ラブライブ!2期13話「叶え!みんなの夢――」感想 みんなの夢のその先へ

 なんだか、とても『ラブライブ!』らしい終わり方だったと思います。しんみりさせるのは前半までで、その後は泣けて笑えて、グッときて……最後はやっぱり “みんな一緒に” 。実にうまいことランディングさせたなあと感じました。

 最終話は、始まりと同じ構図をなぞりながら、過去と軌跡を振り返る今を描いていました。

 

救われた絵里

 「私、高坂穂乃果」から始まる自己紹介。思い切りジャンプする姿。1期1話を彷彿とさせる序盤です。しかし、あの時は単純に「高校2年」と名乗っていたのが、今や「音ノ木坂学院の生徒会長」となっています。

 この直前にも、穂乃果の成長が垣間見えるシーンがありました。新しい制服姿の雪穂と亜里沙のことを一度はスルーするものの、その後きちんと戻ってきて声をかけています。気づかずにルンルン気分のまま行ってしまう方がむしろ「穂乃果らしい」ところではありましたが、その「らしさ」から脱して、ちゃんと浮かれている中にも周りが見えていることを印象づけてくれます。2期1話にもありましたが、周りにも気を配れるようになっている、穂乃果の成長が伺える一幕です。

 そして、穂乃果の成長を、まるで親子のように見守る先輩がふたり。「大きくなったわね」と口にする、絵里と希です。

 卒業式の日に、ひとり生徒会室にたたずむ絵里。これまでの高校生活を思い出しながら、もしかすると彼女は、μ’sに入る前の自分は今の自分より劣っていたように考えていたかもしれません。劣っていたと言うと語弊がありますが、何かもったいないように感じていたのではないでしょうか。

 確かに、絵里はμ’sに入って変わりました。角が取れて、柔らかい表情やくだけたリアクションをするようになりました。「かしこくない」なんて茶化されたりもしますが、周囲と打ち解けて、実にのびのびと過ごしています。

 そんな今の自分から見て、μ’sに入る前の自分は、何でもひとりでこなしているようでいて、実際は気づきもしなかった足りない部分――例えば柔らかい発想であったり、チームとして協力することだったり――があった。そして、そこを誰かがカバーしてくれていたということに気づいた。「何かに追われているような感じで、全然余裕がなくて、意地ばかり張って」過ごした2年と少し。絵里は最後の生徒会室で、もっと早く変わることができていたら、と思っていたかもしれません。

 そんな絵里の過去を、穂乃果は肯定します。

 生徒会室にいる絵里と、屋上にいる絵里。もちろんμ’s加入当初はまだ生徒会長だったわけですが、大別すれば、前者は余裕がなくて意地っ張りな絵里、後者は角が取れて丸くなった絵里です(面白いことに、μ’s加入以降、生徒会長として生徒会室の椅子に座っていたのは、μ’sの活動が止まっていた1期13話アバンだけなんですね)。

 穂乃果は “生徒会室にいる絵里” が残していったものを見て、「絵里ちゃんがこの学校を愛していること」「みんなを大事に思っていること」を感じたし、だからこそ「私は生徒会長を続けてこられた」と言います。余裕がなくて意地っ張りな絵里がいたからこそ、高坂穂乃果は生徒会長として存在することができる。μ’sに入る前の絵里だって、学校を愛していたこと、生徒みんなのことを大切にしていたことを、穂乃果は対立していたあの時から感じていたし、今でも忘れていない。そしてその「想い」を継承しようとしています。

 間違っていたのかなと思っていた自分が全肯定された。最後の最後に絵里は、きっと救われた気持ちになったのではないでしょうか。

 

歌の本質

 その穂乃果、これまでも折にふれて「歌が大好き」ということを口にしてきました。今回も然りで、送辞でこのことを述べています。
 個人的には、このことがちょっと意外というか、言われるたびに「そうだった」と思い出すことなんです。普段から穂乃果は、そこまで歌が好きであることをアピールしませんよね。

 思うに、穂乃果は「歌が大好き」だけれど、「歌しかない」わけじゃないのです。

 彼女は目標を決めたら一直線にはなるけれど、ひとつのことに固執する人ではありません。いいと思うことは何でもやってみるし、楽しいことは何でも心から楽しみます。物事の本質を捉え、本質を楽しむのが本当に上手な子です。だから、「歌が大好き」だけれど、「私には歌しかない」とはならないのですね。

 この柔軟さは、卒業式の送辞という硬い “ステージ” でも発揮されました。形式や場にとらわれないからこそ、送辞という場で、みんなで歌を歌うというエモーショナルな演出ができ、しかもそれにみんなを巻き込むことができる。これも、

「歌は気持ちを素直に伝えられます。歌うことで、みんなと同じ気持ちになれます。歌うことで、心が通じ合えます。私は、そんな歌が好きです。歌うことが大好きです」

 という言葉のとおり、歌の本質を捉えているからできることです。

 3年生への、「みんな」からのステキなプレゼント。いつも「みんな」と一緒にいる穂乃果だからこそ、贈ることのできたプレゼントです。

 

たくさんの仲間

 さて、μ’sとして過ごした数ヶ月で変わっていったのは、絵里や穂乃果だけではありません。卒業式の後、にこにも変化が見えた場面がありました。

 たったひとりでアイドル研究部を続けてきたにこ。3年生になってようやくμ’sという仲間を得ましたが、そのμ’sも、彼女にとってはアイドルでいるための場であった……という部分は小さくありません。何せ2期4話というタイミングでようやく、にこの目標が「私がスーパーアイドルになる」ことから「μ’sのみんなでスーパーアイドルになる」ことへと変わったほど。

 そのにこが「できるわよ、あなたなら。こんなにたくさん助けてくれる仲間がいるんだから」と花陽に言う。人に言えるということは、自分でもしっかりと理解しているということです。仲間がいたから、自分はこれだけ輝くことができたと、今のにこはちゃんとわかっています。

 大事なのは、この「こんなにたくさん助けてくれる仲間がいる」場所が、μ’sではなくアイドル研究部であるということ。今後はμ’sではなくなり、ただのアイドル研究部になります。にこがひとりで守ってきたアイドル研究部、それが卒業する今になって6人もいる。リーダーがいて、部長がいて、副部長まで決まった。そう考えると、「賑やかな部にしといてよね」というにこの言葉も、より気持ちのこもったものに感じられます。にこが浮かばれた瞬間です。

 

それでいいんだよ

 その仲間とともに過ごした場所を、μ’sはひとつひとつ回っていきます。「最初に9人で歌った時も、こんな青空だった」と思い返すそれは、μ’sの思い出です。消えゆくμ’sの、これ以上重なることのない思い出。

 でも、穂乃果は「それでいいんだよ」と言います。

 学校を愛する思いは、絵里から穂乃果に受け継がれました。アイドルへの熱い情熱は、にこから花陽に継承されていきます。きっとこれらは、この先も代々受け継がれていくものでしょう。でも、μ’sという存在と、その中でともに過ごした日々の思い出は、ここで終わり。ここで終わりにすることで、この特別な9人の中で特別な思い出として残り続ける。だから、思い出あふれる屋上に描かれた「μ’s」の文字も、「μ’s」そのものも、「(消えて)いいんだよ」となるのです。

 消えるものは終わる。でも終わってしまえば、それはもう変わることはありません。変わることがないということは、それは永遠です。消えるからこそ、彼女たちの思い出は永遠に残り続けるのです。

 

 μ’sとして駆け抜けてきた彼女たちの青春は、ここにひとつの “完成” を迎えます。卒業式の理事長の挨拶で語られた学校存続。部室に飾られた深紅の優勝旗。そして、学校を回る中で思い起こした、μ’sのみんなとのかけがえのない時間。今回のお話は、この「今」を全力で過ごした軌跡と結果をひとつひとつなぞるように描かれています。

 μ’sはμ’sとして、やりたいこと、やれることをやり切りました。「やり遂げようね、最後まで」の言葉から始まったこの青春が生んだひとつひとつの結果を振り返って、穂乃果はやり切ったことを確信しました。ゆえに、穂乃果は堂々と過去の自分に「やり遂げたよ、最後まで!」と言うことができた。この言葉をもって、μ’sの青春は “完成” しました。「私たちの夢」が叶ったのです。

 だからこそ、次は一体何を見せてくれるのか、楽しみで仕方がありません。

 たった3人だけで『ススメ→トゥモロウ』を踊ったあの誰もいなかった道で、今度はファンも仲間も交えてμ’sは歌い、踊ります。『ススメ→トゥモロウ』が物語の始まりだったように、きっとこの『Happy maker!』も、新たな物語の始まりを告げる歌となるのでしょう。シンプルな歌詞とポップな曲調で明るい応援ソングとなっているこの曲では、μ’sだけでなく、周りの人たち「みんな」がポンポンを持っています。『がんばってがんばってその先へ ステキなことが起こるよ』という歌詞は、μ’sから僕らへ、そして僕らからμ’sへも贈られる言葉。一方が「想い」を届け、届けられた者が応援という形で「想い」を返す。この関係の中で互いが成長し、ともに進んでていくという、『ラブライブ!』そのものを表すかのような歌とPVです。この曲をもって、μ’sと僕ら「みんな」は、一緒に新しい夢へと駆け出します。

 「私たちの夢」を叶えたμ’sが、今度は「みんなの夢」を叶えにいく。その先にある景色がどんなものなのか、僕には想像もつきません。でも、「みんな続けー!」の号令とともに走り出せば、きっと彼女たちは僕らを “人生のピーク” に何度も連れて行ってくれることでしょう!

 「さぁ行こう! 私たちと一緒に、見たことのない場所へ! 見たことのないステージへ!」

 

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