日記

クリスマスイブのお別れ

 クリスマスイブの今日、職場から一人の女の子が旅立っていきました。

 初めて会ったのは去年、僕が今の会社に面接を受けにきたとき。応対してくれたその子を見てちょっと近しい感じがして、少し緊張がほぐれたのを覚えています。

 僕が入社したとき、その子は既にかれこれ3年以上勤めていました。冷静で淡々としている(そして肌がとても綺麗)というのが第一印象。あまり感情を表に出さない子なのかなと思っていたんです。

 僕はそういう人が気になるたちで、とても惹かれたんですね。いつも何を考えているんだろう、きっと話せば楽しい子に違いないと思いつつ、業務があまり被らないのもあって、たまに話しかけたりするだけに留まりました。

 やっぱりおもしろい子だと確信したのは、社用で2人ででかけたとき。同人やらフィギュアやら、好きなものが共通していたのもあって、第一印象とはまったく違う姿を見せてくれたんです。それが妙にうれしかったなぁ。

 辞めることが職員に明かされた日、みんなの前で挨拶する彼女は涙ぐんでいました。それを見て、ああ、一見ミステリアスな彼女だけど、ここにすごく愛着を持っていたんだと遅まきながら気づきました。ならば少しでも気持ちよく、新しい一歩を踏み出せるようにしたいと思ったのです。

 

思い出した「与えられたこと」

 結局、僕にできたのは似合いそうなパスケースに、お手紙を添えて渡すことだけ。でも渡したときの笑顔がとてもステキだったことは忘れられません。好みかどうかもわからないけれど、喜んでもらえるといいな。

 すごく手前味噌なのですが、こうして「気持ちよく送り出そう」と自分が思えたことがうれしかった。思い出したのは、6年前に初めて転職したときのこと。当時別の会社のかたたちとプロジェクトを進めていた社会人2年目の僕は、計画半ばにして退職することにしました。

 そのとき別の会社のかたが、小さなブーケやら手書きの手紙やら、たくさんのプレゼントを贈ってくださったのです。「一緒にいて、とても仕事がしやすかったです」と書いてくれたことはずっと忘れられないし(忘れられないことばっかりですね)、社会人になったばかりの僕には、大きな励みと自信になりました。

 もうひとつ記憶から引っ張りだされたのは、昨年亡くなった僕の恩師のこと。彼は僕が節目を迎えるときはもちろん、ただ帰宅するときでさえも別れ際に「がんばれよ」と言いながら笑顔で固い握手を交わしてくれました。あの手をもう握れない今になって思い出すと、あの握手にいつも僕は何かをもらっていたんです。

 だから僕は、よく握手をします。ちょっとおじさんくさいかもしれないけれど、恩師のように何かを伝えられたらと思いながら、手を差し出す。今回も「新しいところでもがんばってね!」と握手を交わしました。最近自覚し始めましたが、僕は恩師みたいな人になりたいのです。

 10代、20代の頃に、幸いにもたくさんのものを与えられてきました。僕にとっての30代は、それを返していく年齢なのだなと感じています。

 

前途に幸あれ

 片づけも終わって、いざ最後の別れを告げようとした彼女は、堪え切れずにボロ泣き。それがとても可愛らしくもあり、ここが彼女にとって大粒の涙を流すほど好きだった職場で良かったと思いました。アルバイト時代を含めてさまざまな仕事を見てきましたが、こんなふうに職場から離れる人はそういません。すっごくステキなことです。

 もっと話してみたかったなぁと、ちょっぴり後悔と寂しさを抱えながら帰路へ。見た目はクール、でも蓋を開けてみればとてもキュートな一面を持つ彼女が、新しい環境でもその良さを存分に発揮できますようにと、降誕を迎える救い主に祈るばかりです。

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