アニメ1期感想

Aqours、東京でひとり―ラブライブ!サンシャイン!!第7話感想

 ランタンを使ったPVが美しいと一躍人気になり、一気にそのランキングを上げた内浦のスクールアイドル・Aqours。彼女たちのもとに、東京スクールアイドルワールドなるイベントへの招待が届きます。

 順位が上がって名前も知られつつある、大都会東京に行ける、初めてスクールアイドルのイベントに出られる。良いことばかりを想像しながら、Aqoursは一路東京を目指します。

 しかしそこは、“輪”の外から出た世界だったのです。

 

Aqoursにとっての東京

 「はしゃいでると、地方から来たって思われちゃうよ」とは、渡辺曜の言葉。この言葉は端的に、ひとつのコンプレックスを表しています。すなわち、東京にはたくさんの人やモノが集まっていて、地方はそれに劣るというコンプレックスです。東京の人からすれば、憧れや可愛さの対象である方言も、国木田花丸は頑なに隠そうとします。

 Aqoursにとって、東京はアウェイ。しかも強大すぎるほどのアウェイです。「みんな、あまり東京に慣れていない」と高海志摩は話していましたが、慣れが必要な場所なんですよね。

 一方で、東京は憧れの存在・μ’sが青春を過ごした場所でもありました。その輝きに憧れ、スクールアイドルを結成し、廃校を救おうとするAqoursは、高海千歌は、ただただμ’sを見ていれば良かった。目の前にはいない、夢とも幻とも言える存在だけを見て走っていれば良かった。

 しかし、男坂を走って登ったその先には、夢でも幻でもない現実のスクールアイドル・Saint Snowがいました。これがAqoursにとって、自分たちと同じ地面に立ち、同じ目標を持つ存在との初めての出会い。和やかに話しかけてくるも、その笑っていない目の奥でライバル心を燃やしている、同年代との邂逅です。

 パーフェクトハーモニーと、類まれなる身体能力を見せつけるSaint Snowの2人。そんな2人でさえ、ここ東京では自分たちと同じ「前座」でしかありません。Aqoursはこの東京のスクールアイドルの向こうに、スクールアイドルの“リアル”を見るのです。

 内浦の魅力であり、Aqoursの力の源でもあるもの、それは人とのつながりです。周りの人々とつながることで、Aqoursは彼女たちだけではできないことも現実にしてきました。その内浦の人々とのつながりが、東京に来るとなくなってしまう。このステージでは、Aqoursだけの力が試されるのです。

 スクールアイドルのリアルに触れ、自分たちの力の大きさ、あるいは小ささを思い知ったとき、この海の町からやってきたスクールアイドルは何を思うのか、どんな選択をするのか。小原鞠莉や黒澤ダイヤたちが「乗り越えられなかった壁を、乗り越えてくれる」のか、「取り返しがつかないことになる」のか。

 たくさんのものがあり、たくさんの人がいる東京。ここは、Aqoursにとってその力量を“計られる場所”なのです。

 

津島ヨハネの強さ

 楽屋で出番を待つAqoursは、それぞれが緊張をほぐそうとしたり、励まし合ったりしていました。そこで、千歌と同じく自分で自分を律する者が一人。津島“ヨハネ”その人です。

 飛び込みの大会などに出ていたりしたからなのでしょうか、まったく緊張を見せない曜と並んで、この子もかなり強いなと感じさせられたシーンでした。津島善子の中に、東京への過度なリスペクトがあるのは確かですが、善子の中には内浦でも東京でもない、第3の世界“堕天使ヨハネ”があるのです。

 “堕天使ヨハネ”は、とても強固な防御壁をもつ世界。この中に入り、世界を黒に染め上げることができれば、魔都・東京といえど怯むことはありません。いいえ、「魔都」と言っている時点で、東京さえも“堕天使ヨハネ”の世界に取り込んでいるのです。逆に緊張が顕わになった言葉を発しているのは、いつも津島「善子」の方ですよね。

 「雰囲気壊れる」「集中できないでしょ」という言葉は、ヨハネの世界を構築している証拠。この第3の世界が、津島善子の大きな武器なのかもしれません。

 

「ありがとう」の意味

 最後に、桜内梨子のことを書いて終わりにしましょう。このエピソードでは、音ノ木坂学院に行こうとはしゃぐ千歌たちをよそに、気が乗らないと梨子が一人席を外す一幕がありました。

 音楽が盛んな音ノ木坂学院に入学した梨子は、中学時代にピアノの全国大会にも出場した実力者でした。当然、高校でもホープとして期待されていたでしょう。しかしその期待に圧し潰された梨子はステージで演奏をすることができず、あえなく転校することに。

 梨子が音ノ木坂学院に近づこうとしないのは、きっと、楽しかった思い出がないからではないでしょうか。やりたいことをやっていたはずなのに、周囲が期待を寄せることで、やりたいことがやらなきゃいけないことに変わってしまう。内的要因が外的要因になってしまっていたのです。

 「失敗できないぞ」。そんな気持ちを持ったことを、千歌は梨子に打ち明けます。それが、梨子にはうれしかった。

 ピアノは、基本的に一人で演奏する楽器です。ずっとピアノを続けてきた梨子の周りには、親や先生、同じくピアノを続けている友人がいるのかもしれませんが、鍵盤の前では一人。そして結果を出してきた梨子に期待を寄せるのは、他ならぬ親や先生、周りの友人たちだったのやもしれません。

 梨子は自分にかかるプレッシャーを、誰とも共有できなかったのではないでしょうか。自分に期待してくれている人に、重圧が辛いとはなかなか言えませんよね。しかし、この「怖い」という感情を、自分も持っていると打ち明けてくれたのが千歌です。

 期待されることが怖いと思うのは、自分だけじゃなかった。同じ気持ちを持つ人がいた。だから梨子は、千歌に「ありがとう」と伝えます。自分をスクールアイドルに誘ったあの夜と同じ月夜。臆せず、見栄を張ることもなく、ただありのままの気持ちを言葉にする千歌とのつながりに、梨子はまた救われたのです。

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