考え方

あらすじやまとめの危険性

 大学時代は、ほぼ毎日本屋さんに足を運んでいました。毎日行っていると、平積みにされる本の移り変わりもわかってくるのですが、ある時から増えたのが「古典のあらすじ」本です。源氏物語や徒然草などの古典をあらすじでわかろうというものでした。
 あらすじ本はどんどん増えていきます。古典に始まり、日本の名著や世界の文学、はたまたCDをつけてクラシック音楽まで出てきました。

 

 さすがに数年経った今ではだいぶ落ち着いていると思いますが、それに近いWEBサービスが出てきました。「ブクペ」というサイトです。

 

 

 どんなサイトか一言でいうと、「本の内容をまとめてアップしよう!」というものです。まとめ方は人それぞれですが、各章の概要を並べて、著者の結論を書くというのがスタンダードでしょうか。
 前述のあらすじ本しかり、このブクペしかり、僕はこのあらすじやまとめが重宝されるのは少し危ないなと思います。

 

 あらすじ本を必要とする層は結局どんなところだったのかというと、常識や教養として(古典や文学を) 知っておきたいけど、まるっと一冊読む時間、あるいはその気はない。でも知っておきたいという層です。
 あらすじとは、「粗筋・荒筋」と書きます。粗く、荒い。つまりいい加減で乱暴なのです。それだけを知ったところで、はたして自分には常識や教養があると言えるのでしょうか……。

 

 同じことがブクペにも言えます。ブクペのとあるまとめがホッテントリに入ってたりすると、この数百いるブックマークした人のなかで「これで自分はこの本の知識を身に着けた」と思ってしまう人がどれだけいるのだろうと心配になってしまいます。
 僕にそんな心配をされる筋合いはないでしょうし、僕も見知らぬ人の心配をする必要はないのかもしれませんが、ひとつ確実に言えるのは、あれで知識が身についたと思ってしまうのは危険だということです。何もブクペに限った話ではなく、2chまとめサイトやNAVERなど、およそ「まとめ」と称されるものすべてにその危険性が内包されています。すなわち、それらは全部他人のアウトプットであるということです。

 

 ブクペは、本を実際に読んだ人にとってはかなり面白いサイトです。レビューとはまた違い、「本の内容をまとめる」と表現することで、既読者はレビューより深みのあるアウトプットをすることができます。僕が問題にしているのは、本の内容まとめを読んでその気になっちゃう方です。理解とは、自分の体験まで落とし込んで初めてできることです。本を読んでいない人が、読んだ人の要約を読んで、本当に同じように理解することができるでしょうか。

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