三森すずこの涙
いきなりライブ終盤の話から始めてしまいますが、それくらい驚いたのです。μ’sのほとんど全員が号泣したあの3rdライブで、興奮しながらもひとりハキハキと挨拶をしてみせた三森すずこさん。あの姿を見て、ご本人とより深いファンの方には本当に失礼かつ勝手ながら、あまり泣かない人、しっかりと立つ自分を見せられる人だと思い込んでいたのです。
でも今日、喉の下を抑えて嗚咽をこらえ、瞳をうるませて話すのを見て、予想だにしない姿にこっちが思わずジンと来てしまったんですね。1日目にして彼女にそうさせてしまうくらい、このライブには色々なモノが込められていたんだなと感じました。
その“色々なモノ”の多くは、僕らを楽しませようとがんばってきたモノ、なのでしょう。新田恵海さんが同じく少し涙をこらえるかのように話し、その向こうで最年長がもらい泣きしそうになっている。南條愛乃さんが話していた「みんなを楽しませよう、あわよくば感動してもらえたら」という、楽しませてもらえる僕らには決して見せない努力の結晶が、三森さんの瞳にこみ上げてきたのかもしれません。
ライブビューイングの良さ
今日、僕は3rdライブ以来のライブビューイング観戦でした。場所は前回と同じく品川プリンスシネマだったものの、3rdでお邪魔したシアターZEROではなく、シアター3。一般的なスクリーンですね。その一番後ろの真ん中の席です。
画面は見やすかったのですが、肝心の音響が正直なところイマイチで、「それは僕たちの奇跡」「僕らは今のなかで」最初の2曲は、やや乗り切れませんでした。現地とは温まり方も違うし、音もややくぐもっていて遠く感じちゃったんですね。これは、2年前のシアターZEROが良すぎたというのもあります。
しかし、冒頭の2曲を終えての自己紹介を過ぎてからだんだん入り込めるようになっていきました。コールアンドレスポンスというのは本当に偉大です。
ライブビューイングの一番の良さは、なんといってもアップで演者を観られること。前述した音響や、全体の動きの見やすさは当然現地には劣りますが、一人ひとりの表情がよく見て取れました。
「輝夜の城で踊りたい」でウインクを決めるPileさん、「冬がくれた予感」アウトロで表情を決めたまま美しく留まる南條さん。上記の三森さんの瞳もライブビューイングならではかもしれません。そして今日全員の投げキッス率の高さはなんだったんですか。ごちそうさまです。9人の可愛らしい顔、美しい表情、真剣な眼差し、BD発売より一足先に堪能させていただきました。
スタジアムモードをふんだんに使った演出と衣装
驚いたのが舞台装置の豊富さです。ゴンドラは前回に引き続き登場、加えて回ったりせり上がったりする“浮島”、3面巨大スクリーン+ステージ内階段部分のスクリーンの計4面。μ’sはそれらをふんだんに活かしてパフォーマンスを繰り出してくれました。
ターンテーブルのように回るステージの縁に立てば、会場全体が9人それぞれを観ることができます。せり上がるステージはライブというX軸とZ軸の空間にY軸を加えて立体化させ、4つのスクリーンに映し出されるCG演出はμ’sと完全にマッチしていました。「小夜啼鳥恋詩」で籠から放たれることり、「冬がくれた予感」のラストで砕ける氷、さらに「もぎゅっと“love”で接近中!」冒頭では、3面巨大スクリーンを9分割してメンバー一人ひとりをフォーカスしたアングルが披露されました。
そしてもうひとつの重要な“舞台装置”が衣装です。まさか「Happy maker!」以外すべての衣装を完全再現するとは思いもよりませんでした。一番観たかった「Dancing stars on me!」では、センターでバレエターンする楠田亜衣奈さんを始めみんなとても似合っていましたし、「ユメノトビラ」の美しさには目を見開いてしまうほど。
3ユニットそれぞれの衣装もクオリティが高く、みんなを可愛く、美しく演出していました。Printempsの羽根衣装はもちろん、lily whiteは珍しく正統派でステキでした。BiBiはサイリウムチェンジか仮面ライダー555か見まごうほどでしたが、あの3人らしくてやたら似合っていましたね。あのトークのおもしろさは一体なんなんですか。
でも、いくら舞台装置がすごくても、“器”が見事でも、それに入るモノが見合わなければ意味がありません。μ’sは、それに値する姿を見せてくれました。
超えてくるμ’s
2010年から5年間プロジェクトを進めてきて、大きなライブも5回目となると、僕ら観客の中には“定番”が出来上がります。それは自己紹介のコールアンドレスポンスだったり、あるいはどこかのタイミングで出た曲中のアドリブが、そのまま定番化したり。ともすればそういうものは「鉄板ネタ」として重宝されがちですが、しかしμ’sは敢えてぶっ壊しにかかってきました。
最初に驚いたのが、「僕らは今のなかで」での南條さんの“持ちネタ”「これからだよー!」を、楠田さんが言ったこと。該当の箇所に差し掛かる際、みんな「言うぞ、言うぞ……!」って南條さんを見ていたと思うんですね。そこで楠田さんが叫ぶから「おおッ」てなる。
「輝夜の城で踊りたい」も然り。曲が終わって三指立てて礼をしてから「んふっ」が来るかと思いきや来ず、そのまま「だってだって噫無情」につなげてみせる。「あれっ?」から「おおおそう来るかー!」と感嘆の声をあげたのは僕だけじゃないはずです。
こういう、定番や予想を超えたものってすなわち「やってくれたらうれしいこと」なんですよね。楠田さんと三森さんがラブアローシュートしたり、アンコールアニメーションで、キャストの自己紹介をキャラクターがやってみせたり。僕らはそれを観て、楽しかったり、うれしかったりする――それは、μ’sが「想像を超えている」からなんです。
3rdライブで内田彩さんが「もっとすごいものを見せられるように、欲されるように」と熱弁していましたが、あれから2回を数えた今回も、その通りになっています。常に“違うもの”を出し、定番をぶっ壊してきたからできること。そんなμ’sだから、どれだけ大きくすごい会場になろうとも、それに応じ、それを超えてくる。改めて、すごい人たちを僕らは今目の当たりにしています。
映画公開日と劇中ライブシーンが数十秒(ホントにあれはやばかった絵里やばかった)、ベストアルバム2の発売が発表された1日目。明日のさらなる発表は7thシングル&総選挙でしょうか? それとも6thライブ? なんて予想を立てていますが、こんな予想をも、彼女たちはきっと超えていき、「もっとすごいもの」を見せてくれるのでしょう。