“逢田梨香子役・桜内梨子”―役がキャストを動かした「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First LoveLive!」1日目

“逢田梨香子役・桜内梨子”―役がキャストを動かした「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First LoveLive!」1日目

 この日のハイライトは「想いよひとつになれ」でした。逢田梨香子さんが階段を登り、ピアノに着席した際、ふとこんなTweetをしたのを思い出しました。

 楽器はできないと聞いたので難しいかなと思っていたのですが、やってくれました。しかも本当に弾くだなんて思わず、最初の数小節は指が動いていること自体、信じられなかったほど。でもこの時、「ああ、やっぱりこれは『ラブライブ!』のライブなんだなぁ」と思ったのです。

 

作り上げられていくおもしろさ

 ライブ会場ではほぼ逢田さんを抜いているカメラがあり、ピアノを弾いている逢田さんが都度スクリーンに映し出されていました。必死の形相で演奏している彼女を見て、サイリウムを振る手を止めて、祈るような気持ちで見つめずにはいられませんでした。1万数千人の前で弾き切ったのは見事の一言。生半可な努力ではなかったはずです。

 ピアノを演奏して「梨子の気持ちがちょっとわかった」と逢田さんは言っていましたが、こうしてキャストが自分のパートナーとの関係性を作り上げていくのを目にすることができるのが、「ラブライブ!」シリーズの醍醐味です。

 アニメと同じダンスを踊ったり、同じ衣装を着たりするのは、この関係性を作り上げていく手段なんですよね。こういうダンスをしたらこう感じる、こういう衣装を着たらこう思うだろうな、というのが、実際にやるからわかる。再現することではなく、再現を通じて役とキャストの関係性を作り上げていくことが本質なんです。

 「ラブライブ!サンシャイン!!」より前からの「ラブライブ!」ファンは、一度完成した関係性を見ていて、ともすればそれに囚われてしまった方もいたかもしれません。僕もその一人です。でも、Aqoursは0からこの関係性を作り上げようとしている。その姿を見て共有できるのが楽しい……というより、うれしいんです。

 例えば美術品でもいいし、ガンプラとかでもいいでしょう。完成されたものを見るのと、作っていくところを見るのは、面白みがまったく違います。そして、作っているところを見ると、不思議と「ちょっとやってみたい」「自分も何か作ってみようかな」と思う。参加したくなるんですよね。これが「ラブライブ!」プロジェクトの大きな柱にして魅力なのだと、改めて実感しました。

 

1年の間に見事な成長を見せた伊波杏樹さん

 とにかく驚いたのが、伊波杏樹さんの成長ぶりでした。

 ニコ生などをあまりチェックしていない僕は、ライブに向けてBlu-ray第1巻の「Aqoursスペシャル課外活動」を見ておこうと封を開けました。そこに映る伊波さんは、「とにかく自分がやってやる」という気持ちでいっぱい。力みも多分にあって、とても楽しんでいるとは言えませんでした。9人でイベントに出るのはほぼ初めてという中でしたから致し方ないものの、正直に言うと苦手な部類の役者さんだと思ったのです。そこに、高海千歌は見えませんでした。

 でも今日は違った。開幕から最後まで心底楽しんでいるように見えたからこちらも存分に楽しめましたし、その空気は周りにも充満していきました。リーダー・センターという立場の人の空気って、メンバーにも伝わっていくものですね。

 センターというポジションでこの公演をリードしつつ、でも前には出過ぎない。みんなと歩調を揃えつつ、まとめ上げていく。その姿は、まさしく千歌そのもの。このわずか1年少々での大きな成長ぶりに、心から感謝したいです。おかげさまで、とっても楽しい時間を過ごすことができました。

 1stライブが横浜アリーナというのはとても大きなプレッシャーだったと想像します。でも、いざ見ているとあの大きくて広い空間も、なんだかAqoursにちょうどいいように感じられました。きっと伊波さんをはじめ、メンバーたちが大きくなっていったからなのでしょう。

 

AqoursとAqoursの関係性を見せた1stライブ

 9人のスクールアイドルがいて、それを演じる9人のキャストがいる。先代は、我々の目の前に自分の身体を通してスクールアイドルたちを映し出してみせました。まるでキャストが媒介となって、スクールアイドルを顕現させるかのよう。僕はこれが「ラブライブ!」プロジェクトのあるべき姿だと思っていたんです。

 でもAqoursは違う。先代がスクールアイドルとキャストが隣同士になっているとしたら、Aqoursはいわば“前後”になっているように感じました。アニメなら役が前、声優が後ろという“前後”ですが、ステージではそれが逆になっているイメージ。「鈴木愛奈役・小原鞠莉」という具合に、役がキャストを動かしているような。

 これは、言ってしまえばまだ未熟だからこそ、キャストの芯の部分が役に近くなる、ということの表れなのだと推測します。でもそれは決して悪いことではなくて、未熟だからこそ素直に吸収できる。役を自分の素顔のひとつにできているんです。

 もちろん役者には九人九色、先代を含めれば十八人十八色の、役との付き合い方があります。しかし大雑把ではあるものの、これがAqoursとAqoursの中にある関係性なのだと感じました。彼女たちは、Aqoursを“中に入れている”んですね。

 

 劇中で、音ノ木坂学院を訪れたAqoursが「ありがとうございました」と一礼するシーンがあります。以前にもそっくりな場面がありましたよね。あの時は「μ’s」という文字に向かって頭を垂れていました。

 「ありがとうございました」は、お礼であると同時に、決別でもあります。象徴的だったのが、アンコールアニメの最後。Aqoursは数字を数えるのではなく、次の順番のメンバーの名前を呼び合ってバトンをわたしていき、ひとつの輪を作り上げていきました。

 先代の積み重ねたものを受け継ぎつつも、自分たちならではの役との関係性、そしてそれを投影させたステージを築き上げていく。今日はその最初の一歩でした。

 彼女たちの姿は、海辺で自分たちの目標を定め、誓いあったスクールアイドルとまったく同じ。うん、やっぱりこれは「ラブライブ!」の――いいえ、「ラブライブ!サンシャイン!!」のライブだったのです。

COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. By 拓ちゃん

    昨晩は私も娘と一緒に札幌のLVで参戦していました。
    とにかく、涙涙涙の1st Liveでありました。
    μ’sの時にはできなかった最初期からのおっかけを、Aqoursではなんだかんだとやって来れていたので、昨晩の晴れ姿を観て感動も一入でした。

    一夜明けて、ばかいぬさんの感想を読んで、また涙してしまいましたよ。
    5年以上の集大成を魅せていたμ’sからのバトンを受け取るべく、未熟ながら併走を始めたAqoursに対し、
    「μ’sではない」というただ一点で批判的な人たちも一定数いた中、Aqoursのメンバーたちは文字通り必死にこの一年を駆け抜けて、あの横浜アリーナの舞台で「Aqours」と真摯に向き合い、我々に魅せてくれました。

    ライブ中にTVシリーズでのAqours9人が集まっていく姿を振り返り、そこへ想いを圧縮して繋げた「未熟DREAMER」は卑怯(褒め言葉)の一言。
    隣の娘はアニメ本編では泣きませんでしたが、あのライブの中では人目を憚らず嗚咽を洩らし、私も涙で彼女たちの姿がぼやけてしまいました。

    そして、舞台奥に見えるピアノを前にして逢田梨香子さんが、それこそ恐いとも思える必死な形相で階段を振り返る時には、雷に打たれたかのように衝撃を覚えました。
    「想いよひとつになれ」は、あのライブで完成した─と言って過言ではないです。
    それこそばかいぬさんの仰る「作り上げられていくおもしろさ」そのものですよね。

    伊波杏樹さんについては、ライブ前日のばかいぬさんのTweetを見ていて「今は“もう”違いますよ」と内心でつぶやいていました。
    やはり大きかったのはアニメを1シリーズやり通したこと。
    そして、この1年の間、無料招待イベントのステージやニコ生、ラジオと数多くの場数を踏ませてもらうことで培った自信と自身。
    伊波さんに限りませんが、メンバー皆がファンと共に積極的に作っていったコール&レスポンスは、ファンと演者の「ルーティン」として見事に機能し、1stライブとして結実していました。
    その中でも伊波さんの成長ぶりは目を見張るもので、ライブ中にも流れた12話の「穂乃果へのメッセージ」は千歌の言葉であり、伊波さんの言葉であったのだと再認識した次第。
    伊波さんと言えば、「夜空はなんでも知ってるの?」のラスト、LVのスクリーンいっぱいに映し出された伊波さんに真っ直ぐ射抜かれたのがたまりませんでした。
    あの眼差しは舞台女優のそれでしたね。

    高槻かなこさんのラストのコメントも泣けましたが、個人的には北海道出身で親近感のある鈴木愛奈さんのコメントが胸に刺さりました。
    横浜アリーナがあこがれの場所で、大好きな「ラブライブ!」によって夢を叶えられたと感極まっている声で告げられ、これもまた「ラブライブ!」というプロジェクトが(先駆者のμ’sの功績が大であったことは疑問を差し挟む余地はありませんが)『ブランド』と『プレミア』を獲得している証左かと思います。
    その歴史をリアルタイムに目撃できることが「ラブライブ!」の魅力であり、偉大なる先達の眩い輝きに負けることなく、自分たちが強く強く輝き始めていることを、見守り応援する私達が認めることにより、これからもっともっと大きくなっていけるものと期待感でワクワクします。

    二日目はアラフィフのこの身体ではもたないんで不参加ではありますが、その分より多くの方にあの空間で歴史の目撃者となっていただきたいと願っております。

    • By ばかいぬ

      >拓ちゃんさん
      ライブビューイングでのご参加、お疲れ様でした!
      そして熱いコメントをありがとうございます。娘さんと一緒に楽しめるってすっごくステキですね!

      本当に「未熟DREAMER」は、拓ちゃんさんのお言葉を借りれば“卑怯”でしたね〜。
      ああして本編をダイジェストしてからパフォーマンスされると、破壊力が凄まじいです。
      「想いよひとつになれ」とともに、Aqoursを代表する曲になっていると思います。
      それはやっぱり「作り上げられていくおもしろさ」がドンと上乗せされてるからかな?なんて思ったり。

      いやあ、伊波杏樹さんについては「失礼しました!」と謝らなければいけませんね。
      人って悪い方に変わるのは簡単だけど、良い方に変わるのは難しくて、でもそれは美しいまでに見せてくださったのは、僕自身の経験としても(勝手ながら)大切なものになりました。謝ると同時にお礼も言いたいくらいですw 表情も含め、パフォーマンスもお見事でした。
      拓ちゃんさんのおっしゃった「ファンと共に積極的に作っていったコール&レスポンス」って、Aqoursにとってすごく大事ですよね。あれがあるから、ファンもAqoursに加わったと思えるんだなぁと実感しました。

      ああ、確かに鈴木愛奈さんの存在は、「ラブライブ!」の歴史を象徴するものですね。その視点は実に興味深いです!
      スポーツでは、「子どものころ●●選手にあこがれてプロを目指しました」という人が、プロの世界で●●選手と一緒になる、なんてことがありますが、まさにそんな感じで。ファンからすると、自分が好きになったものが連綿と続いていくさま、そしておっしゃるとおりブランド化、プレミア化した一面も見られますし、このプロジェクトが続くなかで大事な人物なのかなと改めて思いました。地元出身のスターやホープってすごくうれしいですよね!

      2日目の記事を上げてからの返信、遅くなって失礼いたしました。
      拓ちゃんさんのお言葉は、いつも色々なものに気づかせてもらっています。ありがとうございます!

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