ラブライブ!

ふたつの「あの頃」と思い出した気持ち―映画版ラブライブ!感想(第3回)

 映画に限らず、TV版でも「ラブライブ!」を見ていると、「楽しいってなんだろう」と考えることが多々あります。

 これは人それぞれで答えがないものですが、少なくとも「自分で本気で選んだことをやっている」なら、それはきっと楽しいんじゃないかと思います。学生なら、自分で勉強したい、うまくなりたいと思って何かをやっている。社会人なら、自分で「こういう風にやってやろう」と思って仕事やら何やらに取り組んでいる。そんなとき、人は「楽しい」のではないでしょうか。

 「自分で本気で選んだこと」と書くと、μ’sがアイドルを続けるかどうかに話を展開したいところですが、そこは次回に書かせてください。今回は、穂乃果が「楽しい」の原点を取り戻すところをなぞっていきます。

 

 

 

 

 

水たまりの向こう側

 「飛べるよ。いつだって飛べる。あの頃のように」とは、謎の女性シンガーの言葉。二度三度と出てきては高坂穂乃果を勇気づける言葉です。では“あの頃”とはいつでしょう?

 ひとつは、映画冒頭のシーン。幼い穂乃果が、南ことりと園田海未が見守るなか、水たまりを飛び越えることに何度も挑戦しています。どうしても飛べず、「なんでなんで!」とムキになる穂乃果。しかしどこからか流れてきた曲に乗せられ、笑顔になって地面を蹴れば、足をついた先は水たまりの向こう側でした。

 ムキになっていたままではどうしても飛べなかった水たまり。でも、歌が聞こえてくると穂乃果は笑顔に変わっていきます。それはまさに「楽しんでいる」様子そのもの。楽しかったから、楽しめたからこそ目標を達成することができました。流れてくる曲が「SUNNY DAY SONG」だというのがまたニクイですね!

 花咲く丘と広大な湖が広がる夢の世界で、女性シンガーは「あの頃のように」と穂乃果に語りかけます。そして、穂乃果は地面を蹴る。シチュエーションを見れば、幼い日の公演でのシーンを高校生の穂乃果がもう一度再現しており、「あの頃」とは幼少の頃であることが伺えます。

 余談ですが、感想第1回で書いたようにあの女性シンガーが未来の穂乃果であるならば、路地裏でひっそりと、でも楽しそうに歌う彼女は、1期13話で語っていた「誰も悲しませないことをやりたいな。自分勝手にならずに済んで、でも楽しくて、たくさんの人を笑顔にするために、がんばることができ」ることを見つけたのかもしれません。

 

「始めたばかり」を取り戻す

 さて、穂乃果にとって「あの頃」は幼少の頃だけではありません。もうひとつ、楽しくて楽しくて仕方がなかった頃があります。廃校を阻止するために始め、歌う楽しさに目覚め、スクールアイドルの可能性を感じたあの頃です。

 女性シンガーは、穂乃果に3つの問いを投げかけています。「なぜ歌ってきたのか。どうありたくて、何が好きだったか」。穂乃果は、学校が大好きだったから始められ、歌うのが大好きだったから続けられ、スクールアイドルが大好きだったからここまでこられました。

 しかし現在、気づけばスタート地点からは随分と遠くまできてしまいました。μ’sはいつの間にか、たくさんの人に観られるようになり、また活動し続けることを期待される立場になりました。

 今のμ’sと、まだ3人しかいなかった頃、μ’sですらなかった頃の対比として、高坂雪穂と絢瀬亜里沙が使われているのが印象的です。音ノ木坂学院に入学したらスクールアイドル活動を始めるつもりの2人は、先輩である穂乃果に練習場所の相談を持ちかけます。

 その際、雪穂の「まだ始めたばかりなんだから」という言葉に、穂乃果が反応を示しています。恐らく穂乃果は、今の自分が「始めたばかり」の自分と違うことがわかっているはずです。それに亜里沙も気づき、「楽しくないの?」と問いかけています。この子は思った以上に人を見抜きますよね。

 その後、A-RISEにまで“残留要請”を受け、穂乃果の頭は混乱を極めますが、迷った時に現れるあの女性シンガーのおかげで本当の気持ちを見出したのは、最初に書いたとおり。自分との対話を経て、穂乃果はあの3つの問いかけへの答えを出しました。その後はもう一直線。目標へ向かって真っ直ぐ駆け出す姿、そこに次々と集まる仲間たち、まるでTVアニメ1期を見ているかのようです。

 ラストライブの日の朝、絵里を先頭にみんなが駆け出したその時、穂乃果の前に一枚の花びらが落ちてきます。彼女が一番最初に歌った曲「ススメ→トゥモロウ」で頭に付けていた花のそれであるならば、穂乃果は花びらを見つめながら、「始めたばかり」のあの頃の気持ちを思い出したのではないでしょうか。

 彼女はそれをこう表現しています。

思い切り夢中になれたから。最高に楽しかったから!

 

POSTED COMMENT

  1. 名無し より:

    いい考察ですね!!
    自分も「楽しい」がキーワードだとおもっていました!(映画4回目で気付きました)
    気づけば「楽しい」っていう言葉がたくさん出てくるんですよね。ほのかが屋上でみんなにSDSのイベントを提案した時に、海ちゃん??が「今までで一番楽しいライブになりそうですね」って言ってましたし。
    ほのかが劇中で悩んでいるのはこのまま続けるか否かでした。過去のほのかは水たまりを飛び越えれなくてナンデナンデと悩んでいました。そして楽しくなることで水たまりを飛び越える事が出来ました。「水たまりを飛び越えれた=悩みが解決できた」と考えると、「楽しい事を考えれば解決できる」となり、それがSDSだと思います。開かれないかもしれないと思っていたドームも開催されるようになって、全て解決していました。キーワードは「楽しい」ですね。

    • bakainu より:

      名無しさん、お読みくださり、またお褒めの言葉をいただきありがとうございます!
      仰るとおり、この映画は「楽しい」という言葉がたくさん出てきますし、本当に単純だけどこれ以外はない結論だと思います。
      SUNNY DAY SONGはその集大成とも言える曲ですよね。楽しければ、おもしろくなれば「どんなことも乗り越えられる気がする」のですね。

      シンプルだけど力強い、μ’sらしいメッセージだなぁと思いました。

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