ラブライブ!2期7話「なんとかしなきゃ!」感想 またはもう一度語られた“等身大の自分”

 「等身大の私たちでいいんだ!」というお話をやったあとに、等身大を行き過ぎた子2人が必死こいて等身大に戻るお話です。……あれ、違う?

 流れとしては、花陽を巻き込んだ穂乃果ダイエット作戦で海未との関係を描き、そこから生徒会に接続してことりを入れて、2年生3人のつながりを改めて描いた回と言えるでしょう。

 この中で流れが変わったのは、ことりの書類処理ミスのところです。ここを中心に、前後に視野を広げながら見ていきましょう。

 

海未の歩いてきた“道”

 書類処理ミスの前後で一番様子が変わったのは、海未です。ダイエット中、なかなか自制できない穂乃果にうるさいくらいガミガミ怒っていたのが、途端にしおれてしまいました。

 風華チルヲ先生への寄稿、あるいは自分のアニメ1期考察同人誌でも書いたのですが、海未は“道”をたどることを是とする人です。日本舞踊のほかに、剣道、弓道をたしなむ海未。彼女は、芸道・武道に通じる“道”をたどり、歩んできました。芸道・武道には、先人の残した、正しいとされる「道」があります。幼いころからこの“道”という教えを守ってきた海未。彼女の甘えを許さぬ“正しさ”は、ここから来ています。

 ということは、ここから外れてしまえば“間違い”になるわけです。

 ことりのミスによって、生徒会は3人とも、過ちを犯した側に回りました。海未にとってみれば、“道”から外れたことになります。これでは、強く出られないのは必定。しかも相手が憤慨しているとなれば、なおさら萎縮してしまう海未です。

 では、自分が正しいと強く出られるのか? それもまた違うのです。左右に揺さぶってしまっていますが、ご容赦ください。ここからがこの3人のすごいところ。彼女たちは、お互いのお互いに対する役割をわかっているのです。

 

役割の把握

 遅くまで学校に残り、予算案を作成する穂乃果たち3人。バリバリと仕事を片付ける穂乃果を見て、やればできるのにと言う海未は、続けてこう口にします。

「ま、それができたら、私がやることがなくなってしまいますけどね」

 生徒会の仕事に限らず、一度やると決めたら、そのパワーをもってして一気に突き進むのが穂乃果です。しかし如何せん彼女は、緩い時はとことん緩い! この回の前半がまさに。そんな時にキツく言えるのは、ストイックに生きている海未だけなのです。このセリフは、そうやってキツく言ったり、キツく言いつつもフォローしたりといったことが「私がやること」=自分の役割だと認識している証左です。

 そう、必要な時に「鬼軍曹」になれるのは、海未だけなんです。

 同時に、穂乃果に対することりの役割も、海未は理解しているでしょう。すなわち自分はムチで、ことりがアメ。だから海未は、穂乃果がダイエット中に「ことりからお菓子をもらっていた」ことを知っても、ことりのことは責めませんでした。また、ことりも同じことを理解しています。だから「穂乃果ちゃんのこと、キライなのかな?」と凛が言った時も、「ううん、大好きだよ」と答えられる。好きな子は全肯定する凛には、なかなか理解しづらい感覚かもしれませんね。

 海未とことりは、自分の役割を対象化できていると思います。では穂乃果はどうか? この3人の中にいる時、彼女が自分の役割を対象化するというのは、ちょっと考えにくいです。ただ、穂乃果のうまいところは、他の2人の役割に遠慮なく甘えることができているところ。しかも意識的でない分、甘えられる方は素直に受け止められますよね。そして甘えるということは、2人の役割を尊重していることにもなります。こうして3人は、絶妙かつ上質なトライアングルを保っているのです。

 では穂乃果はしてもらっているだけかというと、もちろんそうではありません。彼女にしかできない役割があります。

 

等身大の自分を

 予算会議は、生徒会をなかば糾弾するような雰囲気で始まりました。

 何かを言いかけた穂乃果は言葉をさえぎられ、「美術部の件」についての説明を求められます。場の雰囲気にすっかり気圧される海未とことり。この中で陣頭に立ったのは、生徒会長である穂乃果でした。

「ない袖は振れません!」

 思わぬ一言で空気が変わった瞬間、穂乃果はイニシアティブを握ります。

「美術部の予算の件に関しては、完全に生徒会のミスです。承認の書類箱に間違って入れたものに、判を押してしまったもので、弁解の仕様もありません。ですが、予算会議前に承認することは、やっぱりあってはならないと思います。ですので、謝罪とともに、取り消しをお願いしたいと思います。」

「音ノ木坂学院は、今年廃校を免れた状態です。生徒の数も、去年に比べて少ないのが現状です。そこで、勝手ながら、生徒会で予算案を作成させていただきました。」

「この予算案であれば、各部の今年度の活動に支障はきたさないと考えます。来年度、生徒が増えることを信じ、今年はこれでご理解いただければと思います。」

 長く引用しましたが、理想的なクレーム処理ですよね。非を認め、もう一度正しい方向に全体の舵を切り直し、状況を鑑みながら次善案を出し、責任を取った。生徒会長の就任挨拶で台本を覚えられなかった穂乃果が、まさかこの言葉を考えてきたなどということはないでしょう。この場で適切に、かつ堂々と言ってみせました。

 穂乃果が考えていたのは、いかにもう一度正しい道に戻るか。結局、等身大の自分が一番なのです。前回に続いて、このことが語られたとも理解できるでしょう。

 自分の非を認め、言い繕うことなく、等身大の自分をさらけ出せる。加えて、非があった自分なりにやるべきことをやる……つまり、“道”から外れて立ち往生してしまった時に、もう一度“道”に戻すことができる。これこそが穂乃果の強さ。この3人の中で穂乃果ができること、穂乃果の役割なのです。

 お互いの良いところも悪いところも、やってしまったミスもうまくいったことも、全部3人で分かち合ってきたからこその信頼関係。こうして成長しあってきた3人は、もしかしたら1年生の密かな目標になっているのかもしれませんね。

 

ひとつ目の“卒業”

 ところで、劇中で穂乃果たちは「私たちでなんとかしなきゃ、ダメなんじゃないかな」と、先代生徒会長・副会長のフォローを断ります。帰り道、生徒会室を見やって気にする絵里に、「帰り、パフェでも食べてこうか」と声をかける希。なんだか、子離れできないお父さんと、それを促すお母さんのようです。

 穂乃果たちが独力で問題を解決したのち、今度は絵里が希に同じ言葉をかけます。「今日もパフェ、食べに行く?」

 2人に訪れた、ひとつ目の“卒業”です。放課後も生徒会の仕事に時間を費やしていた絵里と希に、学校帰りにパフェを食べに行く時間ができた。生徒会を卒業し、普通の学院生になった瞬間です。それは同時に、今までがんばってきたことの終わり、生徒会というつながりの終わりでもあります。

 アンニュイな表情を見せていた希は次回、何を語るのでしょうか。

 

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