本の感想

巨人ファンがカープ応援席マンガ『球場ラヴァーズ』を読んだ結果

 

「野球は人生そのものだ」

あまりに有名な長嶋茂雄さんの色紙に書く言葉。そしてつい最近では、アニキ金本が引退会見で言った言葉です。

野球には色々な関わり方があります。 元プレーヤー、観る専、あるいは今でもどこかの球場でボールを投げている人……さまざまな人がいる中で、一番多いのが「応援する人」です。

応援する人には、誰でもなれます。そして応援する人の数だけ、人生がある。その中で人は野球と出会い、野球と付き合い、いつしか野球が人生の一部に、人生そのものになっていく。

「球場ラヴァーズ〜私が野球に行く理由〜」は、そんな誰にでもある姿を鮮明に描き、僕ら野球ファンの前にもう一度差し出してくれる漫画です。

 

学校でいじめに遭っている松田実央は、エスカレートしていくいじめに抗うことができず、とうとうお金を貢ぐために援交を決意するまでに追い詰められてしまう。しかし、そこで出会った「赤い帽子の人」に諭され、援交を思い直す。だが衝動的にお金と野球チケットの入った封筒を盗んで逃げてしまう。

謝って返そうと訪れた東京ドームで、実央は熱狂的なカープファンの基町勝子、下仁谷みなみ、そして野球と出会う。赤い帽子の人を探すために球場に通う実央は、勝子やみなみの教えもあって、野球と選手の織りなす人間ドラマに魅了され、成長していく。

読んでいくと、チームの連勝や連敗から、選手のケガに復帰、新しく訪れるシーズンなどなど、ごく自然の出来事として野球ファンが受け止めていることに、実央を始めとする3人はひとつひとつ意味を見出していきます。それは、それぞれの人生の中での意味です。

受け止める人によって意味が違ってくるのは当然です。だけど、あらゆる人の人生に当てはまるものが、野球の中にはこんなにたくさんあるんだってことを、20年近く野球を観てきた僕はこの本にようやく教えてもらいました。

 

最終巻の6巻では、とうとう赤い帽子の人の手がかりを掴んだ実央が一歩踏み出します。今までずっと赤い帽子の人を探すために野球場に来ていた実央は、大切な仲間の勝子やみなみと過ごしてきた日々のアイデンティティが失われることに一度は恐怖するのです。しかし実央を立ち直らせた勝子姉さんたちの言葉は、読者に勝負の意味、応援する意味をズバッと突きつけた、津田さんのストレートのような言葉でした。

そしてそれからの展開は、鳥肌が立つどころか鳥になってしまうほど……もうぜひ、大人買いしてまでも読んでいただきたいと思います。

 

実は、6巻を最終巻と思って読んでおらず、最後の最後で気づきました。気づいたときにはもうクライマックス、9回裏2アウト2ストライクみたいなことになってて、

「あれっ」

「え、ラスト!?」

「あっ」

「あっあっあっ」

「ふおおおおおおおおおお」

「終わっちゃった……石田先生すばらしい作品をありがt」

「うおおおおおおおお続編くるううううううううう!!!」

と、お風呂の中でばっしゃばっしゃの大忙し。そうなんです、主人公が本編に出てきたあの娘に代わって「球場ラヴァーズ〜私を野球につれてって〜」として続くんですよ! 今度は野球を通じてどんなストーリーが描かれるのでしょうか。もう楽しみで仕方ありません。

読んだら絶対球場へ応援しに行きたくなる「球場ラヴァーズ」。ジャイアンツファンの僕は、今の時期でもまだ応援できるってことを改めて幸せに思います。少しでも長く、いえ最後の最後まで応援できるよう、まずはクライマックスステージを戦うチームを応援していきます。日本シリーズに進んだら、なんとか一度は現地に行きたいなぁ。

 

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