なぜPは凛をスカウトし続け、凛はそれに応じたのか―アイドルマスターシンデレラガールズ第1話 感想

なぜPは凛をスカウトし続け、凛はそれに応じたのか―アイドルマスターシンデレラガールズ第1話 感想

 満を持して始まった、「シンデレラガールズ」アニメ。何を隠そう、「ラブライブ!」にハマる前は僕も守備力に数値を振ってしまうような、しがないPだったのです。パッションで、がんばって招待美希を20人集めていたなぁ……。

 アニメがまたおもしろい。アニマスも非常に素直に見られるアニメでしたが、アニデレのほうも同じ雰囲気をまとっていますね。

 そしてほうぼうで話題のプロデューサー。確かにこれは、アイドル以上に愛される存在かもしれません。彼の魅力はまた後述するとして、脚本を見てみると、かの髙橋龍也さんではありませんか!

 あの武内Pと髙橋龍也さん、僕の中では「藤田浩之」という一人の男の存在でつながっています。そちらも含めて感想を書いていきましょう。なぜプロデューサーは凛をスカウトし続けたか、なぜ凛はアイドルをやってみようと思ったのか。

 

Pが凛をスカウトし続ける理由

 島村卯月にプロデューサーが名刺を差し出したとき、11時51分をさす時計から、「調整中」の張り紙がはがれ落ちます。シンデレラとしての時間が流れ始めた瞬間です。

 シンデレラオーディションの合格者に3人の欠員が発生し、繰り上げ合格者として卯月は選ばれました。ずっとアイドルになりたかった卯月は、突然の吉報に喜びを爆発させ、一も二もなく受諾します。しかし、残り2名が決まるまでは部署に配属することはできず、卯月は待機することに。

 その後、プロデューサーは渋谷凛と出会い、彼女をスカウトしようとするのですが、けんもほろろで取り付く島もありません。断られては通い、断られては通い、ついには不審者として危うく捕まりそうになります。

 その間、養成所でレッスンに励む卯月のところにもプロデューサーは顔を出しているのですが、そのたびに彼はハッとしたような顔をしているのですね。自分の言うとおり、期待を込めてレッスンをがんばっている卯月の姿を見て、報いようとする気持ちもあったのではないかと思います。プロデューサーは寡黙ではありますが、決して無表情、無感情ではないのです。困るとすぐに首もとに手を運ぶのもチャームポイント。

 ただ、これだけでは凛のもとに通う動機としてはやや弱い。ここからは仮説になりますが、プロデューサーの動機のヒントがアバンに隠されているのではないかと思うのです。

 

「いえ、今はまだ」

 ライブ会場。慌ただしく準備を進めるスタッフと、開演に備えるシンデレラたち。彼女たちのステージが始まる直前に映し出されたのは、ぶつかり合った拍子にガラスの靴を落としてしまう3人の少女と、それを拾い上げる1人男性。

 はっきりとは描写されていませんが、3人の少女は、養成所からの助っ人か、スタッフとして働く卯月、花屋として会場を飾るためにやってきた凛、そして開演に遅れそうな観客としてやってきた本田未央ではないでしょうか。もちろん、ガラスの靴を拾う“王子様”はプロデューサーです。

 

 ここでもしプロデューサーが、3人の笑顔に出会っているとしたら――。

 

 「私の何を見て、アイドルになれって言ってるわけ?」と凛に問われたプロデューサーは、「笑顔です」と答えます。「あたし、アンタの前で笑ったことあったっけ?」とさらに問われると「いえ、今はまだ」と返しています。

 「これから」の確証がない中で、「今は」と添えるほど、彼は自信家には見えません。「今はまだ。でも、以前に見かけたことが」というほうが、本心である可能性があるのではないでしょうか。

 見返してみると、ハチ公前で凛を見かけた際、プロデューサーはこれまたハッとした表情をしています。警察から解放されたあとには、すぐさまスカウトをしている。泣きじゃくる子どもと怒る警察官を前に困り顔で立っている女子高生を初めて見て、果たしてアイドルにスカウトしようと思うでしょうか。

 そう考えると、プロデューサーは凛の笑顔をあのアバンのシーンで見たことがあるのではと思えるのです。その上で彼はこう訊いています。「、あなたは楽しいですか?」「あなたは、夢中になれる何かを、心を動かされる何かを持っているんだろうかと、気になったものですから」

 プロデューサーは、凛の笑顔をもう一度見たい、ステージの上でその笑顔を輝かせてほしいと思ったのではないでしょうか。今、夢中になれる何かがないのなら、それがある世界に立たせてあげたいと考えた。だから何度断られても諦めずに、凛をスカウトし続けたのではないかと思うのです。

 

凛の心に一番響いたモノ

 結局、凛はスカウトを受けることになるわけですが、この変心の要因には、期待と希望に満ちた顔で花を買いに来て、公園で夢を語った卯月の存在がありました。

 公園のシーンでは、似ても似つかない2人のコントラストが映えます。夢へ向かって足を踏みだそうとしている、つまり夢中になっている卯月と、「夢中になれる何か」がない凛。凛は卯月にその理由を問います。「卯月はどうしてアイドルになりたいの?」なぜ、アイドルに夢中なの?

 「綺麗な衣装を着れて、キラキラしたステージに立ってて、お姫様みたいで、あんな風になれたらいいなって」という卯月の回答は、イマイチ要領を得ません。自分でもわかっている卯月はしかし「でも、夢なんです」とまとめます。

 16やそこらの女の子がみんな、自分の夢とそうなりたい理由をスラスラと口にできるかというと、そうではないでしょう。ましてや卯月は、底まで器用じゃない。でも、だからこそ彼女は一途です。レッスンを一生懸命がんばって、オーディションを受け続けて、いつか訪れるシンデレラになれる日を待っていた。

 そこに現れたのが、プロデューサーという存在。この場面、日陰のベンチから桜が舞い落ちる日向へと卯月が出て行ったのはこれを表す演出でしょう。プロデューサーが、卯月を日の当たる場所へと導こうとしてくれています。

 少し話を脱線させます。このブログらしく「ラブライブ!」を引き合いに出しますが、“アイドル”と“スクールアイドル”の決定的な違いは、プロのアイドルは努力とやる気だけでなれるとは限らないということです。めぐり合わせや、ご縁というものが多分に物を言います。だから卯月の言うような、「ずっと待って」いるということが通じるのです。チャンスとタイミングを「待って」、ひとたびそれが来たら逃さない。そんな世界だと考えています。

 「プロデューサーさんは私を見つけてくれたから、私は、きっとこれから夢を叶えるんだなって」。夢に向かって歩き出し、今まさに叶えんとする人間の輝く姿に、思わず見とれてしまう凛。

 本当は凛自身も、「夢中になれる何か」を探していたのです。入部する部活に悩んだり、ファッション雑誌を手に取ってみたり。でも、一番彼女の心に響いたのは、プロデューサーという人の手によって今までとは違う世界に踏み出そうとしている女の子の、輝かしい“笑顔”だったのです。

 

「藤田浩之」とプロデューサー

 最後に余談を少し。

 本作の脚本は髙橋龍也氏が務めています。髙橋氏はLEAF出身で、アニマスをはじめさまざまな作品に関わっていらっしゃるのですが、その昔、「To Heart」という恋愛ゲームを作られています。

 髙橋氏はゲーム版「To Heart」の企画・原案・脚本を、そのアニメ版ではシナリオ監修という役割を担っていました。彼の手によって生まれたのが、「To Heart」の主人公(つまりプレイヤー)・藤田浩之です。

 これだけの女の子が出てくるアニメでは、ともすれば主人公役である男性の顔も何も出さない作品はよく見られます。しかしアニデレでは見事に、誰からも恨まれないどころかアイドル以上に愛されるキャラクターが登場しました。赤羽根Pもそうでしたが、「アイドルマスター」という難しいタイトルでよくできたなと感嘆せずにはいられません。

 しかし、この「誰からも恨まれないどころか愛される」主人公役は、「To Heart」の時には既に存在していたのです。藤田浩之という男はまあとにかく面倒くさがりで、幼なじみの神岸あかりがいなければ生きていけないのではないかと思うほどなのですが、やるときはやる。そして、誰に対しても平等なんです。これはアニデレのプロデューサーにも大いに通じる点です。これからアニデレのストーリーが進むにつれて、共通点も出てくると思いますので、いずれ1本の記事としてまとめてみたいところですね。

 ちなみにアニメ版「To Heart」は1999年の作品なのですが、16年経った今でもまだ類を見ないほど、ギャルゲー原作ながらとても静かで心穏やかになる作品です。アニメ好きなら「こういう作品もあるんだ」と、自分の引き出しにもなると思いますので、ぜひ観ていただきたいです! 心からおすすめします。

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