イベントレポート

こんなに近しく居心地のいいライブは初めて―南條愛乃さんファーストライブ「TOKYO 1/3650 ミンナとつながる365日×???」レポート

 昨年、今年とバースデーイベントを外し、なかなか行けずにいた南條愛乃さんのソロイベントに、今回はご縁あってようやく参加することができました。

 「Yoshino Nanjo 1st Live TOKYO 1/3650 ミンナとつながる365日×???」と題されたこの記念すべきファーストライブ。会場は豊洲PITです。

 豊洲PITは、一般社団法人・チームスマイルが東日本大震災の復興支援を継続するための経済的基盤として、2014年10月にオープンしました。ここで生まれた収益金は、東北三県にもある「PIT」の開設・運営と、エンタテインメントを通じての復興支援に使われます。ちなみにPITは「Power Into Tohoku!」から名付けられたとのこと。

 収容人数は、オールスタンディングで3,103名、着席時で1,328名。今回は半分座席、半分スタンディングという形式でしたので、ざっと2,000人ほどのキャパシティだったでしょうか。

 ライブが始まるまでは、どのような雰囲気で進んでいくのか、正直あまり想像できませんでした。ただ、飛び跳ねるような感じではないでしょうし、きっとあたたかい空間になるんだろうなと、ぼんやり考えていました。

 

座ったままで聴けるのがうれしい

 僕は指定席の前から3列目、ちょうどステージの下手端が目の前に来るような座席でした。ステージ上には段差が設けられており、楽器陣は上で演奏をするという舞台。めちゃくちゃうれしい、生バンドライブです!

 「夜、静かな夢」のイントロから「believe in myself」につないで、ファーストライブが幕を開けます。アップテンポの曲で始まったのですが、客席の人は座ったまま。「それでいいんだ!」と、思わずうれしくなってしまいました。

 今回、いわゆる“光る棒”はひとつも持っていかず、物販でも買いませんでした。パフォーマーから見て、客席が光っていると綺麗だしうれしいというのは分かるのですが、手を振ったり拍手するだけでもライブは堪能できます。何より色変えなどで気が散らず、純粋に音楽とパフォーマンスを楽しむことができました。座ったままで聴けたので、なおさらのこと。とってもありがたかったです。

 「アルバムの曲を体感してほしい」という南條さんは、途中で「そらほしひとつ」「優しくつもる言葉の花」といったカップリング曲もはさみつつ、「東京1/3650」の曲を順に披露していきます。座りながら聴きつつも、乗るときは腕を上げたりしながら乗って。居心地のいい空間で、ほぼCDの曲順のまま、生バンド・生歌を味わうことができるというぜいたくな時間が進みます。

 

同じ時代に生きる“人”として

 「7月25日」に差し掛かった際、改めて南條さんから、この曲に込めた思いが語られました。僕はこのお話を初めて聞いたのですが、2年前のちょうど同じ月に亡くなった実家の愛犬を思い出し、こみ上げるモノを感じながら聴いてしまいました。もうこの曲を今までと同じようには聴けませんね。

 今回、一番聴きたかったのは「Recording.」と「だから、ありがとう」です。アルバム「東京1/3650」の中で、一番好きな2曲なのです。

 「Recording.」は、ボーカルをやっている自分にはとても響いてくる曲。人前で歌う上での初心、本質、大切なモノを再確認させてくれる歌です。始まりと終わりのクリック音が、難しくも楽しいスタジオ練習を思い起こさせます。

 「だから、ありがとう」は、つい口ずさんでしまう歌です。応援してくれている人――それはファンに限らず――への、なかなか言えない感謝の気持ちを歌ったのだそう。ストレートに届くよう、伴奏はピアノだけにしたと南條さんは話していました。

 

 南條さんの曲の多くは、等身大の気持ちが表現されたものです。それも、やさしく表現されています。恋、感謝、応援、友情、がんばる気持ち。誰もが抱いたことのある気持ちです。これらを同じアイラインの言葉で表現しているから、時に語りかけられ、時に代弁してもらい、いつも側に寄り添ってくれている感じがします。

 それは、ご本人のスタンスゆえかもしれません。ソロデビューする際に「どんなコンセプトでいきたい?」と問われた南條さんは、“近くにいるような声優”でありたいと答えたのだそうです。少なくとも現在、それは歌によって見事に体現されています。

 今回のライブでも、ご本人が最後の強調していたのは「声優」と「ファン」ではなく、同じ時代に生きる一人の「人間」同士、互いにがんばっていこうよ、ということ。

 こんなふうに「人そのもの」あるいは「人の情」をきちんと見つめ、すくい上げるられところがたまらなく魅力的なのです。だからこそ彼女の周りにはあたたかいファンが集まってきて、今日のような、他ではそうそう味わえないくらいゆったりとした、それでいてクオリティの高いライブになるのでしょう。

 “ごきんじょさん”の集まる場所はずっとこうであってほしいなと思いますし、“かいちょー”がこうした「人」を見るかたであれば、きっとそれは続いていくはず。僕も、今日みたいなあたたかい空間を作れる「人」でありたいです。

 

だから、ありがとう

 昨日9月12日、豊洲PITでは「アイドルマスター」四条貴音役などで知られる原由実さんのライブがありました。わずか1日でステージをすべて作り変え、音響や照明を整え、会場を作り上げてくださったスタッフの方々に、心より感謝を申し上げます。

 極上のパフォーマンスを見せてくれた南條さん、バンドの方々、本当にステキな時間をありがとうございました。そしてこのような空間を一緒に作ることができた参加者の皆さんにも!

 こんなにゆっくりと、隅々まで堪能できたライブは初めてです。本当に居心地のいい、音楽とそこに込められた“情”に癒やされた2時間半でした。

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