アニメ2期感想

ラブライブ!2期2話「優勝をめざして」感想 または南十字星の話、穂乃果がほったらかしの話

1期では10話になって描かれた合宿エピソードが、2期では早くも2話で登場です。1期では学校の中で戦ってきたμ’sが、今度は学校の外で活躍してくれるような、そんな展開を思わせます。

今回のお話の主題は、とてもはっきりと描かれています。何しろ、にこや穂乃果が口に出しているとおりなのです。全員で前に進む、ということが1話に続き改めてμ’s全体の中で共有されました。まだ2話ですが、これが2期の大きなテーマのうちのひとつと言えそうです。

さて、その中で今回は2つのことを書いていきます。ひとつは、希の言葉の真意。もうひとつは、随分とないがしろだった穂乃果の扱いについてです。

 

東條希と銀河鉄道の夜

μ’sの舞台上を支える、作曲担当の真姫、作詞担当の海未、衣装担当のことり。この3人が揃ってスランプに陥り、なかなか曲作りが進まない……というのが今回の問題でした。この中で絵里は、3つのグループに分かれ、全員でこの問題に対処することを提案。それぞれのグループでやり取りがなされ、スランプを乗り越えた3人は一気に曲を作り上げます。

ここでにこはひとつの真理を説きます。曰く「曲はいつも、どんな時も、全員のためにあるのよ」。

スランプの原因を、ことりはこう言っていました。「うまくいかなくて、予選敗退になっちゃったらどうしようって思うと……」。そう、この3人はいずれも2年生以下です。最後の大会になるであろう先輩の3年生を思うと、こんな風に考えてしまうのも無理もないことです。

それを打ち消すのが、前述のにこの言葉でしょう(余談ですが、これを言うのが絵里じゃなくてにこだからこそ、真姫は素直に聞けたと思います。絵里だと、二人の性格上どうしても真姫は上目遣いになってしまいます。同じ目線にいるにこだからこそ、真姫は言葉も思いも素のまま受け取れる気がします)。一方で、希が海未にかけた言葉はここまで直接的ではありませんでした。

3人で並んで寝転がりながら星を見る希、凛、海未。凛にお気に入りの星座を問われた希は、「南十字星」と答えます。

南十字星は、天空の南の端に位置するため、北半球ではなかなか見ることができない星です。日本では、いくつかの条件が揃った時に、沖縄等の南の島から、水平線すれすれに観測することができるそうです。そんなわけで、希は「ペンギンさんと一緒に見た」と言うわけですが、一介の女子高生が南極旅行に行くというのは……嘘か真か、にわかには信じがたい話であります。

希はその後、間髪を入れず「おっ流れ星!」と言っています。続けて「南に向かう流れ星は、物事が進む暗示」とも。
南十字星、南に向かう流れ星、物事が進む……このキーワードから考えを巡らせてみたところ、もしかしてこれは『銀河鉄道の夜』では? と思うのです。

宮沢賢治の代表作、『銀河鉄道の夜』。北十字星=ノーザンクロスで銀河鉄道に乗ったジョバンニは、天の川に沿って銀河列車の旅を進めます。彼が降りるのが、まさしくサザンクロスこと南十字星。つまり、南十字星は旅の目的地なのですね。

流れ星が南に向かうというのは、つまり目的地まで進んでいるということ。そう考えると希の言葉は、「そんなに力まなくても、ちゃんと目的地に向かって進むことができているよ、方向は間違ってないよ」ということではないかと思うのです。

正直、『銀河鉄道の夜』のことまで海未が理解していたかというと……ちょっと難しい気もします。でも、ありもしなかった流れ星を持ち出して、希らしい言葉で励ましてくれたことは海未に伝わっているはずです。「南に向かう流れ星は、物事が進む暗示」なんて、希にしか言えない言葉です。

その上で言った「一番大切なのは、本人の気持ちよ」というセリフは、色々と考えられてしまいますね。にこが言ったことと同じように、誰かのための言葉ではなく、自分がどんな言葉を紡ぎたいのかを大事にしなよということにも聞こえます。あるいは、見えなかった流れ星も、あの無数の星の中にきっとある。「南に向かう流れ星」を信じて、自分のやることに集中すればいいよ、とも取れたり。何せ、「星はいつでも自分のことを見てくれる」のですから。

いずれにしても、こんな風に直接的に言わないところが希らしいです。肩に力が入りっぱなしだった海未の相手には、ああやって脱力させてくれる希はちょうどよかったのではないでしょうか。本当に人をよく見ている子です。

完成された歌詞に「星」が入っているのが、まるで海未から希へのお礼のようでいいなぁと思いました。ことりの考えた「はごろものイメージだよ」という衣装は、もしかしたらここからインスパイアされたものかもしれませんね。

 

穂乃果がほったらかしな理由

さて、1話ではラブライブに「出なくてもいいんじゃない?」と言った穂乃果。2話ではみんなに置いてけぼりにされたり、テントでひたすら寝ていたりと、なんだか1期での姿とは随分とかけ離れたそれが描かれています。ここに何かしら理由はあるのでしょうか。らしくないですが、ちょっとメタ的なお話をしましょう。

端的に言えば、1期では、全員が”穂乃果のやりたいこと”に乗っかっていたのです。踊りたい、アイドルをやりたい、音楽をしたい……個々のやりたいことは色々とありましたが、たまたますべてに共通していたのが、穂乃果がやっていた「スクールアイドル」でした。なので9人揃ってスクールアイドルをやり、”一応の”9人が共有する目的として、穂乃果のやりたいこと=廃校阻止(その後「スクールアイドルをやること」に変わります)が設定されます。

土台にあるのは、穂乃果のやりたいことだったわけです。だから、穂乃果がいなくなった時、μ’sは活動休止しなければならなくなりました。土台がなくなったからわけですから。

でも今は、その土台を9人全員で共有しています。すなわち、全員のやりたいことが「今しか一緒にいることができないこの9人でラブライブに出場し、予選突破して優勝すること」に統一されているわけです。踊りたい、アイドルをやりたい、音楽をやりたいという個々の思いが、1段ステップを登ってひとつに集約されているのですね。

結果、穂乃果が遅れたても、引っ張らなくなっても、μ’sは動くようになりました。それが伝わるよう、敢えて強く表現したのがこの1話・2話なのだと思います。1話でA-RIZEが予選の相手になると知って打ちひしがれるみんなを、誰かさんが言うかのように叱咤したのは他でもない、海未でした。この2話で穂乃果本人が言っているとおり「だって9人もいるんだよ! 誰かが立ち止まれば、誰かが引っ張る。誰かが疲れたら、誰かが背中を押す。みんな少しずつ立ち止まったり、少しずつ迷ったりして、それでも進んでるんだよ。だからきっとできるよ」を体現しているのが、今のμ’sです。

勝手な予想ですが、今後もこのような展開は増えると思います。穂乃果が引っ張るのは、1話の海未のようにお鉢が回ってきたから、というふうになるかもしれません。しかしこれは進歩です。何せ今まで1基だったエンジンが、一気に9基にまで増えたのですから!

さて、いよいよ次回は新曲『ユメノトビラ』のお披露目となりそうです。真姫がどんな曲を、海未がどんな詞を、ことりがどんな衣装を作ったのか、本当に楽しみですね。A-RIZEにも新曲があるといいなぁ。

POSTED COMMENT

  1. ツカサ より:

    リリホワ組のやりとりはニヤニヤしっぱなしでした。

    それぞれがもつ役割を分担するのではなく、
    それぞれが共通のやりたいことがあって、その上に分担するところをやる。

    気持ちのズレが見えて、それをみんなで理解し合って乗り越えていく。
    2期は穂乃果ではなく、μ’s全員の成長と挑戦の物語なのかな、とも思えてきます。

    ホント今後の展開が楽しみで仕方ないです。

    そして、この回で初披露となったED曲には泣かされました。
    しかも3年生組を持ってくるとか…一体スタッフは何回泣かせにかかるんでしょうか…。

    • bakainu より:

      ツカサさん、お読みいただきありがとうございました!
      リリホワはみんなコミカルで、見ていて楽しい子たちですね。

      おっしゃるとおり、2期はμ’s全員が共有するストーリーという気がします。
      足並みを揃えなくてはいけないけれど、何かの拍子にそれがズレて、
      でもその都度全員を見渡して……というようなことを繰り返して、成長していくのではないでしょうか。

      3年生が最初にEDをお披露目というのはグッときましたね~
      この曲やOPも含めて、2期の曲は切ないものが多いですね。

  2. ゴジラ より:

    プランタンのやりとりは可愛かったです。この回のおかげで1期12話のトラウマが忘れられそうです!枕と一緒に安眠することりちゃんと頬を練習着と同じ色に染めて眠ってるかよちんは最高!!!!

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