“人間”ジョブズの姿をうつした映画「スティーブ・ジョブズ」

 Appleの新製品プレゼンテーション、スタンフォード大学卒業式辞と、公の場で伝説的とも言われるパフォーマンスを行い続けてきたスティーブ・ジョブズ。彼の人生の一部を描いた映画はしかし、誰もが見知った輝かしい姿ではなく、変人であり、愚かな父であるジョブズを描いた作品でした。

【以下、ネタバレあり】

 

 この映画で描かれるのは、Appleの各時代の新製品「Macintosh」「NeXT Cube」「iMac」発表会の“舞台裏”。Macintoshの発表会では、マシンに「ハロー」と喋らせるためにエンジニアにギリギリまで調整を強い、マーケティング担当のジョアンナには本番開始直前に胸ポケットのついた白シャツを要求。まさに無理を通して道理を引っ込める有様です。

 これは、彼の中で仕事として絶対に外すことのできない「こだわり」があるから。しかし彼にとっての「こだわり」は、周囲の人間にとって「拘り」――すなわち、自分たちを拘束するモノでもあったのです。

 Macintoshの発表会のあとも、重要なプレゼンテーションの直前には必ず揉め事を起こすジョブズ。さらには元恋人のクリスアンと娘のリサが、頑なにリサを認知しないジョブズに詰め寄ります。

 まったく周囲に流されることなく、ともすれば迷惑すら顧みず、自分の信念のままに突き進むジョブズには、あそこまで自分勝手に仕事ができたらいいなと思う反面、あれだけ敵を作れば生きにくいだろうなとも感じてしまいます。ジョブズとその周囲の人たちとの戦いは、ジョブズと自身の人生との戦いでもあったのかもしれません。

 彼の人生、言葉を選ばずに言えば「クズっぷり」を知っているAppleファンであれば、等身大のジョブズをここまで描いた作品として楽しめるでしょう。逆に彼の表の顔しか知らないという人は、この映画はよくわからない作品になってしまうかもしれません。僕もApple製品は好んで使っているのですが、どちらかというと後者の方でした。

 そんな人にとって見どころ足りうるのは、この“変人”を演じ切ったマイケル・ファスベンダーの迫力の演技。他の役者さんにも言えることですが、とにかくあの台詞の量を覚え切るのは大変だったと思います。特にジョブズは怒ってまくし立てるシーンも多いため、演者の力量が問われる役だったのではないでしょうか。

 現在の世でこれだけ多くの人がiPhoneを手にしているのを思うと、彼はまさに「口先ひとつで、世界を変えた男」。世界を変えるためにはこれだけのパワーと信念が必要なのかと思い知らされる、これこそパワーにあふれる作品でした。

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