桜内梨子のキセキ―「ラブライブ!サンシャイン!!」2期3話感想

桜内梨子のキセキ―「ラブライブ!サンシャイン!!」2期3話感想

学校説明会が1週間延期され、ラブライブ予選と日程が重なってしまうことに。Aqoursにとっては大きな問題ですが、しかしそこからの彼女たちは不思議に思うほど明るく描かれています。悲壮感なんて、ほとんど感じられないと言っていいほどです。

黒澤ダイヤは、ラブライブ予選にトップバッターとして出場し、すぐさま移動するという手段を発案。そのためには抽選で1番を引かなくてはなりません。くじの引き手が決まらない中で立候補したのは、津島善子。この時の国木田花丸の表情がとても印象的でした。

確かに善子はAqoursでみんなと一緒に活動を続けてきたけれど、こうした積極性を見せるシーンは花丸から見てもあまりなかったのかもしれません。善子がAqoursのために何かしようとして、「Aqoursの一員」となったのがうれしかったのではないでしょうか。そんな花丸からの(文字通り)後押しもあって、善子は見事に24番をゲット。「堕天のD」賞を引く手腕はさすがの一言です。

進退窮まったAqoursは、決断するしかなくなりました。説明会か、ラブライブなのか。

 

学校説明会とラブライブを天秤にかけるというのは、学校と自分たちのどちらかを選ぶということ。でも、どちらか選べと言われても、選べるものではありません。というより、彼女たちがスクールアイドルである以上、これは切り離せないものなのです。

学校があるから「スクール」アイドルになれる。そして、スクールアイドルとして輝きたいからスクールアイドルをやる。多くの人の耳目を集めるくらい目いっぱい輝けば、学校という“前提”も守られる。まるで循環するかのように、「学校」も「スクールアイドル」も、どちらもスタート地点になれるんです。

だから、分けて考えることは不可能。学校説明会とラブライブ、両方を獲りにいく。

しかし、両獲りが現実的ではないのも事実。そんな中、都会っ子らしいリアリスティックな言葉を口にしたのが桜内梨子です。

「私たちはキセキは起こせないもの」
「だから、その中で一番良いと思える方法で精いっぱいがんばる」

この間「キセキを!」って言ってたじゃん! と思った方も多かったでしょう。でもその前に、彼女は大きな挫折を味わっています。プレッシャーでピアノを弾けなかったあの時から、梨子はあらゆる手を尽くして“海の音”を表現しようとしました。でも、できなかった。彼女の中で、キセキは起きなかった。それが今の梨子を形作り、このような言葉になって表れているのです。

ただ、採ろうとしている方法は正しい。「そう、だね」と中途半端な反応を示した高海千歌は、スクールアイドルを始める際にμ’sの歌を覚え、渡辺曜という協力者を探し、入学式で勧誘を行い、メンバーが揃わない中でダンスの練習を続けました。そして最大の難関・曲作りに悩んでいるところに、ピアノの弾ける梨子が転校してきた。一番良いと思える方法でがんばり続けた結果、「キセキ」が舞い込んできた経験が、彼女にはあります。

梨子がやろうとしていることは正しい。問題は、その先にキセキがあると知っているかどうかです。

梨子からは二手に分かれる妥協案が出されましたが、結局、Aqoursはメンバーを分けませんでした。前回までの流れを汲めば、2年生3人とそれ以外で分かれる手段もあったと思います。でも、今回は曜ではなく、黒澤ルビィが衣装を作った。梨子ではなく、雨の音を聞いた6人が曲を作った。そして、2つの曲に込められた思いは同じだった。ならば、9人で歌おう。松浦果南は「私たちはひとつじゃなきゃね」と言っていましたが、9人で輝くからこそ、「私たち」はひとつの光になれるのです。

予選の舞台となった特設ステージは、学校からは遠く離れた場所。学校説明会と同じ日取りのため、浦ノ星女学院生も来れません。少ない声援、まばらな拍手、そこに「町の人たちの善意」はない。でも、Aqoursは9人の力で完全アウェイにファンを生み出しました。ここに大きな意味があります。「今までのスクールアイドルの努力」ならぬ、「今までのAqoursの努力」によって、自分たちへの声援をもぎ取った。Aqours一本立ちの瞬間です。

さあ、ラブライブ予選の次は学校説明会です。バスや電車が著しく少ないのがこの土地ならではの苦難なら、みかん畑のモノレールが使えるのはこの土地ならではの恩恵。内浦のスクールアイドルは、笑顔でみかん畑を駆け抜けていきます。

2年生の一人として他の6人を先導しながら、梨子は何を考えていたでしょうか。できることを精いっぱいやるんだと思いながらも、もしかしたら本当に間に合うとは信じ切れていなかったかもしれません。

でも、本当は梨子だってキセキを経験しているんです。何をやってもピアノが弾けない、楽しくならないと悩み続けていたけれど、あの日「諦めることないよ」と言った千歌と指を合わせた。どうにかしたい一心で、スクールアイドルの門を叩いた。

自分が起こしたことじゃないと思うかもしれない。結局千歌に説得されたけれど、一度はピアノを割り切ろうとしたんだと思っているかもしれない。けれど、ステージでもう一度鍵盤と向き合い、海の音を奏でてみせたのは他ならぬ梨子自身です。周りの人たちの力を借りながらも、回り道をしながらも、梨子は自分の中でキセキを起こしているのです。

そのキセキを、今度は対象化する。キセキは、現実に起きるから「キセキ」なんです。キセキと現実は地続き。だから、今できる一番良い方法を精いっぱいがんばる。何とかする、何かを変える、その一心で山道を走り続けた梨子を、キセキが待っていました。ここで梨子は、善子に続いて「Aqoursに追いついた」。全員の足並みが揃い、向かう先が定められ、Aqoursは正真正銘「ひとつ」になったのです。

9人が揃う。“始まりの歌”は、そんな時に流れます。ここが本当の、Aqoursのスタートです。

COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 12 )
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  1. By あすか

    3話はなかなかはちゃめちゃな展開でしたねwww
    でも壁にぶち当たりながらも、結局はメンバー誰ひとり欠けず全員でライブをするべく奔走する=これぞラブライブという感じ!こんな世知辛い世の中ですから笑、どんな危機的状況においても決して諦めず、全速前進で乗り越えキセキを起こして行く千歌ちゃん梨子ちゃん達の姿に、心がぽかぽかするんですよねー。今の彼女達は9人で叶えたい明確な夢と結束力が揺るぎ無い為、以前よりも爽やかで少し逞しく見えます^^

    そして雨のお寺で聴こえていたあの曲が、こんなにもエモくなるなんて…黒澤姉妹のセンターが映える!一年生と三年生の絆の結晶、MY舞☆TONIGHTに大興奮(;ω;)『お寺、ダイヤさんのお琴の音色=和』『マリーさん果南ちゃん=元気の出るロック』そして『よしこちゃん=中二病感(笑)』曲中ダイヤさんのソロでブランクがあったのも『花丸ちゃん=無』を感じたし、ルビィちゃん作の花魁を模した衣装もSexy過ぎず実にAqoursらしく可憐でしたね!きっとずっと着て欲しかった、大好きなダイヤお姉ちゃんに一番似合うようデザインしたのでしょう!ちゃんと6人のアイデンティティが反映されていてもう最高過ぎましたwwwラブライブの『和』の曲が神なのは、もはや伝統なのですね(>_<)ラストであの『君のこころは輝いてるかい』に繋がって行く所も、憎いほど感涙。やはり汗と涙の青春物語を、鮮やかに彩るライブあってのラブライブなんだなぁと改めて感じました^^

    • By ばかいぬ

      >あすかさん
      正直、3話は要素が多すぎてまとめるのに大変苦労しました……w
      とはいえ、「ラブライブ!」らしさを損なうことなく描かれていましたね。ムダにシリアスにならず、笑顔が多かったのがとても印象的でした。

      「MY舞」はめっちゃカッコよかったですね! カッコよすぎてタイトルが浮いてると思ってしまうほどです(;´∀`)
      あすかさんが書いてくださったように、彼女たち6人の要素が詰まった、カラフルだけどキリッとした一曲ですね。早くフルで聴きたいっす!

      世代が変わっても青春の描き方は変わらないというか、本当に「ラブライブ!」らしさが凝縮されたエピソードでした。次のダイヤ回も期待です!

  2. By 拓ちゃん

    今回の着眼点は梨子ちゃんでしたか。

    「私たちはキセキは起こせないもの」

    その前の晩のベランダと屋根の上のやり取りから続く、理想と現実の狭間に揺れる中で『妥協点』を提案するのが、梨子ちゃんの役割のようになっていますね。
    それこそ1話で見せた、梨子ちゃん流の『千歌ちゃん、やめる?』に連なっているように感じます。
    グループや組織の中では、確かに梨子ちゃんのような“ドライ”な案を出す役どころは重要です。
    それも、第1期8話で千歌ちゃんが“くやしいんだよ!”と涙と共に本心を吐露するまで、千歌ちゃんが一人で背負い込もうとしていたものを、梨子ちゃんなりのやり方で肩の荷を軽くしてあげようとしているのが随所に感じられて、あの「私たちはキセキは起こせないもの」というセリフを“ごく当然”に受け止めて聞いていました。

    “ドライ”な発言をする梨子ちゃんは云わば損な役回りですが、でも、梨子ちゃんは、そんな逆境を諦めずひっくり返そうとしていく千歌ちゃんの姿が、バネが押し縮められ解放されると勢いよく跳ねるように見えているのかもしれません。
    そんな瞬間(≒キセキ)を目の当たりにできることをいつの間にか期待してワクワクしているんじゃないかな──というのを「ほんと、あきらめないよね」の一言に込められていた気がします。

    千歌ちゃんが梨子ちゃんが転校生と知った時「キセキだよ!」と叫びましたが、今や梨子ちゃんが千歌ちゃんに向かって心の中で何度も呟いているのかもしれません。
    私的には、最後の「起こるかな、キセキ!」と確信とも言える期待に満ちた眼差しの梨子ちゃんが何よりの裏付けだったように思えてなりません。

    ばかいぬさんの感想を見るまでは、上記の通り“ごく当然”に受け止めていただけですが、感想を読んで触発されて、自分でもここまで広げられた感じがしましたので、率直に感謝申し上げます。

    私自身の今回の着眼点はダイヤでした。
    ・乗り換えのゴチャゴチャは不得手なのに、1番くじを引けば間に合わせられることを突き止めたこと
    ・抽選会で1番を逃した後の選択で、生徒会長でありながら“学校説明会”ではなく“ラブライブ!”を選んでいたこと
    ・メンバーを分けるにあたっても、同様に“学校説明会”ではなく“ラブライブ!”のステージに最初からいたこと

    ダイヤが持つ“ラブライブ!”に対する並々ならぬ想いが伝わって来るようで、描かれていなかったそれぞれに分かれるメンバーの選定と、片道切符で臨んだと思われる鞠莉達学校説明会担当達の決断の場面など、これらもやはりドラマがあったのだろうな、と勝手に思い描いています。
    鞠莉が放った『勘違いしないよーに!』は今更言うまでもないダイヤのセリフ。
    だからこそ、“ラブライブ!”のステージを選んだダイヤに対して言ったものなのかな…とも考えています。

    そうした流れで次回はダイヤ様のお当番回!
    どういったお話しになるのか、今から楽しみです。

    • By ばかいぬ

      >拓ちゃんさん
      そうなんです、「キセキは起こせないもの」を聞いた時に「1話でキセキをって言ってたやん!」と思ったのがきっかけで、この子がキーパーソンぽいなと見定めて書きました。
      拓ちゃんさんのおっしゃるとおり、1話の「よかったと思ってる」に続いてドライな発言をしていて、基本ウェットなのが「ラブライブ!」なだけに、余計に目立ったんですよね。

      そのぶん、一番ウェットな千歌との対比にもなっていて、でも思ってることは近づいているという心の動きが感じられますね。本当、今は梨子が「キセキだよ!」って言ってるというのはすごく的を射ていると思います! 今度使わせてください笑

      ダイヤに焦点を合わせる見方もおもしろいですね。確かに選択したものを見ていくと、ラブライブへの強い思いが感じられます。裏で色々あったっぽいですよね、ここは同人作家さんにぜひ描いていただきたいところ…!
      そのダイヤの新しい一面が見られるのか、次回超楽しみです!

  3. By 椿(Chin)

    MY舞☆TONIGHTを歌う前の疎らな拍手、歌い終わった後の不安の残る千歌の表情。
    否応無しに一期3話のライブシーンを思い出します。
    2話を想起するベランダ越しの千歌梨子、
    7話の東京スクールアイドルワールド出演前にも緊張から涙を浮かべていたルビィ、
    13話の飛行機雲を思わせる大空を横切る虹
    等々、一期を意識した画がたくさん出てきました。
    山越えで汗まみれになった青いTシャツ姿は、1st live のアンコール。
    そして「君ここ」。
    μ’sの影を払拭させるための一期。そのラストカットは、サンシャインのキービジュアル。
    一期と言うep.0から、前期の振り返りを経て、ようやくここからep.1が始まるのだと感じ入っています。

    • By ばかいぬ

      >椿さん
      感じていることが一緒で安心しましたw
      本当、過去のAqoursのエピソードを思い起こさせる画がたくさんあって、その上での「君ここ」ですから、ここがスタートなんだなぁと思わずにはいられません。
      1期で1クールかけてμ’sからの脱却を図ったと思っていますが、ようやく彼女たちの物語が本格的に始まりそうですね!

  4. By しろねこ

    ばかいぬさん、初めまして。
    暖かい視点のアニメ感想、毎回、興味深く読ませていただいています。

    どのブログも、そういう見方があるのかと、再発見させてもらっていますが、
    今回の「梨子のキセキ」も、ああそうかと唸らせていただきました。

    梨子ちゃんのAqoursを二つに分けるという提案、
    メンバーの中の数少ない常識人としての常識的な提案だと受け止めていましたが、
    「キセキ」をキーワードにして読み解くことができるんですね。

    考えてみると、梨子のなかでAqoursの地元以外での活動は、
    ゼロだった東京のイベントと、惜しくも敗退してしまった地区予選のみ。
    見事突破できた前回の予備予選の成功体験はないわけですもんね。

    今回の二つのライブの成功をきっかけに、9人の心がさらに結びつき、
    「未来変わり始めたかも」しれませんね!

    • By ばかいぬ

      >しろねこさん
      はじめまして! ばかいぬと言います〜。記事をいっぱい読んでいただけているようで、大変うれしいです! ありがとうございます。

      そうなんです、常識的、つまり現実的に梨子は判断・提案しているのですが、それが「ラブライブ!」だと妙に浮くのがおもしろくて、今回は彼女を中心に考えてみました。
      おっしゃるとおり、彼女たちは大会の中で成績を残してはいなかったのですが、ここで予選と学校説明会のはしごをやり切ったこと自体、成功体験になりそうです。
      チームとしての成功体験ってメンバーの絆をより深めますよね、彼女たちの未来に期待です!

  5. By たくみ

    またまた遅くなりました。
    第3話の感想も楽しく読ませていただきました。

    シナリオの面から賛否両論が多かった3話ですが、私は結構楽しめた派です。
    土地柄からμ’sを遥かに超える廃校撤廃への試練。
    もし成功したら間違いなくAqoursはμ’sを超える伝説(ある意味)となりますね。

    梨子が出した案はドライなものでしたが、一番現実的な方法ですよね。
    でもラブライブにおいて現実的というのはいわゆる「大人の意見」という感じがします。
    大人であれば現実を見定めて、可能と不可能を切り分け、よりよい方を選択します。
    都会育ちの梨子が一番大人な考え方を持っているんだな、と初見では感じていました。
    でも彼女たちはまだ子供ですから「どっちも取る」という子供の理屈(=非現実的)を言い、それを追い掛けることが許されるのでしょう。
    高校生は子供ではありますが、もう大人な考え方ができる年齢でもありますよね。
    そんな彼女たちが子供の理屈を振りかざし、叶うか分からないけど叶えようと真剣に追い掛け、そして叶えてゆくからそれを見た私達は心が揺さぶらるんじゃないかなって。
    そんなことを考えさせられた第3話でした。

    ラストの君ここは、来るかなー来るかなーと身構えていて、来たー!となったのですがw
    何度聞いても素敵な歌ですね。やっぱりこの歌は「特別」なんだなって思います。
    私は ♪君は何度も立ち上がれるかい? って歌詞がとても心に響いてくるのですが(挫折の多い人生だからですかね)その歌詞のごとく、今期のAqoursには怒涛の試練が襲い掛かってきます。
    でも彼女たちは「やるしかない!」ですから、今回のお話のようにがむしゃらに頑張ってくれると期待しています。

    ところで3話一番のお気に入りは「冗談は善子さん」です。それでは。

    • By ばかいぬ

      >たくみさん
      子どもって、しばしば大人の予想を超えることをする存在ですよね。
      大人と子どもの境目で、ある意味子どもでいられる最後の時期の高校生、
      そんな彼女たちが、理屈を抜きにやりたいことをやりきろうとする。
      でもそれって、子どもに限られたことじゃなくて、やり方は違えども
      大人だってできるんじゃないか? そう思わせてくれるから、スクールアイドルには心を揺さぶられるのかもしれませんね。

      そう、「やるしかない!」ので、あとはどうやってくれるのかとても楽しみです。
      がんばってくれるのは間違いないですからね!w

      「冗談は善子さん」僕も笑いましたw 2期はこういう遊び心が多いですね。

  6. By あくあろーど

    いうも楽しく拝見させてもらってます!

    自分がこの回で感じたことは、やっぱり虹は奇跡への架け橋なんだなぁってことです。

    太陽の光(サンシャイン)を浴びて、水(アクア)が虹になる…正にラブライブ!サンシャイン!!じゃないですか!?

    奇跡が起こるかどうか聞かれた千歌ちゃんが「だって虹がかかったもん!」って答えるのが最高! 理屈は通ってないけど、何故か納得してしまう時ってありますよね?

    君ここのセットも虹…そこまで考えて作ってたのかと思うと、身震いがしました。

    • By ばかいぬ

      >あくあろーどさん
      お読みいただいているとのこと、ありがとうございます!
      なるほど、確かにサンシャイン+Aqoursで虹ですね…!
      人生、時に理屈抜きにして事がなされることがあって、でもそれはずっと頑張り続けてきたから生まれたものでもあって。
      そんな現実とキセキを結ぶのが「虹」なのかもしれませんね。

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