眼鏡をかけた可愛い系ミステリアス着物女子になんて勝てない―「眼鏡橋華子の見立て」

眼鏡をかけた可愛い系ミステリアス着物女子になんて勝てない―「眼鏡橋華子の見立て」

「キレイなお姉さんは好きですか?」という質問に、NOと答える人なんてそうそういません。だから、眼鏡を愛用してもいないのに表紙の眼鏡美人にキュンときて買ってしまう。そう、これは仕方のないことなんです。

でも、それは正しい選択でした。冒頭の写真にピンときた人は、ぜひ“ジャケ買い”してください。

人間にとっての「眼鏡」

表紙で眼鏡を差し出している麗しき女性は、眼鏡橋華子。銀座にある眼鏡店「眼鏡画廊」の若き店主です。

オーナーに代わって店を預かっている立場ですが、眼鏡の知識、そして眼鏡への愛は相当なもの。普段はとても落ち着いた性格ではあるものの、眼鏡のことになると頬を赤くして熱弁し、時には欲情さえもしてしまいます。

「眼鏡橋華子の見立て」P31より

メガネは視力矯正器具であり、また直接顔に触れる数少ない装飾具でもあります。ゆえに、眼鏡はその人の印象を変え、そして人生そのものまで変えることがある。この漫画では、ふらりと眼鏡画廊に立ち寄った人、縁あって華子のもとに来た人、老若男女さまざまな人々が、華子の「見立て」で人生を変え、眼鏡画廊から帰っていきます。

華子はただ眼鏡を愛するがゆえに、目の前の人に最高の眼鏡を手渡し続けているのですが、結果的にそれが悩める人に寄り添い、その視界をより鮮明にすることにつながっています。訪れた客にふさわしい眼鏡を紹介しているだけかもしれませんが、人間にとって目はとても大事なもの。何しろ、人が受信する情報の7割は視覚からと言うほどです。視界がクリアになれば、感じるものも当然変わる。そしてその変わるものの中には、鏡に映る自分自身も含まれているのです。

他人から見た自分も、自分から見た何かも変化する。それが眼鏡なのですね。

華子を彩るもう一人の主人公

華子の姿を追うもう一人の主人公、雑誌編集者の川原夏樹。芸能誌から趣味・文化誌に転属されたばかりの彼は、取材で訪れた眼鏡画廊で華子に出会います。

川原は物事をクールに見る、猫っぽい男性です。しかし眼鏡以外のことでは多くを語らない華子に振り回されたり、編集長にしばしボツを喰らったりと、異動直後の川原の仕事は決して順風満帆ではないながらも、素直な一面をちょくちょく垣間見せます。

「眼鏡橋華子の見立て」P37より

「フツーにボツでしょ」と編集長に突っぱねられながらも、「わかんないんで助けてください ここのフツー教えてもらえますか?」と(クールな顔で)先輩にお願いしたり。それでいて、他の編集者に華子を追うなと言い、ネタを渡さないプライドも持ち合わせています。男の読者から見ても嫌気のない人物で、むしろ応援したくなるほど。得体の知れないものに首を突っ込みたがるのも猫っぽくてかわいらしいですね。

この手の物語は、主人公だけ魅力的でもおもしろくありません。そのすぐ隣にいるキャラクターのパーソナリティと、絶妙な関係性が肝です。その点、川原は「眼鏡橋華子の見立て」の中で、良い塩梅で華子と読者をつなぐ重要な役割を全うしています。読者が自身を投影する先のひとつとなり、華子の可愛らしくもミステリアスな魅力を存分に引き出しているのですね。

「眼鏡橋華子の見立て」P164より

眼鏡は人の生活に十分に溶け込んでいる器具ですが、漫画となるとニッチな分野かもしれません。しかし、何かが「見える」「見えない」ということにはドラマがあります。物理的に「見える」ようになるからこそ生まれるメンタリティもある。より自分が引き立つように「見える」メガネを手に入れて、初めて目にする自分がいる。このわずか数十グラムの器具から生まれる人の感情を、「眼鏡橋華子の見立て」は的確に捉え、実に緻密に描いているのです。

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