会が廃部になってしまったから。同じ轍を踏まないためにも、やりたいことと人に押しつけないことの落とし所を、かすみは探しています。そしてそれこそが、ソロの集まりである虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が、ひとつのグループとして成り立つための鍵でもあるわけです。

スクールアイドルはやりたいことをやるから輝く

かすみの悩みに対する答えを示したのが、前述した歩夢の自己紹介でした。

「自分の好きなこと、やりたいことを表現したくてスクールアイドル同好会に入りました」とスマホの前で語る歩夢。かすみからのアドバイスだった「ぴょん」も織り交ぜるあたりがなんとも歩夢らしいところですが、伝えたいことをのびのびと語る歩夢が、かすみの目にはとてもかわいく映ったのです。

それが、「自分なりの一番をそれぞれ叶えるやり方」のひとつ。やりたいことを表現すれば、かわいくもなるし、熱量も帯びる。とても魅力的に輝くんですよね。

「ラブライブ!」シリーズを追ってきた方ならご存知の通り、これは何度も描かれてきたこと。だからこそ、スクールアイドルとしての原点とも捉えられます。形を押しつけなくても人は輝けるんだということを、かすみは知ったのです。

……答え、と書いたのですが、改めて振り返ってみると、グループの方向性とか、答えとか、正しいやり方とか、そういう型にはめたものは、本作には不要なのかもしれません。自分なりの一番をそれぞれが叶える場所、それが令和のスクールアイドル「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」なのではないでしょうか。

POSTED COMMENT

  1. 椿(Chin) より:

    あなたの大好きなスクールアイドルの姿と私の大好きなスクールアイドルは違う形。
    あなたの可愛いと私の可愛いも違う物。
    かすみんの奮闘ぶりが微笑ましくも感動的な話でしたが、せつなとかすみが仲違いした時に二人して「あ…(やってしまった)」という表情が差し込まれるのが好きです。お互いがお互いの “大好き” を折ってしまった事には気づいており、関係の修復が早い事が示唆されていました。
    その後、せつなは その場所から身を引き、かすみは その場所を守るために新しい仲間とのつながりを求め、果林が その場所に居るべき古い仲間を引っ張って来てくれる と、場を守るために何をするかが三様の姿として重層的に描かれているのも素敵です。
    今までのラブライブ!シリーズも「個性バラバラが良い。それが私達の魅力」を訴えていましたが、話の中心には穂乃果や千歌といった太い柱があり、「グループの色」の肉付けとして皆の個性が柱に寄り添って行ったように思えます。しかし、本作では、その柱をグループの外に置くことによって、個々の個性を描くことが主となり、同好会としての色は個をサポートするものとして描かれていくのでしょうね。
    あと、仲違いのシーン。沈鬱な心情を表すように日陰(アンダートーン)の下で進んでいきますが、かすみんの後頭部だけ日が当たっている意味を図りかねています。その後の、歩夢に無理を強いた事に気づいてベッドの上で悶々としている時にも、後頭部に光が当たっている。
    普通に考えれば「出口が近い」なのでしょうが、このスタッフのやることだけに、もっと注意深く考察する必要があるかもです。

    もう一言だけ
    変顔枠が歩夢だとは思わなかったw

    • ばかいぬ より:

      お互いの「大好き」、お互いの「かわいい」が違うものであり、それを受け入れるという行為は、
      大げさに言うと価値観が多様化している現代らしいストーリーだなと感じました。
      それが可能なのも、椿さんが書いてくださったように「柱をグループの外に」置いているからこそなんですね。

      映像作品だと光の演出ってとても示唆的ですよね〜。素直にわかるところもあれば、パッとわからないところもありますし、
      その意図はなんだろう……と考えている時間も楽しいですねw

      歩夢の変顔は可愛かったのでぜひぜひ続けてほしいです!!!

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