非常に濃度の高い25分間でした。初見の際には、40分くらいあったんじゃないかと思ってしまったほど。全員がシャッフルされたシーンが特にお気に入りで、何度観ても大笑いしてしまいます。あと、ゴーレムの口調を作って“ごっこ遊び”に参加していた真姫を観て、ああここまで自分を崩してみんなと遊べるようになったんだなぁと、なんだか嬉しくなりました。
と、観ているこちらには充分な「インパクト」を残したμ’sでしたが、そもそもこの「インパクト」は色物としてのそれであり、大会という場で正当に評価されるためのインパクトではありませんでした。「A-RISEよりインパクトの強いパフォーマンスを目指す」ために、今回μ’sは迷走を続けます。
動くA-RISEに引っ張られたμ’s
『ラブライブ!』を構成するひとつの要素として、“古と新“、あるいは“静と動”の対比というものがあります。象徴的なのがUTX高校と音ノ木坂学院です。最新の設備をそなえ、高い教育水準をほこり、隆盛を極めるUTX高校。こちらは“新”であり、“動”です。新しいものは動き続けるからこそ、新しくいられる。なので“新”と“動”は同一です。
一方、音ノ木坂学院は、古くからある国立高校。当面は回避できることとなりましたが、学生数の減少で廃校の危機に迫られていました。こちらは“古”であり“静”です。静かに佇んでいるものには、時間が積もる。そしてこの、“古と新”、“静と動”の両方が存在していい街として秋葉原が描かれたのが、アニメ1期9話でした。
さて、今回の2期6話。ひとつ、綺羅ツバサの言葉を引っ張ってきましょう。
「私たちは常日頃、新しいものを取り入れて進化していきたいと考えています。このハロウィーンイベントでも、自分たちのイメージを良い意味で壊したいですね」
新しいものを取り入れて、古いものを壊していく。“新”であり“動”であるUTX高校のA-RISEらしいコメントです。A-RISEは自分たちの強みや性質をしっかりと把握しています。逆に、そのA-RISEを超えなければいけない……と、A-RISEに引っ張られてしまい、自らの強みを見失ってしまったのがμ’sです。
「でも、インパクトって、今までにないものというか、新しさってことだよね?」とは、ことりの弁。これ以降、μ’sは様々なことに挑戦します。部活系アイドルをやってみて失敗。メンバー全員シャッフルしてみて、また失敗。極めつけは、とあるかしこい(はずの)人が言った「アイドルらしいってイメージから離れてみるのはどうかしら?」その結果、アナーキーでパンクな格好になったμ’sは、ヒデコ・フミコ・ミカという一番のファンにまで逃げられてしまいました……。
伝統校である音ノ木坂学院は“静”の側に立ちます。古いものを守ろうとしてきたμ’sも同じ。壊そうとしては、失敗してしまいます。変に動いたりしなくていい。そのままの味がある。この三たびの挑戦と失敗でそれに気づき、μ’sは正気を取り戻します。
穂乃果の「ハロウィーンって、昼と夜とじゃ印象が全然違うんだね」という言葉が象徴的です。昼の賑わいと、夜の幻想的な風景。同じ街でも、時の経過とともに色々な顔を見せます。わざわざ全部ぶっ壊して新しい街を作る必要はないんです。そこにあるだけで、おもしろい。ライブに向かう途中の、穂乃果の言葉がそのものズバリ答えです。
「私、このままでいいと思うんだ。A-RISEがすごくて、私たちも何とか新しくなろうとがんばってきたけど、私たちは、きっと今のままが一番いいんだよ」
「だって、みんな個性的なんだもん。普通の高校生なら似たもの同士が集まると思うけど、私たちは違う。時間をかけてお互いのことを知って、お互いのことを受け入れあって、ここまで来られた。それが一番、私たちの特徴なんじゃないかな。私はそんなμ’sが好き!」
“静”であり“古”。動かずに存在しているものというのは、動く必要がないと言えます。余計なことをしなくても、それだけで成り立っている。成り立つ力を秘めている。もちろん、そうなるまでには時間と内容を積み重ねなければなりません。しかしμ’sは「時間をかけてお互いのことを知って、お互いのことを受け入れあって」きました。さらにことりの言葉を借りると「迷いもムダじゃない」の「迷い」すらも、μ’sの中で積み重ねられてきたものなのです。ただ存在する中で、多くのものを積み重ねて出てくる妙味。それこそが“静”、そして“古”の強みです。
さて、ではそんな「迷い」に苛立ちを見せた矢澤にこの話をしましょう。
にこの言動
冒頭からひとつひとつ見ていきましょうか。にこは最初から力が入っています。ファストフード店でのミーティングでは、最終予選が近いのにハロウィーンイベントへのオファーを受けることについて「そうよ、私たちの目標は、ラブライブ優勝でしょ!?」と強い言葉。TV局が来ると聞いて態度が変わったあとも「A-RISEよりインパクトの強いパフォーマンスで、お客さんの脳裏に、私たちの存在を焼きつけるのよ!」とやる気充分。
そこから始まって「勝負はもう始まっているのよ!」「だから何回も言ってるでしょ。とにかく大切なのは、インパクトよ!」と力が入るにこは、ハロウィーンイベントのプレステージでA-RISEのインパクトをまともに受けます。その後、高坂家での反省会で、危機感を訴えるにこ。「とにかくこれは問題よ! このハロウィーンイベントをものにしないと、最終予選を勝ち抜くのは難しくなるわ。あのお客さんの盛り上がり見たでしょ!?」「でも感心してたら、そこで終わりよ!?」と、何かを動かさなければいけない必要性を感じるにこです。
まだ書きますよ。部活系アイドルのアイディアが却下された際には「一体これのどこが新しさにつながるのよ!?」と憤りを見せます。ちょっと楽しかったね、と言う希には「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!? A-RISEはこうしている間にも、日々進化を遂げているのよ!」と、悔しがっているのか焦っているのか。メンバーシャッフル後のミーティングでも、苛立ちを隠さない表情をしています。
衣装を作っているシーンまでの、ほぼすべてのにこのセリフを挙げました。ここから見えるのは、どんな女の子ですか。なんとしてもトップアイドルになりたい、そのために最後のチャンスであるラブライブで優勝したい。チャンピオンであるA-RISEのファンであり、そのすごさを充分に理解しているからこそ、A-RISEを超えてナンバーワンアイドルになりたい。それもひとりでではなく、μ’sと一緒に。そんな、9人の中で誰よりもプロ意識の高い、いつもの矢澤にこではありませんか。
このような思いを常日頃抱いているにこにとって、今回のμ’sの迷走は、焦りと苛立ちを覚えるには充分なものでした。それを踏まえて、衣装を作っているシーンの直前、ファストフード店での再度のミーティングでの会話を思い出してください。
「一応考えてはみたんだけど、やっぱり、みんなが着て似合う衣装にしたいなって思うんだ。だから、あまりインパクトは……。」
「でも、それじゃA-RISEには……!」
根本のイメージを変えるインパクトこそがA-RISEに勝つ術であると信じるにこと、μ’s自身(=既存のイメージ)に合う衣装を作りたいことりで、意見が割れています。どう決まったのかは描写されていませんが、どうやらことりの案が採用されたようです。見た目のインパクトを求めていたにこは、あまり納得できなかったでしょう。
納得できないまま衣装制作の担当になったにこは、納得できないという気持ちを対面のことりにぶつけます。その中には、ここまで積み重ねられてきた焦りや苛立ちも含まれています。それが、皆さんが気にしている「おかしいと思うんだけど! なんで私たちが衣装作りやってんの!?」「衣装係って言われて、損な役回りに慣れちゃってるんじゃない?」という言葉になるわけです。端的に言えば、八つ当たりです。この言動については、僕の中ではこれが結論です。
は? とお思いになるでしょうか。でも、ずっと苛立ちを募らせた人が、誰かに攻撃的になるとき、対象のアイデンティティや大切なものを否定するというのは至極自然なことです。これを読んでくださっている方も、もしかしたらそんな経験がおありかもしれません。とても人間臭くて、いい反応ではないですか。僕はちょっと親近感が湧きました。
にこが抱えるこの焦りや苛立ちも、ナンバーワンアイドルを目指すという高い意識から来るもの。ならば、巷で言われているような「にこのキャラが歪んだ」「不自然なセリフ」「キャラ崩壊した」というのは、僕は違うと思います。何より、1期12話で穂乃果がスクールアイドルをやめると言い出した時にも書きましたが、僕は彼女たちを「人間」として観たい。「キャラクター」のように一面性で終わらないのが「人間」です。だから、にこが八つ当たりしたってなんらおかしいとは思いません。人間ですから。
誰が衣装係をこの3人にしたのか分かりませんが、とてもうまい人選ですよね。にこが衣装係でなかったら、ことりとにこの間には見えない溝ができたままだったでしょうし、もしそのままラブライブ優勝を逃したら、卒業したあともにこはモヤモヤを抱えたままだったかもしれません。激昂するにこと、静かに語ることり。様子は正反対ですが、お互いの気持ちをここでぶつけあったからこそ、わだかまりを残さずにいられました。「この衣装はにこちゃんのだよ」と言われたときに、ハッとしたにこは大事なことを改めて思い出したはずです。
長くなっていますが、最後に大切なところ。ここのシーンで語られた、ことりのやりたいことについて触れます。
ことりのやりたいこと
先ほどの穂乃果ではありませんが、ここもことり本人の言葉が、そのまま答えになっています。
「私には、私の役目がある。今までだってそうだよ。私はみんなが決めたこと、やりたいことにずっとついていきたい。道に迷いそうになることもあるけれど、それがムダになるとは私は思わない」
みんなが決めたこと、やりたいことにずっとついていく。これがことりのやりたいことです。1期を見ていると、海未と穂乃果についていくというのがやりたいことなのかなと見受けられはしましたが、ここにきてようやく本人の口からやりたいことを聞くことができました。ずっとみんなと一緒にいたい、と。
同じようなことを、2期1話で穂乃果が言っていました。「私は、歌って踊って、みんなが幸せならそれで……。」穂乃果も、みんなでいることを最重要に考えていました。それは目標がラブライブ優勝になっても変わりません。
ふたりとも、一度μ’sを離れた人物です。μ’sの中で、μ’sから離れたことのあるのはこのふたりだけ。仲間から離れたことで、本当に一緒にいたい人、一緒に何かをやりたい人に気づいたのではないでしょうか。
3年生の卒業が見えてきて、みんなと一緒にいる時間にも限りがあることを、嫌でも思い知らされます。有限の時間だからこそ、ひとつひとつの歩みは大切なもの。だから、その一歩が迷いであろうと、ことりにとって……いいえ、μ’sにとっては、まったくムダではないのです。
にこは最初期のPVでことりの服飾作業の手伝いをしてる描写がある。 そんな彼女が苛ついていたとはいえ「なんで私たちが」「損な役回り」だの言い出すのはおかしい。→海外ドラマのあるシーンを丸パクリしてましたというオチ
その最初期のPVで服飾作業の手伝いをしていた時は、3年生の秋でラブライブ最終予選前という、
否が応でも切羽詰まってしまう状況だったのでしょうか?
もしそうなら、おっしゃることは一理あるかと存じます。
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