キャラクター・ストーリー考察

ラブライブ!「Music S.T.A.R.T!!」OVA&PV感想 または「さっき話した夢」の真相と、終わらないパーティーとは

μ’s6thシングルのPV、今回はなんだか不思議な内容。今までなかったような、ファンタジックな出来事が次々に起こります。

それらも、捉えようによっては真姫の心情の表現と思えなくもないと考えていたのです。最初の檻と迫り来る8人のフードの人のところとか……当初は、そこを突き詰めていって考察を書こうと考えていました。

ところが先日、キャラクターデザイン・原案の室田雄平さんがTwitterでこのようなことを書いていらっしゃったのです。

えっ、そういうことなの!? と面食らってしまいましたが、イチから考え直しました。

ついこの間、僕の考察は制作陣の考えを当てることではないと書きましたが、こんな情報を出されては、これを前提に書かないわけにはいきません! こちらを踏まえて、この不思議な展開のOVAに迫ろうと思います。

はなよのメガネ

大きなヒントになりそうなのは、「はなよのメガネ」です。これに注目して観てみましょう。

冒頭の真姫が何かに追われているシーン → 檻に閉じ込められる → ダレカタスケテーを合図に場転 → 舞台が教室になり、真姫と花陽が夢についてやり取りをしています。ここでは、花陽は眼鏡をかけている。

ひとしきり話した後、真姫が音楽室で幼少の自分と出会うシーンを経て、屋上での練習。ここでは、花陽は眼鏡をかけていません。

これは激しく動く練習時だけかと思ったのですが、その後のみんなで帰るシーンでも彼女は眼鏡を外したままです。ということは、「繰返しの世界脱出」、つまり夢か現かの境目は、教室のシーンから練習のシーンの間あたりということになります。

となると、次のヒントはふたつ目のツイート。「っていう夢を見たのよ」というセリフを繋げる、真姫と花陽の会話がキーになりそうです。

夢を見たのよ

そもそも「っていう夢を見たのよ」という言葉は、自分が現実と認識している世界でなければ発することはできません。同じようなセリフとして、「ねぇ、今も夢の中だったらどうする?」も挙げられます。この時点でほぼ確定なのですが、あとは人間的な理由がほしいところです。場面を追っていくと、真姫のこのセリフに引っかかります。

 「さっき話した夢、確かに怖かったけど、ちょっと楽しかったかも」

普通に観ていれば「さっき話した夢」とは、何かに追われる夢だと思ってしまいます。しかし涙目になるほどの思いをしている冒頭の夢を「ちょっと楽しかった」と思うとは、なかなか考えられません。楽しそうなのはむしろこの会話以降から、PVが終わるまでの一連のシーン。

ここで室田さんのひとつ目のツイートが出てきます。「OVA、PV含めて全てが真姫ちゃんの夢の中の話だとしたら」。ここから、現実であるはずの真姫と花陽のシーンを除いた場面、つまりピアノの音が出ないところからPVの終わりまでずーっと夢という仮説が立てられます。それなら、「ちょっと楽しかった」のも頷けますね。

では「確かに怖かった」とは?

音楽室のシーン以降に出てくる幼少の真姫は、とっても素直です。みんなへの好意をきちんと表現しようとします。でもそれを当の真姫が、夢の話とはいえ、またたとえ花陽が相手といえど、「小さい私が、みんなのことがずっと好きって言おうとする夢を見た」なんてことを話すとは思えません。

おそらく、真姫は花陽に「子どもの自分が急に現れ、自分と入れ替わられて(乗っ取られて)しまう」としか話していないのではないでしょうか。それなら、花陽がひどく怖がるのも分かるというもの。

つまり “LoveLive!” のタイトルが出たところが、夢の始まり。「さっき話した夢」とは、冒頭の何かに追われている夢ではなく、音楽室で幼少の自分に会うところから(実際には花陽に話していないけれど)PVが終わるところまでじゃないかと思うのです。

夢であるように

考えてみれば、不思議な出来事が起こるのはすべてタイトル挿入の後です。ポルターガイストよろしく幼少の真姫の登場、急な雷雨、いきなり照明の変わる廊下、「大変だよ、急に夜になっちゃった!」、突如学校の裏手から上がる花火、15歳に戻る真姫……。

真姫がピアノを弾きに音楽室へ行くのは放課後です。下校後のことなので、花陽は真姫が幼少の真姫に会って入れ替わったことを知りません。このことが、練習時の「昨日は元気そうだったけど」という、休みの理由を知らない花陽のセリフにつながります。一見「昨日」は真姫と花陽が夢の話をしていたシーンのことだと思わせるようミスリードを誘っていますが、ここは何でもないただの「昨日」です。クラスメイトですから、毎日会いますよね。夢の話をしていた場面(現実)と、練習のシーン(夢)は、つながっているようでつながっていない。

また、セリフを追っていくと、今が「夢」であることが何度か肯定されています。

希「私たち、夢見てるんとちゃう?」

真姫「そうだよ」

穂乃果「本当にここは夢の中?」

真姫「うん、終わらないパーティーのね」

絵里「でもこれって、全部本当に誰かさんの夢の中なのかもしれないわね」

間があったり、倒置が入っていたりしてあまり目立たないようになっていますが、特に真姫ご本人の「そうだよ」「うん」は、相槌ではなく「今が夢である」事象の肯定として、素直に受け取るべきところなのかなと思います。

もうひとつ。現実には起こり得ないような不思議な出来事が続いていることを前述しましたが、それに対するメンバーのリアクションにも注目です。

例えば廊下の照明が急に変わった時の絵里。この時は真姫を追っていたとはいえ、辺りを見回したりすることなく、一瞬驚いた後すぐにそのまま追跡を続けています。

musicstart2

あるいは真姫が15歳に戻ったシーン。穂乃果は驚くどころか「マジックが使えるなんて、新しいアイドルの形だよ!」なんてはしゃいじゃっています。彼女に関してはこれも平常運転と言えるのですが、その直後に絵里が「びっくりしたわよ。みんな風邪じゃないかって心配してたから、余計に」と、目の前で真姫が15歳になったことよりは、なんの連絡もなく不在になった彼女が戻ってきた方に言及しています。

つまり、これらの不思議な出来事を、妙に受け入れているのですね。受け入れているのが、逆に現実っぽくない。夢の中なんじゃないかと思えるのです。

ここまでが、タイトルロゴ挿入以降が「夢」である理由です。いかがでしょう? 言われて観てみれば、確かにヒントが散りばめられていたなぁと思えるような……。

では、真姫が見ている「終わらないパーティーの夢」とは一体なんなのか? もう少し踏み込んで考えてみましょう。

終わらないパーティー

真姫と幼少の真姫は同一人物です。幼少の真姫が15歳の真姫に戻るとき、二人の間では記憶が引き継がれています。穂乃果に「さっきなんて言おうとしたの? ずっと、何を思っていたの?」と訊かれて「いや、その……。」と口ごもるのが証左です。

幼少の真姫が言っていることは、今の真姫も言っていること。二人の違いは、性格の違いです。15歳の真姫と違って、幼少の真姫は思っていることをストレートに表現できる素直な子。本心を言える真姫なのです。

本心を言える真姫が伝えようとしていたことは何だったか。そう、「ずーっと好きだったの。みんなのことが、ずーっと」ですよね。言わばこの夢のストーリーは、真姫の “大好きの表明” だったのです。

夢分析という学的技法があります。無意識の働きを把握しようとする深層心理学の技法です。精神分析学(フロイト派)と分析心理学(ユング派)に分かれていたり、フロイトのはずいぶんと性的だったりするのですが、共通して言えるのは、(とても大雑把に言いますが)夢の世界は無意識からのアプローチがあるということ。転じて、一般的には夢には意識していない願望などが現れるとされています。

前述したとおり、この夢は、真姫のμ’sに対する ”大好きの表明” です。もしかしたら本人ははっきりと自覚していないかもしれない。あるいはなんだか恥ずかしくて自覚できないかもしれない。けれど、真姫はμ’sのことがずっと前から大好きなのです。それこそ「9人になる前から、まだみんなバラバラだった頃から」。それを表せたら、感謝を伝えられたらという願望が、きっと真姫の中にあるのだと思います。

素敵な出会いありがとう

信じるチカラありがとう

勇気で明日は変わるんだね

熱いときめきありがとう

負けないキモチありがとう

元気で悲しみ救うんだね

なんといっても

 もっと知りたい? 私の想いを知りたい?(聴いてね)

ですからね! もう伝えたくて仕方がない!

そして、ただ伝えるだけではありません。もっと仲良くなりたい、ずっと仲良しでいたい、それも自分とみんながではなく、みんながみんなと。季節がめぐり、みんなの練習着が冬服に替わり、やがて別れの春が来るとしても、ずっと一緒に……そんな願いがPVの、特にパジャマパーティーのシーンに表れている気がします。今回はメンバー間の距離がかなり近いなと思いながら観ていたのですが、これも真姫の願いの表現なのではないでしょうか。

「終わらないパーティー」というのは、真姫の思いそのもの。いいえ、この「Music S.T.A.R.T!!」という曲自体が、真姫の気持ちそのもの。そしてそれを、μ’s全員で歌っています。

だってパーティー終わらない だってパーティー終わらない

まだまだみんなで 思い切り歌うよ

「パーティー」は、いわゆる「お楽しみ会」としてのパーティーであると同時に、きっと「仲間」という意味ももっているはずです。そう、仲間は終わらない。ずっと一緒。この大好きな仲間と、もっと仲良しでいられますように。ずっとみんなで歌えますように。美しいほどに真っ直ぐで純粋な真姫の「夢」が、ここにあります。

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