ラブライブ!2期8話「私の望み」感想 女神にラブソングを

ラブライブ!2期8話「私の望み」感想 女神にラブソングを

 ああ、なんていじらしい。なんて愛おしい。希の本音が聞けるのだろうと思って、期待と、どこからか来る怖さのようなものを抱えながら迎えた8話。観終えた頃には、ただただ希のことが愛らしく感じるばかりでした。

 この中で幾ばくかの冷静さを携えながら書くのは難しいことですが、いつもどおりいきましょう。今回の前半は、改めて“希らしさ”というものが表れていました。すなわち、チームのバランスを最優先する希の姿です。

 

「例えばやけど、このメンバーでラブソングを歌ってみたらどうやろか」

 希がこんなにはっきりと、具体的な提案をしたのは初めてかもしれません。いつも他のメンバーの裏付けになったり、誤った道を行きかけている時にヒントを見せたりする言動の多い希。この場面でのラブソングという彼女の提案に、絵里も驚いたようです。

 これを逃すまいとばかりに、絵里はラブソングを推します。希の希望を叶えんと、劣勢の中でも諦めない絵里。無理もありません。希がこんなことを言うのは初めてなのですから。もしかしたら絵里は、自分の本心を引っ張り出したあの時の希に、今度は絵里自身がなろうとしていたのかもしれません。

 しかし、如何せん絵里は希ほど器用ではありませんでした。最終予選まであとわずかという状況も重なり、なかなか事をうまく運べず、メンバーの説得もままなりません。しまいには希自身が新曲制作を引っ込めてしまいます。

 東條希という子は、不思議な子です。「やりたいことをやる」ということがテーマである、この『ラブライブ!』という作品の中で、ひとり「やりたいこと」をずっと見せずにいました。「μ’sがμ’sであること」がそれだという説明もできそうではありますが、言ってしまえばそれは現状維持です。未来ではないのですね。希はこの物語のテーマが生み出す流れに、流されずにいました。

 こうやって自分を殺し、チームを優先して働ける存在はチームを助けます。新曲制作を引っ込めたのも、μ’sが袋小路に迷い込まないため。「ええんや、一番大切なのは、μ’sやろ」という言葉は、彼女のスタンスをよく表しています。

 しかし、そんな希の中にもあったのです。やりたいことが。

 

 

「9人みんなで曲を作りたいって」

 頑なにしゃべろうとしない希の代わりに、絵里が希の「やりたいこと」を打ち明けます。

「一人ひとりの言葉をつむいで、思いをつむいで、本当に全員で作り上げた曲、そんな曲を作りたい。そんな曲でラブライブに出たい。それが希の夢だったの。」

 だから、ラブソングを提案した。希は夢なんて大それたものじゃないと言いながら、観念したかのようにとつとつと話し始めます。「ウチにとって、この9人は奇跡だったから」と表現する希。「奇跡」の理由は、その過去にありました。小さな頃から、親の都合で転校を繰り返していた希には、友達も、分かり合える相手もいなかったのです。ようやく腰を落ち着けた音ノ木坂学院で出会った9人、その中で一番最初に逢着した絵里のことを、希はこう表現します。

「初めて出会った。自分を大切にするあまり、周りと距離を置いて、みんなとうまく溶け込めない。ズルができない、まるで、自分と同じような人に。」

 自分を偽って、周りの子たちと適度な距離を保ちながら関係を築くという選択肢もあったでしょう。特に女の子の間では。しかしそれとは裏腹に、当時の絵里は「私に近寄るな」と言わんばかりの雰囲気を発していました。自分を崩してまで、周りと関係をもとうとは思わない。その意味で「自分を大切に」していたのです。

 では希はどうか? 彼女は、その場だけのような、インスタントな友人関係を望んではいなかったのではないでしょうか。

 学校にいて、友達を作りたいと思うのは自然なこと。しかし希の場合、多少仲良くなったところで、また親の転勤が決まれば別れることになる。満足に思い出も作れないまま、自分だけが離れていく。結んだつながりが、別れという形になって自分を傷つける。だったら、中途半端につながりを作るより、いっそそんな関係をもたない方がいい。自分を守るあまり、希の周りにある壁は高くなっていきました。

 ところが、進学した音ノ木坂で、この壁を自ら壊してでも近づきたい人が現れた。絢瀬絵里その人です。

 

 

「ウチ、東條希」

 もしかすると、初めて自分から友達になりたいと思った人、初めて自分から声をかけた相手なのかもしれません。「私……」と言いよどんだ後、希は絵里に向かって「ウチ、東條希」と名乗ります。馴染みやすくやわらかなエセ関西弁は、転校ばかりで友達の作り方もままならない希の、奥の手。自ら仮面をかぶることで、相手が受け容れやすいように変わる。そうしてまで、絵里に近づきたかったのです。

 絵里が独りであることを、希はわかっていました。何せ「自分と同じ」なのですから。だから声をかけたのです。それは施しなどではありません。初めて会った、自分と同じような人。そんな人への興味、仲間意識、同類への渇望……諸々の感情をひっくるめての「友達になりたい」だったのだと思います。

 

 子どもにとって、学校というのは自分の世界の大半を占める場所です。そこに友達という分かり合える存在がいないのは、この世界に独りでいるようなもの。なおかつ、隠された鍵でドアを開け、ラップにくるまれた夕食を食べる希は、家でも独りの時間が長かったはず。

 

 誰ともつながれない寂しさを、希は知っていました。

 

 だからこそ、みんなをつなげたかった。「熱い思いはあるけど、どうやってつながっていいかわからない」子たちを放っておけなかった。唐突に現れた「μ’s」という存在は、彼女にとって渡りに舟だったでしょう。このμ’sを真ん中に置いて、9人が集まるきっかけを作り続けた。つながりの場であるμ’sを守り続けた。「必ず形にしたかった」のは、独りの寂しさを誰よりも知っていたから。「9人で何かを残したかった」のは、誰かがそばにいる証を創りたかったから。

 みんなと一緒に、何かを成し遂げる。歌という形に残らなくても、希は充分に実感していました。それは、小さい頃からずーっと夢だったこと。だからカップに映る幼い希は、今の希に向かって微笑んだのです。

 

 希の胸の内を聞き、一転、ラブソングを作ることにした真姫。彼女は唯一“異変”に気づき、希と絵里を追ってきた存在。思い返せば真姫は、海での合宿で希や絵里の力を借りながら、自らの殻を破ったのでした。

 

 

「本当にそっくりやな」

 1期10話を思い出してみてください。仲良くなりたいのに素直になれず、ついひとりでいてしまう真姫に、希はあれやこれやとちょっかいを出します。ひとりで買い出しに出ようとする真姫をつかまえた希は道中、真姫にこんな言葉をかけます。

「ほっとけないのよ、よく知ってるから。あなたに似たタイプ」

 僕はこれ、ずっと絵里のことだと思っていました。でも今思えば、これは希自身のことだったのではないでしょうか。そう考えると、この会話もなんだかしっくり来るのです。「本当はみんなと仲良くしたいのに、なかなか素直になれない」「私は普通にしているだけで」「そうそう、そうやって素直になれないんよね」

 みんなで寝るシーンでも同様です。目をつむってはいるものの起きていた真姫に、希は「本当にそっくりやな」と言います。昔の自分とそっくりやなと。その気がないなら寝ればいいものを、何か混ざりたくて起きている。でも自分からは混ざることができない。そんな経験が、希にもあったのかもしれません。だから、こういう時にこういう素直になれない子がどうしてほしいのか、彼女はよく理解しています。真姫を無理やり枕投げに巻き込んだのは、このためです。

 

 翌朝、朝日が昇る海辺で希に出会った真姫は、彼女の本心を垣間見ます。

「ウチな、μ’sのメンバーのことが大好きなん。ウチはμ’sの誰にも欠けてほしくないの。確かに、μ’sを作ったのは穂乃果ちゃんたちだけど、ウチもずっと見てきた。何かあるごとに、アドバイスもしてきたつもり。それだけ、思い入れがある。」

 絵里以外のメンバーで、真姫だけは希の本心を知っていたわけです。だから今回も、希が思いを抱え、絵里がそれを守ろうとしていたことに気づいた。同時にあの合宿で、真姫は2人が自分にしてくれたこと、ずっとそばにいてくれたことをわかっていたはずです。そんな相手を、真姫はこう呼びます。

 

「友達、なんだから」

 

「友達、なんやから」

 

 初めてできた、8人のかけがえのない友達。ベッドサイドに写真を飾るくらい嬉しかった。写真を飾るのも、9人で曲を作ろうとしたのも、大事な、本当に大事なものを大切に思っている証。

 自分を封じ、こんなにもμ’sを大切にしてきた希に対して、今度はμ’sが、現実的な勝利ではなくひとりの思いを優先しました。この先の人生でずっと、見るたびに、聴くたびに、この奇跡のような時間を思い出す曲をみんなで作る。これは、μ’sからμ’sを創ってくれた女神様へのクリスマスプレゼント。そんなμ’sに、女神様が返す思いは。

 

 そう、「好き」です。

 

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