世界を広げるのは、いつだって勇気―「ラブライブ!サンシャイン!!」2期9話感想

世界を広げるのは、いつだって勇気―「ラブライブ!サンシャイン!!」2期9話感想

姉が世界のすべてだった。鹿角理亞は、そんな女の子です。誰よりも尊敬し、誰よりも愛した姉の鹿角聖良。心の底からリスペクトできる人がこんなに身近にいるのは、とても幸せなことでしょう。

聖良に心酔するゆえに、理亞は姉と同じ世界にい続けようとしました。その中で、聖良に認めてもらおうとも。美しい姉妹愛であると同時に、理亞の世界が開かれなかったという事実にも目を向けなくてはなりません。聖良の世界に身を置く理亞。彼女の限界は、姉の限界に等しいのです。

否定的な表現をしましたが、決して悪いことではありません。ただ、その外にはもっともっと広い世界、遠い未来がある。そこに理亞を引き上げたのが、同じ境遇にいた黒澤ルビィでした。

 

まるで、よそから来た猫がだんだんと懐くようでしたね。「みんなでワイワイとか好きじゃないし」という理亞が、ルビィという理解者を得て、国木田花丸、津島善子という協力者も現れた。全員がいわゆる“ぼっち”だったことを花丸が告白すると、理亞は心の扉を少しずつ開いていきます。

聖良で満たされていた理亞の世界に、変化が訪れた。異分子を受け入れ、他の何かが入ってくる余裕が生まれたことで、世界が広がり始めたのです。そしてそれは、異分子として入っていったAqoursの1年生たちも同じ。地元・内浦からはもちろん、Aqoursという括りからも抜け出すことで、個々のパーソナリティがグッと際立ちます。

すると、隠し持っている魔導力……もとい、新しい一面が見えてくる。「未知」とは「未だ知らない」と書きますが、未来そのものなんですよね。お互いに、まだまだ知らないことがたくさんある。それは、彼女たちに未来がある証左です。

この未来を自分の足で歩いて行く。これが自分の世界を作り上げるということ。つまりは、自立の始まり。1年生4人で行動する中で、ルビィと理亞たちは自分の手で曲を作り、披露する場を獲得し、行動を共にする友人を得ました。今さら花丸の「ずら」「おら」に突っ込む人がいなかったのは、Aqoursというコミュニティの中にいたから。そこに突っ込む理亞はAqoursの1年生3人とは外れたコミュニティにいることを実感させますが、後に善子の堕天使キャラに順応した彼女を見れば、この4人がコミュニティを形成できたことがわかります。理亞の世界が、どんどん広がっていく。ラブライブ敗退は、終わりじゃないのです。

「でもさ、自分たちで全部やらなきゃ」という善子がめちゃくちゃカッコよかった
ダイヤに勇気をもらっていたと気づいたルビィは、「お返し」のためにその勇気を振り絞ります

見逃せないのは、幼い黒澤ダイヤが妹にかけた愛のある言葉、「ルビィは強い子でしょ。なら、勇気をお出しなさい」。そう、姉は妹に強い力があることを、ずっとずっと前から知っているのです。そしてその力を自らの意志で発揮することを願っていた。妹が心の底からやりたいことを、自分の力で成し遂げる時が訪れるのを望んでいた。

函館に残ることを伝え、自分たちだけで曲を作り、ライブの場を掴み取って、地元ラジオ局でプロモーションまでする。そんな高難易度のミッションを、ルビィと理亞はやってのけました。そして恐らくダイヤも聖良も、妹たちにそれくらいの力があると信じていたでしょう。ただ一つ必要だったのは、勇気を出すこと。「隠された力」をAwakenさせる勇気です。

ルビィたちの力を借りながら、理亞はこの勇気を少しずつ出せるようになっていきました。クリスマスライブのプレゼンの場然り、クラスメイトとの一幕然り(このクラスメイトも、勇気を出した人たちですね)。そうすることで、欲しかったであろう友達もできた。そして最後に、理亞はラブライブ敗退を乗り越え、新しい“雪の結晶”を手に入れました。「最後にしなければいいんじゃないかな」というルビィの提案を、見事形にしてみせたのです。

ルビィが理亞にしたこと。これは、以前彼女が花丸にされたことと同じでした。閉ざされた世界から解き放ち、その輝きを広げること。理亞はラブライブに勝ち続けて、少しでも長く姉とともにいようとしていましたが、それは聖良が好きだという気持ちの昇華です。大事なのは聖良への思いで、それを表現する方法はラブライブ以外にもある。歌とダンスで思いを表現するスクールアイドルの自分たちは、その方法をもっている。理亞という同級生を輝ける場所に導いたのは紛れもなく、スクールアイドルとして、一人の人間としての、ルビィの成長です。

「変わることを恐れないで、突き進む勇気」。いつの時代もスクールアイドルにとって大切なのは、目標に向かって一歩を踏み出す、自分の世界を変える「勇気」なのです。

COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 7 )
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  1. By 拓ちゃん

    世界を拡げるには、いつだって『勇気』が必要だ─というのは、例え言語化されていたとしても為し得るとすれば、自分の内外に相当なブレイクスルーを要します。

    “「同じ境遇」に対する共感”
    “「隠された力」をAwakenさせる勇気”

    毎度ながらの丁寧な考察に感心すると共に、言語化してブレイクスルーを与えてくれることに感謝します。

    それとは別にまた巷の話をしてしまいますが…
    ルビィと理亞の『妹’s』は姉たちに「自分たちの力で作ったライブを見て欲しい」と言っていたのに、サプライズとして聖良とダイヤ、あまつさえ残りのAqoursメンバーもライブに参加(乱入?)したことによって「台無し」になった─
    という“意見”を出されている方も見受けられます。
    “意見”ですので賛否両論はもちろんあって然るべき。

    ただ、私が燃えるのは否定的な“意見”が出た場合に、どう自分の中で『是』へ繋げるのか、ということに尽きます。
    これはこちらに初めてコメントした頃から終始一貫変わっていないつもりです。

    ルビィと理亞は、自分たちが持っている“勇気”と“力”を示し、それを見てもらいたい、認めてもらいたい、これから先に不安を遺させない…と願いました。
    額面通りに受け取れば、「おとなしく見守ってやれよ」という意見が出るのも至極当然です。
    それでも、妹’sの二人で臨んだプレゼンを窓越しに見て滂沱の涙を流していた親友二人が、妹’sの心の根底にある『姉と一緒のステージ』という望みを叶えてあげたい
    ─と想うことに何の不思議があるだろうか、と私は思います。

    「きっとすごいライブになるよ。この景色に負けないくらい」と函館山で夜景を眺めながら千歌が言ったように、そこにAqours全員が加わることで“より”凄いライブとなって、当事者である妹’sと姉たちだけではなく、あの夜函館にいた人たちにも『Saint Aqours Snow』を通して、いつまでも記憶に留めてもらえる、認めてもらえる─そうなるように可能な限りの努力を惜しまない。

    重要なのは、このステージを実現させたのは間違いなくルビィと理亞の二人の“勇気”と“力”であること。
    みんなが動き出したくなる程の原動力を、妹’sの二人がきちんと示すことができたからこそ生まれたステージで、確かに函館の夜景に負けないくらいの“輝き”がそこにはありました。

    • By ばかいぬ

      >拓ちゃんさん
      ありがとうございます! なるべくわかりやすいように
      書こうとしているので、そうおっしゃっていただけてうれしいです。

      「見守ってやれよ」という気持ちもわからなくはないのですが、
      理亞のことを思えば、もう一度聖良とのびのび歌えるチャンスが用意されてよかったと
      思いますし、それは残り少ない黒澤姉妹の共演にしても同じですよね。

      それに何より、彼女たちは自分たちだけのためにスクールアイドルをやっているわけではないし、
      スクールアイドルがそういうものではないことは、理亞のクラスメイトの言葉を聞けばわかることです。
      みんなに輝きやら何やらを届けるのがスクールアイドルですし、それなら11人で届けられるモノを
      届けてくれたら良いと思います。クリスマスツリーのように輝く街路樹と大きな星は、11人じゃなきゃできないんじゃないかなぁ。

  2. By 椿(Chin)

    今回、改めて気付かされたのが一年生のボッチ体質。完全に失念していました。
    その目で眺め直すと、三年生は社交界・網元・店舗で「外と繋がっている」人達、二年生は仲間でまとまる「中」の人達、一年生は「内に篭もる」人達と分かれているようにも思えます。
    そして、千歌は旅籠で外と繋がり、普通星人で疎外を感じて、妹で。
    だからこそ、一人だけ “ルビィが何をしようと思っているのか” を、察することが出来たのだと思います。

    後、ルビィが「(お姉ちゃんから)ずっと勇気を貰ってたんだ」と回想するシーンに差し込まれるカットに、一期3話で千歌たちを叱咤する画が選ばれているのが素敵でした。一見、威喝している様に見える物言いながら、その中に激励を読み取っていたのだと。そして、お姉ちゃんが勇気を分け与えていたのは自分にだけでなく、皆に対してであることを知っていたのだと。

    • By ばかいぬ

      >椿さん
      千歌の察しぶりは掘り下げるとおもしろいところですよね。
      時折一歩引いて他のメンバーを俯瞰することがある彼女ですが、
      椿さんが書いていただいているように、3つの属性を網羅しているからなのかもしれません。

      ルビィにとっては、誰か(あるいは自分)を叱咤する姿も、
      「姉・黒澤ダイヤ」なんでしょうね。本当にお姉ちゃんのことが大好きで、
      よく見ている妹だなと思います。

    • By しろねこ

      椿さん、各学年の外、中、内の分析、感銘しました。
      僕も、千歌ちゃんだけが、察したことに意味があるはずと思い、「妹」だからかと結論していましたが、千歌にだけすべての属性が備わっていると考えれば、あの共感性の高さが説明できますね。

      一期3話のシーンが挿入されていたのもよかったですね。一期のダイヤは、少し損な役回りをさせられてましたが、ここへきて全て昇華された気がします。

  3. By たくみ

    ルビィと理亞の成長物語、とても素晴らしい出来でした。

    この妹たちが成長できるチャンスがあるとしたら「今」しかなかったんじゃないかなって思うんです。
    きっと本戦まで勝ち進んでいたらこの話はできなかった。
    AqoursとSaintSnowはライバルという関係で終わっていた。
    そうなれば理亜は今のように新しい目標を見つけることができただろうか、と。
    でもこのタイミングだからこそ、二人が手を取り合えた。
    SaintSnowが地区予選敗退だったのは残念な結果ですが、それと引き換えに大事な、もしかしたらラブライブ優勝なんかよりもっと大事なものを、理亜と、そしてルビィは手にいれたんじゃないでしょうか。

    このお話を1期の時から視野に入れていたのかは分かりませんが、
    物語の内容とは別に、私は心が震えるのを感じました。
    酒井監督に最大限の感謝を捧げたいですよ、かなりマジで。

    尊敬とは相手を上に見ることですから、理亜は最初「姉様のようになりたい」とは思っても「超えたい」とは思ってなかったと思います。
    でも成長は「超える」ではなく「違う道を行く」という道もあるんだなというのがラストを観た感想でした。
    SaintSnowを終わらせ、姉のようにではなく、自分の道を進んで姉に楽しんでもらえるスクールアイドルを目指す。
    まさにばかいぬさんの言う「自立」ですね。
    そしてルビィは理亜を通して、前回の「ルビィを置いていかないで!」と言った自分を超えられたのではないかな、とそんなふうに思います。

    そんなわけで(もう日付が変わったので昨日)ひとつ(歳が)成長したたくみでしたw
    シャイニー☆彡

    • By ばかいぬ

      >たくみさん
      ああ、たしかに両チームとも本戦までいっていたらこうはならなかったし、
      理亞も最後までAqoursを敵対視したままだったでしょうね。
      遅かれ早かれ聖良はいなくなるわけで、果たして勝ち進んでいたら理亞は
      新しいスクールアイドルを作ろうとは思えなかったかもしれませんね。

      「違う道を行く」というのが、本作のテーマ(と僕が思っている)
      結果を受け入れて、新しい目標を見つけていくってことですね。
      結果は「負け」でもあるけれど、「リアル」でもあって、要するに姉の卒業でもある。
      ルビィと理亞はそんなリアルを受け入れたことで、「違う道を行く」のだけれど、
      すなわち今の自分を「超えた」のですねーって、おっしゃっていただいたことを
      ただなぞっただけなんですが、要は激しく首肯するということで笑

      「来週」って本当に1週間後だったんですか!
      遅ればせながら、成長おめでとうございます〜! 遅くなってすみません……!
      射手座同士、今後ともよろしくお願いします(*´∀`*)

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