ラブライブ! 第8話「やりたいことは」感想 またはエリーチカが最後に取り戻したもの

ラブライブ! 第8話「やりたいことは」感想 またはエリーチカが最後に取り戻したもの

 本当に、本当にすごいアニメ。

 僕の人生のなかで、20世紀・21世紀に生きていてよかったと思えたシーンが何度かあります。最近で言えば、2009年WBC決勝戦でのイチローのタイムリーの瞬間。そしてこのラブライブ!8話「やりたいことは」を観た直後です。

 

 

「楽しいこと」を選択できない絵里

 お話は、オープンキャンパスで結果を出せなければ廃校が決定するというところから始まります。生徒会として企画を立てようとする絵里。ここで8話にして初めて生徒会メンバーが出てきます。

 

 「ラブライブ!」ってムダなものを極力削って作っているアニメだと僕は思っています。今まで生徒会メンバーが出なかったのは必要なかったから。逆に今回出たのは、生徒会のなかで絵里と対比になる存在が必要だったからです。楽しいことをアピールして入学希望者を集めようと提案する彼女らは、言わば生徒会内でのμ’sの代わりとも言えます。

 

 しかし、絵里は「楽しいこと」を選択しようとしません。

 

 もっと言うと、できないのです。1話で穂乃果、海未、ことりが学校の魅力を探しましたが、「歴史がある!」「他には?」「伝統がある!」「それは同じです」「強いて言えば……古くからあるってことかなぁ」という有様。絵里が亜里沙たちに行ったプレゼンの内容がああなってしまうのも、しかたのないことです。他に選択肢がないのですから。

 

 ただ、絵里が「楽しいこと」を選択しない理由は、もうひとつあります。

 

 

何度も経験した挫折

 幼少の頃の絵里がバレエを踊るシーンがありました。とても楽しそうに踊っていて、バレエが、踊るのが本当に好きなことが伝わってきます。

 

 しかし、オーディションの結果は不合格。しかも一度や二度ではありません。「またダメだったの?」とおばあちゃんに言われている通り、何度も落ちているようです。好きだからこそ、負けた時に悔しい。幼い絵里は、号泣し、唇を噛むほど悔しがります。

 

 ここで絵里は、「楽しいだけではダメなんだ」と知ったのではないでしょうか。楽しくやるだけでは、人は認めてくれない。小さな頃に作った価値観は、なかなか変えることはできません。ましてや、打ち込んでいたことから作られたそれならば、なおのこと。

 

 それをもう一度覆したのが、他でもない妹の亜里沙でした。

 

 

亜里沙のすなおな感想

 亜里沙の反応は実に素直です。音ノ木坂学院の歴史や伝統をメインに展開した絵里のプレゼンは「あまりおもしろくなかったわ」と言います。一方で、μ’sに対しては「私ね、μ’sのライブ観てると、胸がかぁーって熱くなるの。一生懸命で、目いっぱい楽しそうで」。

 

 しかしそれは、絵里の幼い頃の教訓とは真逆です。「全然なってないわ」。
 それでも亜里沙は言います。「でもすごく元気がもらえるんだ」。

 

 この反応を押さえた上で、練習での穂乃果たちとのやり取りを見ましょう。

 

 穂乃果からダンスを教えてほしいと請われた際、絵里は海未の「あなたに私たちのこと、そんなふうに言われたくありません」という言葉を回想しています。これは海未の、自分たちは頑張っているんだという自負です。(だからこそ、絵里の踊りを見た海未はショックを受けるのですが。)その自負を見てやろう、確かめてやろうという気はあったはずです。

 

 案の定、絵里がOKとするレベルより劣るμ’s。基礎のなさ、練習に着いていけないことに一度見限りかけるも、穂乃果の「待ってください。明日もよろしくお願いします」という言葉に、絵里は驚きます。

 

 多分、ダメになる、途中で諦めると思っていたんですね。でも違った。彼女らは予想以上の向上心を持っていました。
 もしかしたら、誰もが穂乃果のように学校存続のためとは思っていないかもしれません。花陽なら「アイドル」という存在に真摯にひたむきに向き合うことを一番としていそうだし、真姫あたりは「絵里に負けない、なめられたくない」という気持ちかもしれません。

 

 そのなかで、穂乃果はあの言葉をもう一度、絵里に言います。痛くても辛くてもなぜ続けるのか。「やりたいからです」。

 

 絵里にとって穂乃果は、μ’sのなかで一番動機が近い、というかほぼ同じ人です。自分に負けないくらいの気持ちをもちながら「やりたい」ことをやっている人の作品が、人の心を動かしていることを、絵里は目の当たりにしました。自分のプレゼンをつまらないと言ったアリサが、μ’sを観て感動している。絵里に突きつけられた、素直な気持ちです。

 

やりたいことは

 僕は、絵里は踊りたかったんじゃないかなと思います。自分の好きなバレエを、心から楽しみながら踊りたかったんじゃないかと。

 

 でも、突きつけられた結果がそれを許してくれなかった。バレエ界という厳しい世界で、しかもバレエの育ての親であるロシアという国で、絵里はそれではいけないのだということを、身をもって経験します。この時点で、絵里は「やりたいことをやりたいようにやる」という選択肢を捨てているのです。

 

 だから、絵里が希に思いの丈を叫んだシーン(ここの演技がすごく好きで、絵里が南條さんで本当によかったと感じました)。「私だって、好きなことだけやって、それだけで何とかなるんだったらそうしたいわよ!」とは、母校が廃校寸前である現状のことだけじゃなくて、「楽しい」ではダメなんだと思い知らされた幼少の頃の挫折に対しても言っていた……という気がしてなりません。

 

 だからこそ、だからこそです。

 

 絵里の激昂と対比させるように続いた、映像作品として勇気ある演出「無音の15秒間」。その後展開される、本当に本当に感動的な「僕らのLIVE 君とのLIFE」PVとの融合。そしてオープンキャンパスで同曲を披露し、本番を終えた絵里は、あの頃とまったく同じ表情をしていました。

 

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  絵里は、自分が本当にやりたかったことを、取り戻したのです。

 

 

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